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【連載】私がライターという仕事を選び、今も研鑽を続けているワケ【その2:社会人はツライよ20代前半編】

前回の投稿で、私が大学を卒業するまでの話を書きました。就活をしなかった私はゼミの先生の紹介で、某ITベンチャー企業の調査室に放り込まれます。「ウェブの会社に入るなんて思ってもいなかった」、そんな私が取材アシスタントを経験し、仕事としてのライターを意識し始めます。

ITベンチャーに入社、情報通信技術の取材アシスタントをやる

入社した会社で私が担当したのは、某情報通信技術を扱う企業の社内報制作のアシスタントでした。記事を書くのは上長で、私はサポート&雑務係。関東圏の研究所に取材同行して写真撮影、写真加工、インタビューのテープ起こし(okoshiyasuを使ってサクラエディタに打ち込み)、メルマガ作成など。片付けが苦手で毎日忙しい上長にかわって、デスク周辺の掃除をするのも私の仕事でした(笑)。

たまにインタビュー記事を書いては「これじゃ使えない」と全文ボツになったりという日も。厳しく怒られはしなかったけれど、上長を苛々させたのは勘付きました。

「一生懸命書いたのに……。私はこんなこと、勉強してこなかったから書けるわけがない。でも、仕事なら書かなくちゃいけないんだ」

取材をするには知識と理解力が必要で、書くにも正しく文章化するための教養が必要なのだと思い知りました。

アシスタントではなく、一人のライターとして働きたい

取材アシの仕事は1年ほど続けました。この頃は、まわりは社会人1年目~2、3年目で正社員を頑張っていて、私はただのアルバイト。負い目もあったけれど、「書く仕事」を嫌だとは思いませんでした。

でも、同じ部署にいた大学生のアルバイト君の学年が上がり、「就活があるから来られなくなる、代わりに新しいバイトが来る」と聞かされました。数日後にはかわいい大学生の女の子が来て、私はこう思いました。

「ああそうか、私が辞めないとこの席は空かないんだ。下の代の子たちが社会勉強しに来られるように、ちゃんと辞めないといけない」

入社して1年、私は転職活動を始めました。希望する職種は「ライター」。今度はアシスタントではなく、一人のライターとして世の中に情報発信ができるようになりたいと思っていました。

女性向けゲーム雑誌の編集部、フリーライター職に応募

ここは私が人生で一番悔しかった話。もしもう一回人生をある地点からやり直せるならば、この選択を変えたいくらいに。

23歳の春、転職活動中だった私は、当時大好きだった女性向けゲーム雑誌『電撃Girl'sStyle(ガルスタ)』で「フリーライター募集」をしていることに気付きました。毎月買っている雑誌のページ後半にスタッフ募集の情報があったのです。「これだ!!」と思い、私はすぐに応募しました。大学生の頃から乙女ゲームや男性声優さんにハマり、趣味でブログやファン有志10~20名規模のお花企画主催(スタフラを贈る活動)をやっていました。好きなゲームや声優さんの記事を書きたい、と思ったのです。

課題の1000字作文と、当時個人で運営していた男性声優さんの情報ブログのURL、履歴書を封筒に入れて郵送。面接に呼ばれました。

恐怖の3対1面接、たった1つの答えられない質問

面接当日は、私ひとりに対して編集部のスタッフ3名が机を挟んで向かい側の席に座っていました。この時点でめちゃくちゃビビリまくりの私(笑)まともに就活しなかったツケが来たような……。しかも、1人のベテランっぽい人は一言も発言せずにただじっと私の言動を見てるだけ!なんだこれ!!(まあ、こういう面接のやり方もあるんでしょうね……汗)

面接時に聞かれたのは「Photoshopは使えますか?」「ドラマCDのページを書いてほしい、興味はありますか?」と。大学時代にはIllustratorしか使用していなかったので「Photoshopはこれから覚えます!」。ドラマCDは声優さんのインタビュー記事も書けそうだと思ったので「興味あります!」と即答しました。「原稿料も最初は安いですけれど良いですか?」「大丈夫です!」。
編集部側の人は、私が運営していた個人ブログも見てくれていました。多分、この熱意が決め手になったと思います(あとは私が実家暮らしで都内通勤可、ある程度のPCスキル&撮影スキルも有していて、20代で若くて根性がありそうだったから?)。

でも一つだけ、うまく答えられない質問がありました。

編集部には仮眠室もないし、締切はゼッタイに守らないといけない。それでも大丈夫?

(大丈夫とは、どういうことだろう……?)

3対1面接の受け答えにいっぱいいっぱいで、その場では「はい、来れます!」と答えました。でも私は、その意味をよくわかっていなかったのです。今の私なら理解できます。「夜遅くまで、なんなら深夜0時を越えて会社で仕事しないといけないけれど、それでも大丈夫?」という意味ですよね。

面接では、持病のことはちっとも話せませんでした。怖くて言えない、話せない。平日には薬をもらいに通院が必要で、1日かかる検査も必要で、体力的に残業は難しい……。私の体はそういう体で、だけどそれをわかってもらえるのだろうか。言ったらきっと、この仕事はできない。絶対この仕事は、私にぴったりなのに……。

1時間の面接はあっという間に終了。やりたい気持ちはアピールできたけれど、週に何日出社すればいいのかもわからない。働くイメージがまったく湧かず、不安が膨らむばかり。後味悪くその出版社をあとにしました。

2週間後にもらった結果は「内定」、メールで内定辞退

編集部の人からは「2週間以内にメールします」と言われ、ぴったり2週間後に連絡が来ました。内定。決まった。嬉しい!!やった!!やっと私はやりたいことができるんだ!!

返事をしなくてはいけません。「連絡をくれ」と言われました。

でも、辞退をしました。内定辞退。逃げたのです。メールで「申し訳ありません。生まれつきの持病があり、貴社で働くのは難しいと考えております。本当に申し訳ございません」。謝罪メールを送り、そのメールアドレスのアカウントを一切見るのをやめました。

悔しい。悔しい。「できる」と言えない。私にはできない。

いや、無理をすればやれたのかもしれません。倒れて病院送りになってもよければ、自分の体を犠牲にしてもいいと思える覚悟があればきっとできました。でも、できなかったのです。覚悟?度胸?自信?そういう確かな何かが、なかったのです。あとはシンプルに、私には合わなかったのだと思います。

ライターの求人を見ると、「心身ともに健康な人」が条件に入っていることがままあります。ライターという職業には体力も必要。記事をひとつ作るには時間と労力が必要です。だから前提条件として、持病持ちなんてハンデのある人はお門違いなのだと気付きました。

これは私が当事者だから言えることだと思います。さすがにね、泣きました。ワンワン泣いて、働く気力もなくなって、「もう仕事なんてしたくない、私にはライターなんて無理なんだ」と初めて自分の体を呪いました。

泣いて泣いてライターを諦める、でも諦められない

内定辞退をして、また春が来ました。4月。まだこのときはベンチャー企業で働いていて、仲良くしていた営業さんに「面接どうだった?」と聞かれて、「うーん、ダメでした」と報告したり。しばらく転職活動はできませんでした。内定辞退の傷が癒えず、後悔が拭えず、思い出してワッと泣いて、自暴自棄になって部屋のモノを壊して、それでもお金は必要だから取材アシのバイトを続けていました。

転職活動をしていることを周囲の人が知っていたので、「○○社、紹介しようか?」と言われもしました。でも……やりたくない。有り難い話だけれど、やんわり断っていました。

私の心の中には、今やっている取材アシの仕事から離れたくない、という気持ちがありました。ライターがやりたい。どうして私にはできないんだろう。作業の合間にウェブの会社のHPを見て、求人情報をチェックしたりしていました。そうして数ヶ月が経ち、夏。Webライターの求人を発見します。

SEOライター求人に応募、内定が決まり2社目に転職

2012年夏、私はWebコンサルで有名なヴォラーレ株式会社(現:ナイル株式会社)に入社しました。

SEOライターとして1日に600字×20本のアフィリエイト記事を書き、バリバリとウェブ記事を量産するマシーンになります(笑)。SEOライター編はまた次回に書きますね。

【おまけ】ガルスタは紙雑誌が休刊、私にはもう一生書けない

ちなみにですが、当時私が応募した女性向けゲーム雑誌のガルスタは、2018年6月に紙媒体での発行が休刊となり、現在は完全にウェブオンリーに移行しました。なので、どう頑張っても私はその雑誌の仕事に関わることはできません。

これも時代の流れ……と言えばそうだし、実際に私もウェブを選んだ一人です。でも、今でも「やっぱりあのとき、雑誌ライターをやればよかったかな」「そうすれば人生変わってたな」と思うこともあります。後悔という形で、私の人生経験に残りました。

私は後悔を知ったので、今は「後悔しないためにチャンスがあったらやる」を選択しています。もし自分の体ではできないと思ったら、どうすればやれるのかを考え、相談し、道を見つけ、方法を整え、やれるように努力します。体が弱いことを言い訳にはしたくない。せめて心だけは強くありたい。

雑誌ライターを内定辞退して以降、もう8年くらい経ちますが、仕事で後悔したことは一度もありません。あんな後悔はもうしたくない。過去の自分を乗り越えるために、私は今も新しいことにチャレンジし続けています。これが私の原動力です。

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橋詰由佳|ライター
noteを読んでくださり有難うございます!創ることを通して、今を生きる人の力になるコンテンツを届けることが私の喜びです。