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感情に呼びかける演出家小林香さん

演出家小林香さんとの出逢い

私は明日海りおさんのファンです。
明日海さんの舞台は是非浴びたいと、ミュージカルやコンサートなどに脚を運んでいます。

明日海りおさんが宝塚退団後に出演した舞台『マドモアゼル・モーツァルト』の演出だったのをきっかけにその時初めて『演出家小林香さん』の素敵さに出逢いました。

その後も明日海りおさん出演舞台の演出が小林香さんである作品が何作かあり、どんどんその素晴らしさに気付かされ心惹かれていきました。
明日海さんの舞台に脚を運ぶ私が出逢えた小林香さんの作品は

①2021年 マドモアゼル・モーツァルト
②2023年 ヴォイス・イン・ブルー
③2024年 王様と私

上記3作品でした。

そのどれもが小林さんの内面やセンスが豊かに反映された素晴らしい舞台であったと感じています。

先日退団したばかりの元宝塚歌劇団花組トップスター柚香光さんの退団後初コンサートが小林香さん演出と発表されたのをきっかけに、これから小林香さんの舞台に出逢う方に向け、そして私自身が小林さんの舞台に感じた想いを整理するために、小林香さんの素敵さや素晴らしさについて上記3作品を振り返りながら綴っていきたいと思います。

🎼マドモアゼル・モーツァルト🎵

明日海さんが退団後初めて女性役を演じたこの作品。ざっくり説明するとあの有名な音楽家モーツァルトが本当は女性だった?!という内容の作品です。(ほんとにざっくり!笑)
もう少し詳しく書くとエリーザという女性が、自分という人間の在り方に迷ったり悩んだりしながらも『モーツァルト』として人生を音楽に懸けて生き抜くと決意しそれをまっとうする姿を描いた作品です。音楽座で上演されてきたミュージカルを明日海さんを主演に迎え、小林香さんが新たに創ったのがこのマドモアゼル・モーツァルトでした。

明日海さん退団後初の女性役ということで明日海ファン的には『男役の残り香』も男性として過ごすモーツァルトに感じられなんだかちょっと美味しい。そしてなおかつ、女性役をこれから演じることが増えていく明日海りお移行期、徐々に自分たち(ファン)の気持ちを『女性役な明日海さん』に慣らしていける機会も持てるという明日海ファン的にとてもありがたい作品でもありました。

カッコよくて可愛くて、魅力の塊のようなエリーザとモーツァルト。彼(彼女)の放つ魅力に夢中になった観客は、モーツァルトの音楽に出逢い魅了されていった当時の人々の気持ちを擬似体験していたようにも思います。
その魅力を体現できる明日海さん、そしてそれを引き出す力のある小林さんならではの作品でした。

キャスティングにどれだけ小林さんの意向が入っているかはわかりませんがモーツァルトと心を通わせる妻役に、明日海さんの相手役だった華優希さんが居たこともかなり大きな引力となってこの作品の魅力を膨らませていたと思います。

小林香さん演出舞台初観劇だった私は、明日海さん演ずるモーツァルトや華さん演ずるコンスタンツェなど、登場人物の内面や心情を表す演出が素晴らしいと感動したことを覚えています。

例えばコンスタンツェの本音に触れたことをきっかけに、自分自身と向き合いエリーザとしてではなく自分の全てである『音楽を創るモーツァルト』として生きると決意し『魔笛』という楽曲の作成に命懸けで挑んでいく場面。

この場面はモーツァルトのほとばしる内面や葛藤を実際の楽曲制作過程の壮絶さに併せて、明日海さんが己の精神・肉体を鰹節のように削りに削って感情を動かす、受け手である観客も息をするのを忘れるくらい壮絶な場面でした。

観劇してから何年も経っていますがこの魔笛の場面で魅せた明日海さんの激しい感情の揺れや、それを受けて本気で『モーツァルトと明日海りおの心身』に心を寄せ強く手を握りしめる『コンスタンツェと華優希さん』の心情が心に強く刻まれている場面です。

明日海さんと華さんはコンサート1作と大劇場1作のみトップコンビとして舞台に立っていました。どちらも明日海さんの退団色の強い作品だったので、再び舞台上で色濃く、今までの関係性から脱した場所で『新たな表現の境地に立つ2人』が観れたこともとても嬉しかったことを覚えています。
小林香さんが互いの関係性(先輩後輩・男役娘役)を越えた表現をと、明日海さんや華さんにお稽古中言葉を贈っていたことがお2人から語られていました。演者の背景まで理解し表現という対等な土俵作りをしてくださった小林香さんの演出だったからこその素晴らしい場面であったと思います。

表現者の方の表現力あっての舞台ではありますが、演者である明日海さんたちの感情を最大限に引き出した演出小林香さんの素晴らしさも際立つ作品であったと思います。
今も心に焼き付いている、感情が揺さぶられた舞台です。

💎ヴォイス・イン・ブルー💎

そしてマドモアゼルモーツァルトから2年、明日海りおさん20周年コンサート『ヴォイス・イン・ブルー』も小林香さんの演出でした。

このコンサートで素敵だなと思った所は『明日海りお』という表現者の成り立ちへのリスペクトやオマージュだけでなく、これから、つまり未来へのビジョンをも観客に提示し、更に明日海さん自身のやりたいことも盛り込んだコンサートを創ってくださった所です。

『明日海りお20周年コンサート』という主題に相応しく今まで、つまり男役であった明日海さんを応援してきたファンが観ても懐かしく、退団後の舞台を振り返ることもできてこれからも楽しみになる。そんな、現在過去未来を網羅した素敵な楽曲の数々でした。

表現者になるまでの、生まれてきた本名のご自身である幼少期から『明日海りおになるまで』をコーナーの映像に反映させていて、明日海りおという1つの命への大きな愛も感じました。

これはきっと小林香さんという方が生まれてきたことや、生きてきた今まで、生きていくこれからを尊ぶ人間性の方で、そんな小林香さんならではの部分が色濃く出ている演出なのだろうなと感じました。

明日海さんの『仲間と毎日練習していく時間を持つことができるアカペラに挑戦したい』という願いも盛り込み、宝塚在団中の相手役さんたちや同期、退団後出逢ったミュージカル界のみなさまなどなど。ゲストの方との時間の持ち方やそれぞれのパフォーマンスも素晴らしかったです。

観終わった後の満足感がすごく高く、あたたかい想いに満ち溢れた素敵なコンサートでした。

マドモアゼル・モーツァルトでは『作品に挑む演者同士として対等であること』をたいせつに舞台を演出されていましたが『明日海りお20周年コンサート』であるヴォイス・イン・ブルーでは反対に『これまでの関係性』を舞台の上でたいせつに魅せてもらうことができたのも印象的でした。

ゲストコーナーではまずゲストのソロ曲で表現者としての魅力を、その後のトークコーナーでは明日海さんとのその方の関係性が感じられるフリートークを、そして最後にデュエットを、という最強に最高な『ファンの観たい』がそこかしこに散りばめられていて素晴らしかったです。

みんなちがってみんないい❤️‍🔥



明日海さんからの、ファンや出演者のみなさまへの愛と感謝、そして創り手である小林香さんの出演者とそのファンへの愛がてんこ盛りの素晴らしいひとときでした。

20周年に明日海さんが伝えたい『愛と感謝』が小林香さんのあたたかで緩急抜群のバリエーション豊かな演出によって余す所なく観客の胸に届いていたと思います。

小林香さんは出演者の『生きてきた時間』と『生きていく時間』双方をたいせつに、愛を持って舞台を創られる方であることが伝わってくる素晴らしいコンサートでした。

👑王様と私👗

記憶に新しいのがこの『王様と私』です。
今までいろんな素晴らしいキャストの方々で上演され続けてきた伝統あるグランドミュージカルであるこの『王様と私』。この作品を初めて観た時、小林香さんの言葉に命を美しくそして活き活きと宿す力に感動したことを覚えています。

翻訳も小林香さんだったので、登場人物たちの紡ぐ言葉の美しさと、役の魂がその心の中から生み出したかのような生きた言葉の数々。
舞台を観ていると同時に本も読んだかのような、心と頭に降り積もり想像力を掻き立てる素敵で生き生きとした言葉たちの素晴らしさに感動しました。

ざっくりとあらすじを説明すると『王様と私』は、明日海さん演ずるイギリス人家庭教師のアンナがシャムの王家の人々や北村一輝さん演ずる王様と出逢い、互いに影響を受け心を通わせあい同じ時を過ごすというお話しです。(すごくざっくり!笑)

アンナ先生が子どもたちに物事のエトセトラや広い世界について教える時や、王様と心を通わせていく時の葛藤や喜びや怒りを伝える時の言葉1つひとつが瑞々しくて。登場人物たちがこの時代のシャムという国で感じたことを、表現者を通して受け手である観客に届けてくれるツールである生き生きとした台詞たち。
表現者の方々の表現力はもちろん、言葉自身が持つ力を言葉選びのセンスによって最大限に引き出しているのは翻訳が小林香さんであったからこその『王様と私』であったと思います。

台詞を発している表現者の心に言葉が自然と沁み込み、役としてそれに応えていくうちに『お芝居』が創られていく。小林さん演出の舞台を観るとそんな感想が頭に浮かんでくるくらい、台詞1つひとつが演者の方の心によく沁み込んで感情表現の一助となっていることが伝わってきます。

きっと普段から言葉がすきで言葉を研究し、ご自身も様々な言葉に心を動かされてきた経験が在る方なのだろうなと想像してしまうくらい、小林香さんの紡ぐ言葉には品格と尊厳があって素敵なのです。

心に残り心に響く、感情の演出家小林香さん。

3つの作品を振り返ってみて感じたことは、私は小林香さんの演出する舞台が、そしてそこに生き生きと生きている感情の在り方がすきだということです。

小林香さんの舞台に立つ明日海さんが『もっとやれます。もっともっとやりたいです!!』と言いたくなるくらい、小林香さん演出の舞台に身を置き表現するからこそ動く心の部分が在ることを語っていました。
表現者と観客の心、両者の心に響いて残る言葉を生み出す舞台の創り手、それが小林香さんであると私は感じます。

心に残る言葉の量が多く、観客や演者の心に響く感情の質が高い。まさに小林香さん自身が『芸術の源』なのかもしれません。
ディズニーやジブリのように確立された『小林香』というジャンルで在るようにも感じます。

これから先、また再び明日海りおさんが小林香さん演出の舞台に立って欲しいと願ってやみません。
これを読んだあなたにも、心に残り心に響く舞台を創る、感情に呼びかける演出家小林香さんとの素敵な出逢いが訪れますように。

最後まで読んでくださってありがとうございました。

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