この大地を踏んだ
足の裏から、
ヒタヒタ、ヒタヒタと何かが伝わってくる。
絶望に焼けつくされた大地の記憶は、まるで湯気のように、
私の足に吸い込まれる。
体がグラグラと揺れるようだ。胸が苦しくなる。
路面電車に乗った。空いた席に座る。
歩き疲れた脚をグーッと前に伸ばしてしまう。
すると、若い男の子が、失礼します、とでもいうように会釈をし、
私の足をまたいで奥の席に座った。
電車を降り、地下街でガイドブック片手に歩いていると、
人とぶつかりそうになってしまった。
こちらがスミマセンと言う前に、
若い女の子が、失礼しました、というように会釈をして去っていく。
きちんとしていて、こちらの方が恐縮してしまう。
私はすっかり、広島の若者に好感をもってしまった。
若い人が素敵な街は素晴らしい。この街は生きている。
この大地に蓄積された深い絶望と悲しみは、
そんな若者が踏みならす足音を聞いて
ようやく、少しずつ、
本当の寧静を取り戻していくのかもしれない。
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