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家族には後悔と感謝がつきものだ #創作大賞感想
テレビやラジオ局にも地域密着型のローカル放送局があるが、インスタント麺にも、そんなローカル麺ある。
意外なことかもしれないが、ペヤングのカップ焼きそばは、元々は関東ローカルだったらしい。私は子供の頃からペヤングのコマーシャルを見て育ったので、正直、大人になるまでべヤングがローカルな存在であることを知らなかった。
「関西の人はペヤングよりもUFOを食べる」
なんて話を聞いたときには驚いたものだ。
ペヤングを製造する《まるか食品》が群馬県伊勢崎市にあり、長く関東ローカル的な見方をされてきたわけだが、現在、様々な企画もののカップ焼きそばを発売し、話題をさらっている。
それもあってか、今はどこの地域でもペヤングの認知度は高いのではないかと思う。
他に、全国区に見えて、意外にローカルなインスタント麺といえば、九州の《うまかっちゃん》だ。
まろやかな豚骨スープに細麺。ハウス食品が製造するインスタント麺で、食べればわかるが、とんこつラーメンでありながらもあっさりして繊細な味だ。九州の人が偏愛するラーメンの代表格だと思う。
以前、長野の道の駅に行ったとき、《ポンぽんちゃんラーメン》というローカルインスタント麺を見た。
見かけただけで食べたことはないので、味はわからない。
この《ポンちゃんラーメン》のほかにも、見かけたことはあるけれど、食べたことがないローカルラーメンがある。
《金ちゃんヌードル》だ。
金ちゃんヌードルが徳島の会社だということは知っていた。
そこまで知っていながら、買ったことはなかった。
こういったローカルインスタント麺。
興味はあっても、なかなか手が伸びない。地元であれば安く買えるのだろうが、他地域で売られるときはどうしても割高になってしまう。家計を預かる者としては、だったら他のラーメンにしておこうか、と自分の興味をぐっと堪え、いつものラーメンを買ってしまうのである。
だが、金ちゃんヌードルだけは、食べておけばよかったと悔やんだ。
それは、こんなエッセイを読んだからだ。
あまり食べ物に興味のない人でも、食にまつわる話を聞かせてください、と言われたら、一つや二つ、思い出がぽろりと出てくるものではないかと思う。毎朝卵焼きを焼いています、とか、うちは暑い夏に熱い鍋を食べるんです、とか。じーちゃんがお汁粉を作ってくれたとか、そういう話も食にまつわる話のひとつだ。
食べ物というものは、人との思い出に深く関わる。
特に、衣食住を共にしている家族ともなれば、日常的に食にまつわる思い出が量産されているといっていい。
コッシ―さんのエッセイに書かれているエピソードは、温かくて苦くて切ない。読んだ後にご自身のご家族のことを、回想される方も多いように思う。
家族には後悔と感謝がつきものだ。
あのとき、《ああすればよかった》《こうすればよかった》ということを抱えずにいられない。
そういった後悔を嚙みしめ、味わった後、ようやく《ありがとう》の気持ちが湧いてくる。そういう過程を経て湧き上がった感謝は、身の内にしみじみと染みわたり、自分の体の一部になっていくのだろう。
食べる、という行為と同じように、感謝も人の栄養になるのかもしれない。
もし、《金ちゃんヌードル》に出会う機会があれば、今度こそ手を伸ばしてみようと思う。
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個人的には味付け椎茸に興味深々。
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