夢の篝火


 朝起きるとはじまる労働は
 情けない数字に変換される
 くたびれたからだをひきずる夜
 わたしはわたしの輪郭を耐えられない
 
 おなじまいにちをくりかえしているとわからなくなる。陽だまりが何かの模様をかたどり、曇り空から小魚が降ること。誰も住んでいないはずの向かいの家の窓に灯りが点り、電車の外を流れるビルの上にはおおきなくろいかたまりが浮かんでいる。あれが空亡という妖怪で、江戸時代の百鬼夜行絵巻に出てくるとたしかに知っているがどこで聞いたのだったか

 しかたなく生きている永遠
 まいにちいちどきりの反復

 煙草を吸う友人へのプレゼントに1カートン買った銘柄は渡されないまま枕元にある。夢でみるかれはいつも左腕が肩から欠けているから、煙草をもつのはとにかく右の指だった。火をつけてあげるとすこしずつ延焼してかれのからだは燃えていく、枯れ枝のような音を立てて全身が砕けてもわたしは火をくべつづける。目が覚めたあとも夢のなかで燃える火を篝火にするために、革命みたいに


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