【全訳】 You're in the news あなたは本当はニュースを求めている Mari Hikita
最近、Twitterを開くたびに心がぴりぴりしていた。
誰かの主張に、別の誰かが侮辱的なリプライをする。言い返す。
かみ合わない言葉のやりとりに、SNSは人をつなげているのか、はたまた分断しているのか、分からなくなった。
そんな今だからこそ、聞きたいスピーチがyoutubeに公開された。
HUFFPOST、C channel、そしてONEMEDIAで活躍してきた疋田万理さんのTEDxのスピーチだ。
SNSにおける分断と、その乗り越え方、メディアの課題と未来について、メディアシーンをけん引する彼女の話を聞いてみよう。
※万理さんご本人にも日本語訳のチェックしていただいています。
▼本編はこちら(英語自動字幕あり、日本語字幕なし)
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You’re in the news あなたは本当はニュースを求めている
Mari Hikita
インターネットが生活を変えた
みなさんこんにちは、Mariです。
皆さんに2つ、質問させてください。
この中でツイッターを毎日チェックする人?
じゃあ、ニュースを毎日チェックする人は?
お、私の予想よりも多く手を挙げてくれましたね。
このプレゼンの後、あなたが今よりもっとニュースを知ってみたくなると、約束します。
SNSの発展は、情報の見つけ方や議論の仕方に大きく影響を与えました。
前までは、人は新聞を読んだり、テレビでニュースを見ていた。情報をキャッチする手段は少なかったし、得られる情報はすべて中央集権的なものでした。
それと同時に、気が散ってしまうようなことも、今よりもずっと少ない時代でした。誰かが部屋に入ってきたり、家に電話がかかってきたりするときくらい。
え、みんな覚えてるよね?昔は一家族に1台しか電話がなかった時代だったって。
今は色んなアプリが携帯に入っていますね。
では、ツイッターを使っているときのことを想像してみてください。
スクロールして、関心のある記事を見つけて、ページに飛んでみました。その記事を読んでいたら、画面上のトップに通知が現れました!あなたはなんとか、通知を無視。でも、記事を読み進めると、ページ上に広告が!しかも、その広告はあなたが買いたかった靴の広告で、そういえばその靴が欲しかったことを思い出します。あなたは一旦記事を読むのをやめて、靴を見るためにインスタを開く。気づいたら友達のストーリーをチェックしてる。そして...?そう、読んでた記事のことなんて、すっかり忘れている。思い当たる経験はないでしょうか?
インターネットは楽しくて、中毒になる場所です。
いい感じのコンテンツがたくさんあるから、なかにはSNSを見ないようにブロックするソフトウェアを使っている人もいる。なぜなら、気が散り続けてしまうから。
SNSはまるで巨大食品スーパー
さて、ちょっと変に聞こえちゃうかもしれないけど、私のアイディアはこう。
SNSは、まるで、巨大な食品スーパー。...分かってる、説明させてね(笑)
あなたは、今大きな食品スーパーにいる、と想像してみてください。店内を歩き回ってる。フルーツのコーナーやお肉売り場に野菜のコーナーがあって、そこであなたはフルーツコーナーでリンゴを手にしました。
買ってもいいし、買わなくたっていいよね。そして、また何気なく店内を歩きはじめる。
そこで、私は思ったの。これってすごくSNSの世界と似ている。
(スーパーで色々見るように、)ツイッターで、あるツイートに注目したり、はたまたwebページを見たり、インスタグラムで写真に「いいね」をしたり、別のアプリを開いたりするよね。
ニュースは、大豆だ
広大なSNSの世界、新しい時代にようこそ!
SNS上のすべての投稿は、食品売り場でいうところの、品物と同じです。
イケてるインスタグラマーがかっこいい写真を投稿し、有名な起業家が恋人についてツイートする。その投稿たちは、SNSという巨大スーパーの中で、あなたの注目を引こうとしてくる。
こう考えると、私は、大豆が、ニュースの投稿なんじゃないか、と思いました。
それ自体はキラキラもしていないし、華美でもなくて、新しい商品とも限らない。でもいつもお店にあって、私たちは認識はしている。でも、じゃあ、どうしたら大豆、つまりニュースが、ジューシーなお肉や美味しい果物(インスタグラマーの写真や面白いツイート)と戦っていくことができるのでしょうか。
メディアが、このSNSの世界で戦っていくことは可能なのでしょうか。
アメリカのニュース出版社のコンテンツに、私はいつも感銘を受けています。
彼らはニュースを音声やテキスト、写真、動画などを駆使し、それぞれのSNSのプラットフォームに適応させ、ニュースを伝えています。それはまるで、大豆をゲットして、醤油や豆乳、豆腐なんかにかたちを変え、上手にラッピングまでして、お客さんの関心を引いていることに似ています。
メディアが直面している課題
このデータを見てください。
日本財団によると、日本に住む18歳の39.8%が、新しい情報を得るためにSNSを使っています。約36%はウェブサイト、そして約15%が新聞を使っています。SNSを使ってる人はもう少し多いかなと思っていたけど...。でも、新聞は14.8%でした。
ところが、18歳の彼らに「新しい情報を得るとき、どの媒体を一番信頼する?」と質問すると、とても興味深い回答が得られました。
なんと37.3%が新聞を最も信頼していると回答し、16.5%がオンラインウェブサイト。SNSの情報を信頼している、と回答したのは、たった10.6%でした。
つまり、40%が新しい情報を得るときにSNSを使っているにもかかわらず、90%もの人は、SNSの情報を信頼していないのです。若い世代は、世間から思われているよりもずっと、賢い。トレンドはSNSで見てはいるけど、それをそのまま受け取っているわけではないんです。
新聞は読まれていないけど、信頼されている。
SNSは多くの人に使われているけれど、信頼されていない。
では、18歳の若い世代はどうやってニュースを得ているのでしょうか?
これこそが、日本のメディアがいま直面している重要な課題なのです。
メディアは若い世代のために、進化し、そして変化する必要があるのです。若い世代のために、メディアのコンテンツを、ちゃんと信頼できるものにしていかないといけません。
そのためにはまず、メディアが若い世代とかかわり、彼らをもっと知ることから始めるのがとても重要です。未来は、彼らが握っています。
だから若い世代のみんな、もうちょっとだけ待っていてね。
メディアは今、変わろうとしています。
次にいこう!
私たちは、ニュースの中に生きている
次は、あなた、について。
5年くらい前から、LGBTQに関する記事をよく見るようになりました。LGBTQのデモに多くの人が参加している写真が載ってることもよくありますね。私の友人は「そうしたニュースに救われた」と、教えてくれました。
彼女は両親にニュースを読んでもらい、8.9%の日本人がストレート(異性愛者)ではないこと、決して珍しいことではないことを伝えました。
彼女はニュースの力を使うことで、両親にカミングアウトすることができたのです。
また、別の友達は、中国におけるテクノロジーの発展に関するニュースを多く読んだことがきっかけで、もともと日本で就職する予定でしたが、中国語を学ぶことを決め、そして中国へ、移住しました。ニュースが、彼の人生を変えたのです。
私たちはもっと、ニュースの中に生きていることを意識できるはずです。
ニュースとはあなたのことで、あなたの未来の生き方を教えてくれるのです。
なぜなら、ニュースはそもそも根本的に、人間、わたしたち、そしてあなたのことを伝えている。ニュースはどこかの政治家やセレブの話だけではなく、あなたの話なんです。報道価値のあるものは、周りに影響を与えます、もちろん、あなたにも。
私たちはニュースによって、社会で起きていることを知り、学ぶことができます。なぜあなたはそのニュースを悪いニュースだと、感じるんだろう。私たちにはこれから、何ができるんだろう。もし自分がニュースに取り上げられた人だったら、どう物事を見るんだろう。
ニュースはいつも他の誰かのことを伝えているけど、あなたのことにもなりうるからです。
だから、毎日ニュースに少しだけ時間を取って、世界を広げよう。
ニュースを見るときに、気をつけてほしいこと
もしあなたが自分の世界を広げる用意ができたのなら、そう、つまりあなたは立ち止まって、スーパーで大豆を手に取っていることになりますね。特に日本の若い世代にとっては、それがまず最初の大きなステップです。SNSで友達からシェアされたものでも良いのです。
ここでひとつ、あなたに気をつけてほしいことがあります。
すぐに、判断をしないでほしいんです。
どうか、すぐにジャッジしないよう、心掛けてみてほしい。
人間の脳はなるべく速く、物事を分類し理解しようとします。誰が悪者で誰が犠牲者なのかって決めようとするし、自分の既に持っている信条を強めようとしてしまう。
でも現実はそこまでシンプルじゃないってこと、あなたも知ってるよね。それに大体のニュースは、一つの観点から書かれています。
じゃあ私たちはどうしたらいいんだろう。
私たちは、自分なりの観点を創りだすことが必要なのです。
議論に新しい道をつくる
#metooムーブメントが日本で起きて 、自分の経験を告白する人たちがいました。だけど#metooから生まれた会話は、私の理想としていたものとは違っていました。ツイッターでは経験を綴った人たちを、多くの人が批判したり、侮辱したりしていました。社会が持つ核心の構造的な問題について話されることは、とても少なかった。誰が正しくて、誰が間違っているのか、という結論を、世間は早急に求めました。
すごく、悲しかった。
私は、私たちはもっと賢いはずだと、そう強く思っています。誰かがその人にとっての正義を話して、(それ以外の考えを受け入れず)保守的になったり攻撃的になっていたとしても、あなたはその他人の思う正義、とそうではない反対側、の、どちらかを選ぶ必要はないのです。
なぜなら、自分なりの見解を持つということは、議論に新しい道を生みだすことに繋がるから。
あなたが安易なジャッジをしないよう心がけることは、世界が善くつながることに、貢献していることになります。なぜでしょうか?
誰かが片方のサイドについて話し、保守的に、もしくは攻撃的になっていたら、それは世界を、社会を、分断してしまっているからです。
意見が違う、ということを認め合う
だから、あなたの意見が他の人と違っててもいい。友達が賛成してくれなくても大丈夫です。意見が違う、ということを、認め合いましょう(Agree to disagree)。二つに分かれた意見のどちらも、取る必要はないんです。
二つに分かれてしまうこの動きを、変えていこう。
ニュースをみるとき、考えよう。
時々メディアは、読者の興味を引くために誰かを悪者にしょうとしたり、悪くみせようとします。時には注目をぐっと集めるために、わざと読者を怒らせようとしてくる。
だけど覚えておいてほしい、私たちは賢いんです。私たちはメディアや他人に騙されるほど、馬鹿じゃない。
だからニュースをみるとき、考えよう。
安易なジャッジをしないように心がければ、対話を続けることができます。
ニュースについてすべてを知ってる必要なんてない
23歳の時、Huffington postという会社に入りました。世界的に大きなニュースメディアのひとつです。でも、私は当時のニュースのすべてを知っていたでしょうか?あるニュースの歴史や原因、背景にある情報まで、すべて知り尽くしていたでしょうか?そんなことはありません。
たくさんのリサーチは確かにしていました。だけど、誰にも、ひとつのニュースのすべてを知ることなんてできない。
重要なことは、ニュースについて話すときに、すべてを知ってる必要はないということ。ニュースについて話すために、専門家になる必要はないんです。
しずかにしている大勢の人たち(サイレントマジョリティー)には、意見をもっとオープンにしてほしいなと、すごく思っています。なぜなら私たちは今、みんな、メディアの一員だからです。議論すること、意見を話すことは、社会に影響を与えることができます。
私たちの声がこんなにパワフルなんて、すごく素敵なことじゃない?
議論することは、他者をより深く理解することに繋がります。異なる意見や文化、価値観を学ぶことができます。
同じような背景や価値観を持ってる人と話すのは、わりと簡単かもしれない。だけど世界がどんどん多様に、そしてグローバルになってきている現代では、これから差別や偏見、ナショナリズム、など数多くの問題にぶつかります。私たちは社会の変化と、その変化に伴う問題をも、受け入れていく必要があるのです。
最後に
最後に、このスピーチをまとめると、
メディアは今、若い世代のために変わり、進化しようと、もがきながら努力しています。苦しい時期です。ですが、彼らにニュースを届けることは、とてもとても、大切な意味のあることなのです。
また、議論を激化させたり、対立を煽るようなことは、瞬間的な判断をしないことで、避けることができます。そしてそこから、会話し、理解し、互いに尊敬することができるようになる。もしあなたが対話をすれば、他の人もきっと同じように返してくれるはずです。
Embrace the news, and we can find a new path.
ニュースをあなたの中に取り込んでいこう。
そうすれば、きっと私たちは新しい未来への架け橋を見つけていける。
Thank you.
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疋田万理さん
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