燃え尽きないために〜1人ひとりにできること〜
持続的に社会運動に関わっていくには、どうしたらいいだろう?
最近はよくそんなことを考える。
前回の記事の類似記事を探しているうちに、下記の記事に出会った。
タイトルを見た時にはそこまで興味を抱かなかったけれど、さーっとページをスクロールした際、バーンアウト(燃え尽き症候群)の対処法のヒントになると思ったので、改めて熟読することにした。
社会変革を担うリーダーを意識して書かれたものだろうけれど、1人の人間として生きていくにも、心に留めておきたい内容だったので、内容を意訳しつつ、考えたことを残しておく。
記事について
社会課題に取り組む人々が直面する困難
社会的課題に取り組む人々、とりわけ政治的・社会的にセンシティブな課題に向き合っている人々は、仕事量、不安、そして社会的プレッシャーによって燃え尽きてしまうリスクが高い。
困難を乗り越える方法=自己探求(Self-Inquiry)
(この記事では)自己探求を、特に対人関係において自己認識を高め、目的や喜びと再びつながり、過去のトラウマを治癒し、より健全な行動パターンに移行するという明確な目標を持って行われる自己分析と内省のプロセスと定義する。
自己探求を通じて培われるスキルは5つ:①傾聴、②忍耐、③思いやり、④明瞭さ、そして、⑤様々な問題・人々がどのように繋がり影響を与え合っているのかを理解する体系的な視点
継続的な自己探求は、リーダーが自分のエネルギーとレジリエンス(回復力・しなやかさ)を管理すること、より影響力のあるチームリーダーになること、そして他の組織とのより意味あるコラボレーションの開発に役に立つ。
自己探求の手順
1.いますぐ始める:自己探求は自身の仕事や生活におけるレジリエンスと成功に欠かせないもの。燃え尽きた後では遅い!
2.小さいことから始める:日々マインドフルネスを実践して、「今、ここ」に留まる力を強化する。(例:朝や大事な仕事の前に5分間の深呼吸する時間をつくる、瞑想用のアプリを使う、通勤途中や近所の公園で景色を観察したり身の回りの音に耳を澄ましたりする時間を作る)
3.自分を支えるソーシャルサポートシステムを作る:互いの自己探求について話し合えるような仲間をつくる。
4.自己探求を自分の組織に導入する:ミーティングを始める前後に、互いの近況を共有する短いチェックインやチェックアウトをやってみる。また、ファシリテーターやリトリートを利用して、率直なフィードバックのための安全なスペースを作り、より透明で信頼できる仕事上の関係を築くことも含まれる。
5.コーチングやセラピーを検討する:専門家による支援は、自身の感情のきっかけがどこにあるのかを突き止めたり、過去の痛ましい経験との向き合い方を変えたり、深いトラウマを治癒したりすることを助ける。また、内なる批評家や超自我など、自身を自己破壊的な方向に追い込む可能性のある、不健全な性格の側面に焦点を当てることもある。
6.自分に合った体系的なプログラムを見つける:自己探求の方法のスキルを磨き、確立するためのプログラムもある。
7.リトリートに行く!:リトリートは、邪魔されずに内省することを可能にし、自分自身をリフレッシュさせ、日々の生活に新たな視点を持って戻る機会でもある。
自己探求によってもたらされる、5つの変化
自己認知の変化:自己認知の変化には、自分自身そのものと、社会変化への自身の役割に対する視線の変化が含まれる。
自己認知の変化は、他者に自分を曝け出す勇気を必要とする。
また、重要な心構えの変化の一つは、「世界を救うんだ」という自分へのプレッシャーを放棄すること。そして「他者や社会への自分の責任に対し、疑問を抱くことを許す」こと。
2. 感情的認識の変化:感情にとらわれてしまうきっかけに気づきやすくなり、不安など暗い感情に対処できるようになる。また、特に仕事から来るストレスや不安、恐れへの対応方法の向上を含む。
しかし、残念なことに、リーダーたちは、彼らの仕事や仲間に悪影響をもたらす自身の感情を紐解き、検証するためのフレームワークを持ち合わせておらず、投資家や支援者の多くも、燃え尽きやリーダーたちが抱える膨大なストレスに無関心。
そして、リーダーが最もよく直面するものの、ほとんどの口にしない感情の一つは「妬み」。
3. 組織の実践や、組織文化の変化:リーダーの自己探求は、彼ら自身の組織文化への影響について、深い理解を得るのを助ける。
4. 個人、問題、組織間の関係に対する認識の高まり:自己探求を習得したリーダーたちは皆、自己探求の習慣のおかげで他の人とよりよくつながることができたと報告。
5. 体系的な認識への変化:1つに焦点を当てるのではなく、その課題に関与する他の個人や機関に影響を与え、その社会システムのルール、資源の流れ、力関係、規範、関係などを変えることを目指す。また、協働によって作られた解決策は、多くの場合、組織の持続性にも貢献。
その他
自己探求の方法には、誰にも適用できるような万能な方法はない。
社会から個人まで、ケアを当たり前化したい
小さな目標は達成しているのに、大きな目標を達成できない故の無能感と無力感。
義務感が先走り、その活動に喜びを見出せない苦しさ。
この記事に登場してくるインタビュイーたちの言葉は、うなずくものばかりだった。
感情を伝える難しさ
自己探究のステップについて、「本音と建前」社会の日本で実行しようとすると、むずむずするような内容だ。
でも、感情を他者に伝えることは、必ずしも悪いことではないはずだ。
感情をそのまま体現することがよくない場合というのは、その行為によって他者を怯えさせたり、その人の支配につながったりする場合だと、私は思う。
不安も、悩みも、自分で対処しなければならない社会は、弱みは見せてはいけないというマッチョイズムが見え隠れする。
私たちは、他者を怯えさせない形で、他者を支配しない形で、自分の気持ちを伝える方法を学ばないといけない。
“今ここに留まる”ということはどういうことか
また、 “今ここに留まること”(手順の2つめにて言及)の難しさについても、多くの人にとっては、「どういうことだ?」と思う人もいるかもしれない。けれど、トラウマを抱えている人にとって、ふとした瞬間ちょっとした事で過去の記憶が蘇り、苦しくなることがある。
だからこそ、自分がそのようになるきっかけを知っておくことの重要性を痛感している。
感情に刺激されるきっかけをカウンセリングを通じて認識し、嫌な感覚を取り除いたり、今までと違う捉え方を考えたり、自分をあたたかく守る方法を探したり、暮らしのなかで地道にトライアンドエラーを繰り返すしかない。
自分の喜びに敏感になる
そして、自己探究を通じてもたらされる変化について。特に1, 2つめについては、私自身、今だからこそ身をもって学んでいる最中だ。
自分を義務感から解放させてあげること。
自分でいうのも難だけれど、小さい頃から「他者の期待に応えているか」を常に気にしていた。そして、ある意味過剰な「〜しなくては」という癖の影響で、心身を壊してしまった。この癖は、今なお、カウンセリングや日々の生活の中で矯正中である。だからこそ、記事の中の「自分に喜びをもたらすものを追求する」という言葉は、胸に刺さった。
個人と組織、社会の協働作業としてのケアを
今までは、組織的なケアの不在や、ケアへの社会的な無関心に目が行きがちだったものの、自己探求という個人的なケアも、同じくらい大切だと認識が変わった。
どんなとき、安心するのか。
どんなとき、心からの喜びを感じるのか。
そして、どんなとき、辛いと感じやすいのか。
このようなことは、自分しか辿り着けないものだ。
けれど、そこに到達するまでは、自分一人の力ではとても難しい。
恐怖で体が動かないとき、カウンセリングを提案してくれたのはパートナーだったし、私の “きっかけ” を探す作業をアシストしてくれているのはカウンセラーさんだ。
休職中でも、フルタイムで働く場合に比べたら額は減るものの、定期的に一定の収入があるのは、組織や雇用保険があるから。
でももし、自分に気をかけてくれる人がいなかったら?
もし、周りの人がカウンセリングに対して偏見をもつ人だったら?
もし、自分がフリーランスだったら?
落ち込みそうになったときに、サポートシステムがあるかないかで変わってくるはずだ。
個人、組織、社会のすべてのレベルで、優しさやあたたかさを共有できる社会になればと思う。
そして、ここまで読んでくださったみなさん、長い文章にも関わらず、ありがとうございました。
みなさんの勇気につながればと思います。
※トップ写真:どこぞやで撮影した玄関の置物
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