【YOHAKU】私の世界の色の見え方
もしかしたら自分が今見ている色が、隣の人が見ている色とは違うかもしれないと考えたことはありますか?
こんにちは、YOHAKUです。
日本には、色の見え方が多くの人とは違う“色覚異常“の人が約2.6%いると言われています。
その中には、色が見えない人、特定の色だけはっきり見える人見えない人など、さまざまな人がいます。
その人たちには、どんな風に色が見えているのでしょうか。
見え方の違いによって、どんな感覚の違いや困りごとがあるのでしょうか。
今回は、特に赤や緑の見え方が多くの人と異なる“色弱”の人にお話を聞きました。
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色の見え方が、他の人と違う
ー色の見え方が、他の人と違うんだって初めてわかったときのお話を聞かせてください。
大学生の頃、友達とUNOやってたときに「お前色見えてないんちゃう?」って言われた。
UNOをしたのは初めてじゃなかったけど、いつも通りカードの見分けがついていなかったみたいで、赤を出さないといけないところで緑出してたんよ。
そしたら友達が「それ違うで」って。
Twitterでたまたま色覚異常のチェック画像みたいなのが流れてきてて、それを見せてもらったら色弱の人だと見える数字が見えていて、初めて気付いた。
お医者さんに行ったわけではないんよね。
友達と「あ、そうやったんや〜」ってなっただけ。
友達がたまたま察し良かっただけやろうけど。
元々、色があんまり見えてないんじゃないかなって思うことがよくあったらしい。
焼肉行ってても生焼けの状態で食べようとしてたらしくて、止められたり。
自分がどういうタイプの色弱かも、今年に入ってようやく知ったかな。
同じ会社にいるデザイナーの子が色のユニバーサルデザインをやりたいって言ってて、その実験体に今なってる。
私だと、青と黄色は見えやすい。赤とか緑はわかりにくい。
たとえば、エヴァンゲリオンだと初号機カラーとかはわかりやすい。
けど紫は、なんというか青がもっとズーンと沈んだ感じに見えてる。(注1)
注1:全ての色弱・色盲の方が赤と緑がわかりづらいわけではなく、見え方は人それぞれです。チェックの画像が気になる方は「石原式色覚検査表」で検索してみてください。
ーいつも、どんな風に色が見えているんですか?
このアプリで、ちょっとわかると思う。
たとえば、みんなで紅葉を見に行ったときに「景色が鮮やかだね」って言われると、季節が紅葉の時期だから「そうだね」って。多分今は紅葉してて赤いよね、だからこれが赤なんだ〜って思いながら見てる。
色を見てあれが赤だ、って思うんじゃなくて、いつもより色がテカってる気がする?
これを鮮やかっていうのかな、色が弾けてるみたいな。光を反射してる感じがするから、これが紅葉かって。新緑の季節は、光を吸収してるけど濃くて力強い感じがする。
いつもそんな感じで見てる。
知識をもって定義して、感覚をもって違いをなんとなく受け取り、言葉でニュアンスを捉える、という一連のフローが私の色の認知の仕方。
郵便ポストは赤で、りんごも赤、だからその感じがきたら赤だよね。だから青リンゴは混乱する。
熟れてないバナナは、緑じゃなくて黒に見える。
緑と赤のほかにも、水色とピンクとかが同じような色に見えてる。
クリスマスって地味な色だと思ってた
ー赤と緑がわかりにくいという話で、クリスマスのことを以前おっしゃっていましたよね。
そう私、赤と緑がわからんからさ。
クリスマスカラーって、世の中的には派手な色らしいやん?
けど、ずっとめっちゃ地味やな〜なんでこんな色なんやろと思ってたんよね。
赤と緑の話でいうと、大学生の頃に上が赤で下が緑の服を着て行ったことがあって「めっちゃ派手やね」って言われたことがあった。
自分では地味めの服装してたつもりやったからびっくりしたね。
ー私服だと、人からどう見えてるかわかりにくいまま選ばないといけないですもんね。
中高までは制服やったからね。
私服はお兄ちゃんのお古を、お兄ちゃんが着てた組み合わせのまま着てて、それで耐えてた。
自分だとどう合わせればいいかわからんから。
ー勉強などで困った場面はありましたか?
たとえばゼミで複数人でパワーポイントとか作るときに、「色これで揃えようね」っていうやん。
ベーシックなパレットならカーソル当てたら色の名前が出てくるから便利なんやけど、そうじゃないやつだとよくわかんなくて。
スポイトでその色を抽出してそのまま使ったりしてたけど、ミスってると「違うよ」って言われて「何が違うんや!?」って。
ーそういう工夫をしてたんですね。
そうそう、あとカラーコード教えてもらったり。
けどみんなあんまり使わないから、何それって言われたりね。
いっつも「なんとなーくこれかな?」って言うので見分けてる。
じっくりみると、赤色はものによるけどヌルってした感じがして、緑はザラッとした感じがするから、こっちがそうかな?って思いながら見分けたりする。
あ、小中の黒板の字がよくわかんなかった。赤とか青とか。
白しか見えないんだよね。それ以外輪郭がボヤッとしてる。
たまに全色使うみたいな、カラフルな黒板にする先生いるやん。全然色の違いがわからんから、見えづらくて。
そういう先生に限ってノート提出のときとかもうるさいじゃん。
知らんがなってね。あれはね、不服だったわ。
だから勉強嫌いだったんだろうね。読めないからストレスで。
それもあって高校では自分で勉強してた。
ーそのときは、色の見え方の違いを知らなかったんですよね。
みんな見えてないと思ってたからね。
多分、何回か気づく場面もあったんよ。
信号の色とか。
信号の色も位置で覚えてる、雑学的に。
隠れないように街路樹から離れた方が赤で、縦の場合は遠くの人が見えるように上が赤とか。
歩行者信号は形が違うからありがたいね。
ー小さい頃、塗り絵でびっくりされたって話がありましたよね。
そう。
美術とかお絵かきの時間に、緑のところを赤で塗ってて、山を真っ赤に燃やしたり。
髪とか目も、茶色にしようと思って塗ってたら真っ赤にしてたり。
それで周りにはびっくりされて、自分ではこの色だと思うのにな〜?って。
肌色も知識として、クレヨンのオレンジと白を混ぜれば肌色になるっていうのはわかるけど、どこまでが肌色なんやろう、わからんなぁと思いながら塗ってた。
あと、色鬼とかあったの覚えてる?
赤って言われたらその色のものを触りに行けたらセーフみたいなやつ。小さい頃それができなかったからみんなについていってた。
そんな感じのことはよくあったよ。
知識としての色と感覚の色
桃ってピンク色じゃん。
みんな「桃はピンク」って言うから、あれがピンクってことは知ってる。
で、桃を見ると私、涼しい感じがするって思うんよ。
会社のデザイナーの人が、それは桃のピンクと水色がほぼ一緒に見えてるからだよ〜って、教えてくれた。
ピンクとかって食欲湧くんだっけ?そういう色らしいって聞いたことがある。それで水色は逆に減退色なんだよね。
でも私、色によって食欲湧くとかがわからないんよ。
いつも色じゃなくて形とか食感で判断してる。
ー私、サンリオピューロランドに行ってシナモンの青いカレーを食べたんですよ。味は普通だったんですけど、ペンキを塗ったみたいな色で、結局食べきれなかったんです。そういうことがないってことですか?
(画像を見て)これなら全然食べれるね。
マックとか吉野家がロゴとかを赤にしてる理由って食欲増進のためとかっていうじゃん。
けど自分にとってはあれも「これはポテトだから食べられる」とか「吉野家だから牛丼食べられる」みたいな感じ。
何かを見てお腹が空くとかはない。
むしろお店の色として目立ってないんだよね、吉野家とか。
ー牛丼でいうと、紅生姜とかも茶色のお肉の中にあると鮮やかで美味しそうだと思うんですけど、どうですか?
野菜が加わってる、くらいの感覚かな。
牛丼に乗せて食べると、いつも「どこいったんやろ」と思いながら食べている。食感が違う!となって口の中で見つけるんよ。
ネギも、あれは色じゃなくて、形が輪っかだからわかる。
ネギ玉牛丼とかって、美味しそうに見えるの?
ー美味しそうに見えます。うどんとかにも、あるとやっぱり美味しそうに見えますね。
なるほど、みんな美味しいから載せてるんだと思ってたけど、見た目がいいっていうのもあるんだね。
料理の見栄えってあんまり気にしたことないんよね。
インスタでバエる美味しいご飯とかもあんまない。全部ご飯じゃん、美味しそう。って。
発想が違うんだと思う。
けどネギは美味しい。
私は昔友達にネギ大好きなやつがいて、美味しそうに食べてるから真似て乗っけるようになったけど。
みんなと載せる理由が違うんかもね。
ー以前、「かわいいが分からない」ってお話もされていましたよね。
雑貨とか文房具も、色でかわいいとかがわかんない。
メイクは、キラキラしてるな、まつ毛長いなとかはわかるけど、アイシャドウやリップの色がどうとかはわからない。
肌の色も、日焼けしてるしてないってよくわかんないけど、前よりなんか存在感が強くなったら黒やなとか。黒いってなんか、凝縮された感じ?なんかぎゅって集中線が入るみたいな風に見える。
白い人は、光弾いてるみたいな感じ。
昨日はサウナに行ったんだけど、友達が日焼けしてたらしくて「わ、これが黒いってことか!」って。
それで、その人に似てる人は、黒いんだな〜って。見てわかるというより、記憶力の問題かも。
顔の違いとかも、「画風が違う」みたいな言い方してる。多分本当は色とかで雰囲気違うんだろうけど、その感覚をなんとか言語化しようとしている。
服も、着心地だけしか基本気にしないんよ。
タグ見て色判断したりして、名前としての色しか認識してなかった。
パーソナルカラーとかも、最近知った。会社の子に「この表にある名前の色のものを買うと比較的似合うはずだよ」って教えてもらったんだけど、その名前の色がないことがあるから、困る。
わからなければわからないと言えばいい
ー他には、どんな場面で困ることがありますか?
たとえば友達と待ち合わせしてるときに、「赤色の看板の前にいる」とか言われると「そんなんないで!?」って。混乱する。
色に関してはそんな感じ。わかんないことの方が多い。
男子トイレ女子トイレも、色じゃなくて形で認識してる。だから、アイコンがめっちゃオシャレな形になってたりするとわかんない。そういうときは横にGとLとか書いてくれてるとわかる。
他にも、薄暗い居酒屋でメニューを強調するためのマークが背景の色と同化してわからなかったこととかがあったね。友達に「とりあえずおすすめのやつ選ぼう」って言っていたけど、私にとっては何がおすすめか分からなかった。「なんでわかるの!?」って思ったよね。
あと、Among us(注2)っていうゲームわかる?
オンラインで知らない人たちとやるときは、キャラの色で「赤さん」「青さん」とかって呼ぶんだけど、そう言われても自分が何色かもわかんない〜ってなっちゃう。
友達でやるときはみんなが独自に登録している名前で呼んでくれるからありがたかった。
(注2)宇宙を舞台にした人狼のようなゲーム。オンラインでマルチプレイできる。
ー「これがあると助かる」みたいなことってありますか?
形が第一かな。おんなじ形のボタンとかで色で分けられていると、なんとなく色の光の沈み込み方で判断するしかなくて、自信がなくなる。
エクセルの一緒に使うシートとかも、色だけでカテゴリ分けされているより色と形や文字をセットで分けておいてくれるとありがたい。
動きが止まっちゃうんよ。これ何色だろう、って。こっちの方が濃い薄いとか、それを何回も繰り返す。パッキリ違う色はわかるけど、繊細な色は難しいね。
ーじゃあ一緒に働く人や遊ぶ人が、配慮できることはあるんですね。
わからないときに私が「わからん」って言えばいいだけだからね。
気づいてからはどんどん言ってる。この色わからん、ごめんって。
職場もそういうのに対して適応力高い人が多いし。
気づくまでは、みんなそうだと思ってたからなかなか言えなかった。
けど、言わないとわかんないんだなって。
気持ち的には楽。「これわからなくても、大丈夫なんだ」って。無理なもんは無理だし。
ーみんな何かしらできないものはありますよね。
そう、もしかしたら練習すればできるようになるかも、っていうものでもないしね。
今は、自分の感覚と世間の常識が違うってわかり始めたところ。
大学生のときに気づいて、今年はようやく会社の子のおかげで自覚し始めた。
今までは、自分の感覚に頼ってたからわからないことだらけだった。
知識としてはわかるよ、赤が熱い感じがしたり、黄色が元気になる色だったりって。
他の人はその感覚が最初にきて物事を判断する、というのを知らなかったんだよね。
その発想を知ってから自分の感覚とは違うところで判断していると頭では分かっている。
自分と他者の感覚をしっかりと判断しないと、日常生活で支障をきたすんよね。
会社のデザイナーの子のおかげで私は、何がわかって、何がわからないのかがわかった。
正直知らなくても生きていける。なんか違うな、たまにピースが合わないな、くらい。
けどターニングポイントとして、教えてくれる人に会えたからいろいろわかったね。
話すことで自分って存在が明確になるからね。今年は良い気づきの年になりました。
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今回は、色の感覚が多くの人とは違う人に、どんな風に世界が見えているのかをお話してもらいました。
自分の感覚を言葉にして説明してみること、そして自分以外の人の感覚についても知ることによって、少しずつ視界の余白を広げていけるのかも、と思いました。
近年は、できるだけ多くの人にとってわかりやすい見え方を追求した、カラーユニバーサルデザインやカラーバリアフリーという概念や取り組みも広まっています。
また、文中で紹介したようなアプリなどもあります。
みなさんもぜひ、いろんな色の見え方について知ってみてください。
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YOHAKUは、誰もがそっと抱えているけれど、他人から見えづらい事情にスポットを当てて、それが読んだ人の優しい想像力の余白となることを目指しています。
「最近こんなことに悩んでいる」
「なかなかわかってもらえないけれど、自分の事情を説明できたなら」
「こんな人もいるって知ってほしい」
こんな気持ちを抱えるかたがいれば、是非インタビューさせてください。
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植木凜・小林華・沖中優麻
文責:小林華