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遠い扉

 

 遠い扉の鍵が開き
 怒りの残滓をとどめる寝顔が息をひそめる
 夜明け
 廊下で儀式のように繰り返される手つきを
 くまなく記憶するために立ちつくす
 わずかな静止の時間
 
 水面は膨張し
 非常口の緑の光を浴びて
 うずくまる背が骨を隆起させる
 きつくとじられた瞼の裏を
 走りつづける快速急行の
 結露した窓を覗く男
 潰された空き缶の長い影
 乗客のいない車両にひとり座る
 塩素のにおいの鳥肌に覆われて




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