韓国映画「三姉妹」
昨日、川崎アートセンターで三姉妹を観た。
三人の女たちは皆どこか深く病んでいた。
心身ともに最も病んでいるのは長女。ユーチューブ公式動画ではシングルマザーとなっているが映画では借金を作って逃亡中の旦那が出てくる。旦那にお金を渡すために長女は毎晩菓子パンを食べ、花屋店は夜、電気もつけずに真っ暗。自傷行為の中年の女は恐ろしかったが、娘のために必死で娘の恋人(売れないロック歌手)に別れてくれるようすがる姿には神々しさを感じた。そんな素晴らしい人間性を自分では全く気づいていない。自分を愛し、大切にすることができない母にとって娘は命より大事なのだろう。
次は次女、大学教授の妻であり、二人の子供の教育ママ、キリスト教の熱心な信者で、新築のマンションに転居したばかりの彼女は皆の憧れの存在だが内面に深い闇を抱えていた。強い自我を優しく優雅な言動で装っているが二重人格が滲み出ていていることを自分では気づかない。浮気する夫をなじる時に彼女の本来の凶暴な姿が見えて、なぜかホッとしてしまった。そうだよ。自分をむき出しにしていいんだよと。
三番目は粗暴な日常の振る舞いから、精神異常者かと思われる節もあるけど、内面はものすごくナイーヴで、優しい性格。劣等感がそうさせるのか。それを忘れようと酒に溺れる、大人になりきれない女。
この映画は父親の家庭内暴力が物語の背景にある。父親の暴力はよくある話で、子供を殺すほでない限り、犯罪行為という意識は韓国社会にはない。日本でも親が子を殺した場合、他人を殺害した場合に比べ量刑が少ないことを前から疑問に思っていた。きっと子供は親のものという考え方が司法に反映されているのだろう。その国の法律を作るのはその国の人たちだから。
子供の頃に暴力を受けると大人になっても自分を大切に思うことができない。知らないうちに信仰を強要して、泣き喚く幼い娘を部屋に閉じ込める次女は自分の暴力性に気づかないのだ。それにしても深い内容をよくこれだけのストーリーにまとめたものだと感嘆した。長女のところに統一教会と思われる女性たちが勧誘にきて、変な異端の儀式に参加させられるシーンが滑稽で、悲しかった。
ビビンパプのようにたくさんの味が詰まった映画だった。映画をみてたくさん考えることができて、これが映画を見る醍醐味なんだと思った。
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