更年期から始まるおばあさん体型

街を歩くとはつらつと歩く若い女性を結構見かける。絶対的に女性が多い。若い男たちはそれでも何人かのグループを作り楽しげに歩いている。彼女らは余裕の歩きをして見せている。
 一方そのなれの果てであるが背中が曲がり、あごと頭が前に出た着飾った女性もよく見かける。彼女らは歩くのが必死で周囲を見渡たりできる余裕はない。なんとかつまずかないで歩いている。
 このような女性は何歳くらいか?背中見れば顔を見なくても大体わかってしまう。若いすっきりとした女性も例外なく老けていく。背中と首がまえかがみに曲がるのは細い痩せた女性に多い。背中の丸みを元に戻すことはできない。首と背中の曲がっている人はやがて腰にくる。
 あごを前に出し胸骨の上端と一致している。これは真似しようと思ってもできない。気管支が曲がって苦しそうに見えるが徐々に変形しているので本人には自覚症状はないが、時々休んで「えいや!」と背中や腰を伸ばしたりしている。首下がり症候群(首たれ病とも言われる)の範疇に入るような極度な前屈はパーキンソン病、多系統性萎縮症、脊髄小脳変形症、筋萎縮性側索硬化症など重症な病気に併発する。町で見受ける女性は姿勢についてあまり苦にしていなようである。自分で見れないのは幸運かもしれない。

ここでは普通の女性の背中の曲がりの原因と予防につて書いてみた。太った女性は学問的な裏付けはないが背中の曲がりが少ないように見える。多分いろいろ食べるので骨量の維持に役立のだろう。
 日本の女性閉経は50歳前後である。生殖年齢が終わりに近づくと卵巣から分泌されていた卵胞ホルモン(エストロジェン)が急激に低下していく。更年期症状は人によって異なるが4、5年にわたる。以後生殖不可能となる。人によって訴えは違うがイライラしたり、体がほてったり、急に寒くなったり、動悸がしたりする自律神経の嵐にさらされる。
 産むために背負った荷物の重さから解放されるが老化を加速するので自分で自分の体を守らねばならない。街角で山のように盛り上がった背中の論評をぐっと抑え込めて目をそらす。自分も見えないから同じようになっているかもしれない。

自然界は更年期以後の女性は必要ないといっているのだ。その頃になると自分の子供も育ち親離れしていく。男性の場合は女性に比べて骨格が大きく骨量が多いいので外観からは 体型の変化が明らかでない。男性ホルモンの低下は徐々で女性のような極端な変化は見られない。50歳前では心臓や血管の病気は男性に多いが女性が更年期を迎える頃になると心臓血管系の病気は女性の方が多くなる。女性ホルモンであるエストロジェンの保護が少なくなると骨量は急激に低下し、肌のつやがなくなり、いくら化粧をして塗りたくっても若かった頃の肌には戻らない。
 更年期になり抗動脈硬化作用を持つエストロゲンが急激に低下すると脂質代謝異常も起こし血液のコレステロール値があがる。血管壁をきれいに覆っていた内皮細胞に悪玉コレステロールが枕着し、其れが大きくなると崩れて飛び散り血管を塞いで心臓の場合なら心筋梗塞を脳動脈なら脳梗塞を起こす。そこでホルモン補充療法HRT (Hormone replacement therapy )が治療方法として実施される。

卵胞ホルモンを経口ないし皮膚から補充する。またこれは大腸、胃、食道がんのリスクを下げるとされている。子宮がんの予防として黄体ホルモンの併用で経血し子宮内膜を増殖させないように脱落させることで防ぐと言われている。ホルモン補充療法は乳がんが増加するとの報告が二、三十年前にあって以来ホルモン補充療法をする人が減ってしまった。
 最近の見解では発生率に差はないとされた。乳がんについては自分で乳房をさわって周辺より硬く感じる組織がないか時々やってみると良い。また2~3年に1回の検診を受けることが望ましい。卵胞ホルモンは骨量の減少を防ぎ骨折の発生リスクを下げることが証明されている。更年期を境としての骨量の減少が起こっていて骨のー圧迫骨折が起こったり背中が曲がってから慌ててもすでに遅い。健康保険で一定の基準を満たすと骨量を増やすビタミン薬が出るようになった。ただし変形したところが治るわけではない。

私は更年期になった女性にホルモン補充療法を勧めているが、更年期特有の症状がホルモン使用後なくなると来院しなくなってしまう人が多い。私はホルモン補充療法は今のあなたにするのではなく将来のあなたのためにやっているのだと嫌になるほど念を押す。日本ではホルモン補充療法の認識は薄い。フランスに住んでいたことがあるが家にくるお手伝いさん(ポルトガル人)もHRTをやっていたのは驚いた。その他友人に尋ねると自分はやっていると言う人が多い。ホルモン補充療法を見てみるとオーストリアでは約56%、アメリカでは約38%であるが日本ではたった1.7%の人しかホルモン補充療法を受けていない。日本女性の周辺状況は社会的に遅れているし、意識の目覚めも遅れている。私1人ががんばっても大海に水滴を落とす位だ。
 日本の老女が買い物にいくのに椅子にもなるキャリアを引きながら歩いている。買い物中にその蓋に座れば一時腰の疲れを忘れされる。パリでは買い物袋を引っ張りながら歩いている人も何人か見た。男女同権で歳をとった買い物袋のキャリアを持った男も女と同程度で出くわした。一度に沢山のものを買うのがあちらの習慣らしい。少なくとも日本の女性のように首も背中も腰も曲げて歩いている人をほとんど見かけなかった。

更年期になったらホルモン補充療法(HRT)があるから受診を勧める。患者はその治療をして欲しくて来院する人は少ない。いろいろなわけのわからない症状があり悲しくなって泣いてしまう、暑くなったらと思ったら急に汗が出て手足が冷たくなる、動悸がするなどの症状で相談に来る。脳下垂体から出る卵胞刺激オルモン(FSH)は上昇し卵胞ホルモンは低下している。主役はエストロジェンと言う卵胞ホルモンであり。検査をして目に見える数値で理解してもらう。減ってしまった卵胞ホルモンの低下が主役なのだが黄体ホルモン併用で自然のサイクルに似た状態にする。保険診療が認められている。更年期になってホルモン補充治療をしていない人が将来骨折によって掛かる費用よりホルモン補充治療をしていた人の方が骨の破壊が少ないし費用も少ない。途中で止めても良いが10年ぐらい続けることが望ましい。だいぶ前であるがアメリカの看護師さんのデータでホルモンを使った人、使わなかった人が統計的に有意差があるか雑誌で見たがホルモンを使った方が良かったとのことである。多くの看護師さんが調べているので今までのデータに加えて今も追跡しているのではないかと思う。補充療法は一生続けてもよい。
 私は骨が悪かったかどうか特に頸椎の変形が強く首にいつもサポーターをつけていた。私は生理があるころからホルモン補充療法を始めた。その効果は骨に対して有効だったかその判断は難しい。というのは骨と骨をつなぐ椎間板が消失し椎体が互いに接近しすれ合う状態になってしまった。そのため一般的に右腰痛がある。
 たいした皮膚ではないがホルモン補充療法を行った事で老化が遅いように感じている。このホルモン補充療法では日本女性の独特の思考回路が浮かび上がる。自立性の欠如だ。私の友人で産婦人科の医師に考えを聞いたことがある。彼女は何でも自然が良いと言ってこの治療に全く関心を持たなかった。お産は自然分娩がよい。無痛分娩の事を尋ねたら自然分娩が良いと考えているので関心はなかった。そんなもんだろうかと私は思う。


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