三谷文楽 初観劇記
先週、渋谷パルコ劇場にて上演された三谷文楽「其礼成心中」を観劇しました。このご時世、本当に迷いましたが……一言。本当に行ってよかった!
そもそも私にとって、文楽含め古典芸能の生観劇は初めてでした。大学生になって、地元静岡に拠点を置くSPACや大衆演劇といった様々なジャンルの舞台に足を運ぶようになりましたが、やはり古典芸能は一度、いや何度でも、観に行くべきだと思いました。✨
大衆演劇については↓のようにいくつかの記事で綴っております♡
これまで古典芸能については、歌舞伎や文楽、講談の入門講座には参加しておりましたが、先月参加した文楽の講座で「伊達娘恋緋鹿子 火の見櫓の段」の一部を観劇し、その並外れた技術に圧巻されてしまいました。
そこで、実際の舞台もぜひ観に行きたい、行かねばと思ったわけです。
さて、長くなりましたが、そうしてようやく叶ったパルコ劇場での「其礼成心中」観劇!今回はその感想を少し綴りたいと思います。
1.古典へのリスペクトは忘れない
この「其礼成心中」は、監督の三谷幸喜さんが床本でおっしゃっているように、古典作品と比べて現代人にとってもわかりやすい表現を重視されています。そのため、会話が多いようです。
私は文楽自体を初めて観たので、会話の多さなどは言われないとわかりませんでしたが、私のような初心者には内容が理解しやすい分技術や舞台セットなどに注目でき、ちょうど良かったのかもしれません。
ただ、その分かりやすい(聞きやすい)内容ですが、それそのものはとっても濃ゆい、深イイものでした。元になった近松の「曾根崎心中」を巡って繰り広げられる、時に笑えて時にほろっと涙を誘う繊細な心の描写は本当に巧で、様々な登場人物の様々な視点に同情せざるを得ませんでした。結果、「曾根崎心中」に色々とこちらも考えさせられるわけですね。
古典「曾根崎心中」に対し、現代要素を交えたのびのびとした解釈を導きながらも、その魅力はしっかり伝えるところに、古典へのリスペクトを感じました。「曾根崎心中」、そしてこちらも今回の作品に登場した同じく近松の「天の網島」もぜひ観たいと思いました!
まだ古典を観ていなくても、観たい!と思わせてくれる。これも古典への敬意あって故だと思います。
2.止まらない涙と震え
観劇を終えて、涙と震えが本当に止まらなくて。
でも、その理由が大事なんですよね。
これまでは舞台や小説、ドラマ、その他諸々を観てそういった反応になるのは、物語の展開、内容によるものだったのですが、今回はそれとは違ったんですよね。もちろん前述したようにほろっとさせる心情描写にも涙は出ましたが……
一番涙が出たのは、劇が終わって一同拍手喝采の中、人形遣い、太夫、三味線の方々が順に私たちに礼をしてくださった時でした。大変な状況の中圧巻の演出をしてくださったことへの感謝、感激もありますし、常人では想像もつかない高い技術を2時間じっくりと目の当たりにした戸惑い、動揺もあったかもしれません。
今回ご出演された、三味線の鶴澤清志郎さん、人形遣いの吉田一輔さん、吉田玉翔さん、吉田玉路さん、吉田蓑悠さんは先月のグランシップの講座にも来てくださいました。
また、昨年の文楽講座では三味線、人形遣いの体験もでき、その際にはもっと間近でお会いできました(^▽^)/
鶴澤清志郎さんですね。とっても気さくで優しいお方でした……!三味線の撥は観ているときには気づかないですが信じられないくらい持ちづらいんです。それに私がドギマギしている時の写真だったかな。(笑)
皆さん質問にも丁寧に真摯に答えてくださって、お優しい印象でした。今回のパルコ劇場は舞台転換が本当に華麗で、そんな壮大な舞台にいらっしゃる皆さんを再び拝見した時は、なんだか遠い遠い存在に感じました。。
それだけのお方々が、先月入門講座に来てくださったことは本当にありがたいことだったんだということを実感しました。
そして、その時感じた「これは一度本物の舞台を観なくては!」とビビッと来た直観は、間違っていなかったと思いました。
観劇後、パルコ劇場出てすぐにあるはずのトイレへの道のりが長くて長くて。。(パルコが広い。)誘導員の方に支持されながら、半泣きでフラフラしながらトイレに行きました。(;^ω^)
それくらい、震えも止まりませんでした。
観劇前の三谷人形もお話していたように、もちろん一体の人形は自分で話すことはできません。でも、その人形に声を与える太夫、それに合わせる三味線、動きを与える人形遣い、そして彼らの技の結晶で繰り広げられる舞台を観て、登場人物(人形)に同情する私たち観客。そんな数えきれない多くの人々の思いが、人形一体一体の魂として宿っているのだろうと思います。
その人形に宿った魂を感じることができたからこそ、私は心、しまいには体も震えてしまったのでしょう。。
観てよかった。そう思えてよかった。どんな時にも、舞台に足を運ぶことでしか得られない感情、気づきがあって、それが明日の原動力になるんだなと改めて思いました。
先が見えず、舞台鑑賞も時にはバッシングを浴びかねない世の中になっていると感じますが、皆さまにも舞台鑑賞の魅力、そして文楽の魅力が少しでも伝えることができていたら幸いです!