それ、照れてるんだよ
美容院で長らく私を担当してくれている人(やや年下)が、「彼女と手をつないで歩くのとか有り得ないっす」と言う。
「エーーー???なんでですか。手つなぐのいいじゃないですか」
「いや〜〜〜だって恥ずかしくないですか?そんな。人前で」
と言った。
人前でキスするのを恥ずかしがるならまだわかるが、手をつなぐのも!?
(おじさんじゃない人もそんなことを言うのだな)
と、思った。
私は好きになるのがいつもおじさんだから、手をつなぐ機会が少ないのかと思ってた。
人前で手をつなげるような関係じゃない時は仕方ないけど、そうでなかったとしても手をつないでくれるようなおじさんって、まずいないし。
でも老若は関係ないのだよな。
もし照れてるだけなら、ちょっとつないでくれるぐらいいいのではと思うが‥‥。
ダメか。
私の両親は、若い頃からずっと手をつないで歩いているがな。
(今や「お互い転ばないように」的な理由になっているのかもしれないが)
ある時、好きなおじさんと喧嘩して憤慨した私は、お兄ちゃんみたいな友達に愚痴を訴えた。
「男の人ってなんか冷たくない??」
しかし彼は普通の調子で、
「そうかな。オレの周りの男はみんないいヤツだけどな」
と言うので、私はおじさんの台詞を披露した。
「面と向かって『あなたのお子ちゃまなところが嫌い』とか言うんだよ?」
すると彼は笑って、
「それ照れてるんだよ」
と言った。私は思いもよらなかった返答に驚いた。
「え〜〜〜??でも、あと、ちょっと首に抱きついただけなのに『そういうのが嫌いなんだよ』って邪険に振りほどいたりさ。部屋なのにだよ?」
「もう、それも照れの典型」
と事もなげに言った。
‥‥そ、そう‥‥?!
私のこと嫌ってるわけじゃなくて‥‥?!
と考え込んでいたら、彼が、
「っていうか、花野そんなことしてんの??オレにもしてよ」
などとふざけたことを言うので「そんな話をしてるんじゃない」と爆笑している内にすっかり私の気持ちもおさまった。
その好きなおじさんに、約束してなかった日に急に誘われたことがあった。
「こうやって急に会うのもいいもんだろ」
「でも急だったから髪の毛巻いてなかった」
私は、せっかく久々に会えるならもっとおめかしして来たかったのだ。
せめて昨夜の内に言ってくれればよかったのに、と思っていたら、
「‥いや、その髪もいいよ」
とぼそっと言ってくれた。
えー!!いつもあんなに冷たいのにそんなこと言ってくれるなんて‥‥!!
「‥‥どうもありがとう」
と思わず心からのお礼が出た。
こういうこといっぱい言ってくれればいいのにな〜と思った。
照れないって素敵、と思った。
その彼から優しいことを言われつけてなかったので、こんな些細な会話を覚えている自分が若干悲しいが。
‥‥っていうか、全体的にぼんやりした馬鹿馬鹿しい話だな。
お子ちゃまって言われたのはだいぶ前の話だが、今言われても仕方ない気がしてきたぞ。
でもまあ、私はこんな人間だから仕方ないのだ。
↓ そのお兄ちゃんみたいな人に、別の意味で思いもよらないことを言われた話
↓ 甘えたいタイプなのに、甘えさせてくれなそうな人ばかり好きになりがちな人生