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本好きの原点
自分が今でも本が好きでいるのは、小さい頃に読み聞かせをしてもらったからだと思っている。
物心ついた時から、オレンジ色のカラーボックスには、桃太郎や一寸法師などの「学研 母と子のむかし話」と、イソップやアンデルセンなどの「学研 母と子の世界むかし話」という10冊くらいずつのセットがあった。
母が通信販売でセット購入したものだったと思う。
雑誌サイズくらいで、表紙が固くしっかりしていて、小さな子どもが持って読むには重たい、1冊に3話くらい入っている。
読み聞かせのレコード付きで、でもレコードはあまり聞かなかった。
おばあちゃん、ひいおばあちゃんが一緒に住んでいて、どちらかがいつも寝かしつけてくれていた。寝る前に1冊選んで布団に入り、眠りにつくまで読んでくれる。読み聞かせをしてくれていたのだ。
私は小さい頃よく熱を出していたので、そんな時も本を読んでもらっていた記憶がある。風邪のときは、イソップのお話を読んでもらった。
1話1話それぞれが、イラストであったり、人形劇のような写真だったり、切り絵、影絵のようなもの…など、違っていたのも印象的だった。
「雪の女王」や「ヘンデルとグレーテル」、「むすめとかいじゅう」辺りが写真が美しかった。どの話か忘れてしまったが、おはじきが散りばめられて、キラキラしたページがあったと思う。
話を聴きながら、写真をじっと見つめてうっとりと、その世界観を味わった。
他にも絵本はあったが、このシリーズの本を読んでもらう時間が幸せで大好きだった。
小学生になり、大きくなったことで、布団に入っての読み聞かせもなく一人で寝るようになり、小さな妹や従姉妹がその本を手にするようになり、私は自然と読まなくなった。
その後しばらくして、母が「もううちでは誰も読まないから、従姉妹の家に譲る」と言われたか定かではないが、そのまま家から無くなった。
そこから何年か経ち、従姉妹の家で懐かしのその本と再会したが、ペンでたくさん落書きされた姿を見て、急に悲しくなってしまった。その時に初めて、やっぱり大切な本だったと気付いたのだ。
人生で1番最初に大好きになった本たち。
小さい従姉妹だったから、もちろん悪気はない。でもちょっとだけ、大切な絵本だから、大切に扱って欲しかったという悔しい気持ちだったり、どうしてあの時譲りたくない、って伝えなかったんだろう…と後悔もしたのだ。
大人になってからも、いつまでもあの本たちの存在は胸の奥にあって、いつかまた会いたいと願っていた。
すると、小さな娘を連れて行った図書館で出会うことが出来たのだ。
嬉しくて懐かしくて、その頃何冊か借りて、またしばらくして借りて…と再会を喜んだ。娘に読んであげずに自分が一人で楽しんでいたりして。
いつでもあるから…と借りない日々が続いて、そのうち図書館が建て替えで別の場所に引越し、随分経ってからまたあの本たちを思い出し借りに行くと、検索しても出てこない。引越しのタイミングで除籍されてしまったのだ。
いつか除籍される時が来たら、絶対に全部うちに連れて行きたい、とまで思っていたのに。
もちろん、そんなタイミングはわからないのだけど。年に一度くらい、図書館の除籍本を譲り受けることが出来るリサイクル市のような時があり、少し期待していたのだ。
あれから時々ネットで調べて、買えるチャンスはないか、とまだ期待していたりする。
初めて好きになったのは、なかなか手元に置くことが出来ない絵本。掴み取ろうとすると逃げられてしまう。そんな存在だから、きっと一生追いかけてゆく気がする。