【連載】私がライターという仕事を選び、今も研鑽を続けているワケ【その3:SEOライターの限界とWebコンテンツ時代編】
前回の続きです! 取材アシからようやくWebライターに一歩前進した23歳の私は、入社したWebコンサル会社のライターチームのひとりとして「SEO対策」のための記事執筆をやり始めました。
「決められた時間内に、決められた本数の記事を書く」
スピードと質の戦い。入社してすぐの私は、ノルマの半分もこなせずに「とにかく作業が遅い」ことに悩んでいました。
1日600字×20本がノルマ、まわりに追いつけない
入社した会社では、入って3ヵ月間が研修期間でした。3ヵ月の間にちゃんとできるようにならないといけない。オフィスではすぐに「書いてほしい」と言われました。ライターになりたかった私には嬉しい話でした。
最初は隣に座っていたライターの先輩に教わって、「まずは半分できればいいから」と言われ、1日に6~8本のSEO記事を書きました。テーマが渡され、指定のツールを使って自分で構成を決め、キーワードを使って自由に書く。当時はサテライトサイトを作って被リンクを獲得する方法(順位を上げたいサイトを紹介するために別サイトを作る)が効いていたので、ライターひとりが1日に2サイト分、20本の記事を作っていました。
教わったとおりに、調べて、文章を書いて、提出。これを1日に20本がノルマ。けれども、やってもやっても追いつけません。1日に半分しか書けない。……でもまわりのライターはちゃんとできている。どうしてだろう。
同い年のライターくんもできている。ノルマが達成できないことに焦りと困惑がありました。私は前の会社でテープ起こしをやっていて、「タイピングが早いね」と言われていたのでタイピングスピードには自信がありました。なのに、できない。ライターの仕事をやるには「早く書く」「時間内に終わらせる」を克服するしかありませんでした。
「他の人の記事を読んでほしい」と言われた
有り難いことに、そのWebコンサル会社では毎月必ずライター対ディレクターで相談事を話せる面談がありました。私も入社して1ヵ月経ったころに面談をして、ディレクターさんに「ノルマがこなせない、どうすれば早く書けますか?」と聞いてみました。
「他の人は時間内に終わっているよね。だったら、他の人の書いた記事を読んでみて。どういう文章を書いているのか、参考になると思うよ」
あ、なるほど……。私にはそのアドバイスがスッと入ってきました。実際に他のライターさんが書いた記事を見ると、お決まりの言い回しがあったり、「こういうときは、こう」みたいなパターンがあったのです。私はまわりを参考にせずに、自分の頭の中だけで考えていたので、いつまで経っても言葉が浮かばずにいた、だから時間が倍もかかっていたのだとわかりました。「他の人の記事を見て、分析する」という視点を持つきっかけにもなりました。
入社して3ヵ月、私は無事に研修期間を終えて継続雇用となりました。ノルマもしっかりと100%超え。作業量に応じて時給が上がる仕組みだったので、たくさん書くことがモチベーションにもなっていました。
Googleアップデート大事件
SEOライターの仕事にも慣れ始め、新しいライターさんが入っては辞めていく、そんなヒリヒリした空気感の中で働いていたある日、事件が起きます。SEO業界を震撼させる大事件でした。
「Google検索エンジンのパンダアップデート、ペンギンアップデート」
パンダ? ペンギン? なんだそれは? 動物園?
簡単に解説しておくと、Googleの検索エンジンにアップデートが入ったのです。どのような内容かと言うと、
・パンダアップデート:Googleが低品質と判断したサイトの順位が下がる
・ペンギンアップデート:過剰なSEO対策をしたサイトにペナルティが入る
今では「高品質なサイトづくり」が当然のように行われていますが、かつて、今から8年くらい前にはアフィリエイトサイトが有効でした。その全てがGoogleさんによって一蹴された瞬間です。このときから私の「アフィリエイトサイトの記事作成をする仕事」がなくなりました。
ライターの仕事がなくなる。Googleが変われば仕事を失う。
あのときの恐怖を、私は忘れることができません。ライターって、特にWebライターってこんなにも簡単に仕事がなくなるものなのか……と身を持って知ることになりました。Googleアップデートのあった直後には、オフィスは非常にばたついていました。クライアント対応に追われていたのかもしれません。最悪、会社を辞めなくてはいけないのかと先行きの見えない不安に襲われました。
SEOライターからWebコンテンツライターへ
Googleアップデート後、社内のディレクターから今後の方針について説明を受けました。
「Googleのルールが変わった、これから仕事内容もガラッと変わります」
辞めなくてもいいが、会社からライター側に求められることが変わったのです。これまで担当していたアフィリエイト記事作成、ブログ記事作成の業務はほぼ消えました。代わりに求められたのは、Webコンテンツの記事作成。たとえばこんな案件を急にやることになりました。
・資格情報サイトに掲載する資格解説文の作成
・ヘア用品メーカーサイトに掲載するヘアケア情報の記事作成
・中古車販売サイトに掲載する車種紹介記事作成
ディレクターからは「時間をかけて書いていい」と言われました。先輩ライターからは「読む人のことを考えて書け」と言われました。数ヶ月かけてSEO記事量産マシーンと化していた私にも、バージョンアップが求められたのです。書き方を変えるなんて、できるのか……? 悩みの多い時期でもありました。
思い返すと、この時期に私は強制的に「SEOライター」から「Webコンテンツライター」への変革が必要となりました。趣味ではなく、仕事としてライターをやり続けるためには絶対に通る道だったと思います。こういう経験があったので、のちに「急に仕事内容が変わっても対応できる」柔軟性と、多少のことではびっくりしない広~い心も持つことができました(笑)
「もっと良い記事を書けるようになりたい」
Webコンテンツライターの仕事をやるようになってから、私はこんな風に考えていました。
「もっと良い記事を書けるようになりたい、どうすればいいのだろう?」
記事に品質を求められるようになり、「良い記事とは何か?」という疑問が頭から離れなくなりました。もともと私は大学新聞を書き、企業の研究内容紹介やインタビュー記事を書いていたので、「丁寧に書くこと、わかりやすく正確に伝えること」は理解していました。でも、読む人にとっての良い記事とは、必ずしもそうだとは限らない。テーマによって読む人は変わるからです。
Webコンサル会社に入社して、もうすぐ1年。だんだん成長感も得られなくなってきました。停滞期です。そんな折に突然、「オフィスが移転します、今度は五反田です」と告げられました。今の大塚のオフィスより遠くなる。通勤に時間がかかる=体に負担がかかる。ああ、まただ……。ライターを取るか、自分の体を取るか。また持病の問題が私を苦しめました。
Webコンサル会社を退職、1ヵ月間の在宅ワークは失敗
2013年10月、私は1年2ヵ月働いたWebコンサル会社を退職しました。移転したオフィスで働くことも一度は考えたのですが、通勤に片道プラス30分、往復で1時間も増えてしまう。もともと埼玉の実家からバス&電車通勤するにも往復2時間以上かかっていたので、これ以上移動時間を増やすのは現実的ではありませんでした。
会社側からは「まだ次の仕事が決まっていないなら、外部ライターとして記事を書いてみませんか?」と言ってもらえました。私は「ぜひお願いします!」と頼みました。初めての業務委託契約です。
2013年11月、外での仕事を失って、家でライターの仕事をやりはじめました。初の完全在宅ワーク。6帖の自室に机を置いて、大学卒業と同時に買った重いノートパソコンを使って記事を書いていました。
会社とのやりとりは全てメールで完結。外部から専用ツールにアクセスして記事を執筆・納品。マニュアルも用意されています。外に一歩も出なくていい。自宅でもライターの仕事はできるのだと気付きました。実際に私が会社で働いていたときから、すでに数名の外部ライターさんが活躍していたことも聞かされていました。
でも、私はこのとき、在宅ワークの本当の難しさを知らなかったのです。
結果としては「たった1ヶ月でギブアップ」と完全敗北。すぐに転職活動に切り替えるのですが、人生初の在宅ワーク失敗談&運命のクラウドソーシング会社に入社編はまた次回に◎
【おまけ】Evernoteに残っていた私の叫び声【追記しました】
ちょこっと追記します。当時のことを思い出すために、大学を卒業してからアウトプット用に書き貯めていたEvernoteのログを見てみました。SEOライター時代にこんな風に書かれています。
「ライターとして、スキルアップしたい」
何度も同じようなことが書かれていました。行き場のない叫び。嘆きのようにも見えます。きっと、何かが足りなかったのです。その何かが、当時の私には掴めておらず、うまく言語化もできていません。
ライターという職業は、「なって終わり」ではないのです。ライターになればその後、自分の力不足・経験不足・知識不足に延々悩むことになります(悩んでいない人がいれば、十分な社会的評価が得られているか、収入にも困っていないか、ほかのライターを羨ましいと思っていないか、ですかね)。
一方で、今の私は「ライターとしてスキルアップしたい」というのが一番の悩みではありません。なので、ある程度のスキルアップができたということでしょう。その違いは何なのか、昔の私と、今の私を比べて、どう変わったのかを別の機会にまとめてみようかなと思います。追記おわり。