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秋も深まり、冬の足音が間近に聞こえ始めた頃、フランスからボジョレー・ヌーヴォーがやってくる。 ボジョレー・ヌーヴォーは、ブルゴーニュ地方のボジョレー地区でその年に収穫されたブドウで造った新酒のワインである。その解禁日はフランスの法律できっちり定められているそうだ。法律を持ち出すところに、ワイン王国フランスのプライドがうかがえる。 ボジョレー・ヌーヴォーで気になるのは、何と言っても、毎年付けられるキャッチコピーだ。その味わい深さは、ワインの味を凌ぐものがある。 言葉
昭和59年11月3日文化の日のことである。 当時、小学一年生だった私は、母とふたりで都内某区で行われたイベントに出掛けた。メイン会場である公園へ行ってみると、色づく銀杏の木の下には、たくさんのテントが並び、何か焼いたり揚げたりしたような香ばしい匂いが漂っている。どうやら日本各地の名産を売っているらしく、お店の人の掛け声が賑やかだった。 食べ物に目がない母は、目を爛々と輝かせながら、美味しいものを見逃すまいと鼻息を荒くしている。そんな母に、私は小走りでついて行くのやっと