荒れた手でカニをさわると、カニアレルギーになる
「カニを食べるとき、みな無口になる」
と言われます。
いかに上手に身を取り出すか。
まず、手を取って、足をもいで。
どこを、どのようにほじったら、身が取れるのか。
一心不乱、ド真剣です。
カニを食べるとき、注意すべきは「手」です。
「カニの手」ではありません。「人間の手」です。
手がカサカサだったり、ひび割れていたら、
将来、カニのアレルギーになるかもしれません。
◆アレルギーを起こすまで
手の皮膚では(手に限りませんが)、外敵を監視する細胞(ランゲルハンス細胞)が見張りをしています。
荒れた手でカニを触ると、カニの成分が皮膚にしみこんで、ランゲルハンス細胞がそれを察知します。
ランゲルハンス細胞はカニを敵だとみなし、中央の免疫システムに伝えます。
中央の司令官は、最初は寛容な精神で許してくれます。
後日、カニを食べたとき、手のランゲルハンス細胞は、「またあの敵か」と中央の免疫システムに報告します。
この場合も、たいていは許してくれます。
何回許してくれるかは個人差がありますが、堪忍袋の緒が切れることがあります。
「もう許さん」とブチ切れた中央の司令官は、リンパ球に攻撃態勢を整えるように命令します。
そして、全身のランゲルハンス細胞に不審者(この場合カニ)の特徴を伝えます。
この状態を感作といいます。
そうなってから、カニを食べたらどうなるでしょうか。
◆カニアレルギー
カニに感作された人が、荒れた手でカニを触ると、
手のランゲルハンス細胞が感知して近くのリンパ球に伝えます。
指名手配の連絡を受けていたリンパ球から抗体が発射され、
手がかゆくなります。
カニを食べるとくちびるでも同様のことが起こり、
くちびるがはれてきます。
胃でも反応が起きてお腹が痛くなります。
胃から吸収されたカニの成分が全身に回り、
じんましんが出ることもあります。
これがカニアレルギーです。
末永く、カニを楽しむにはどうすればよいのでしょうか。
◆荒れた手でカニを食べない
魚アレルギー患者13名(1~40歳、平均14.5歳)のうち、
12名がアトピー性皮膚炎、または、手に湿疹があったとの報告があります。
アトピー性皮膚炎の人は手荒れを起こしやすいです。
アトピーの人、手がひび割れている人は、素手でカニを触らないようにしましょう。
ビニル手袋をしてからカニを食べるか、
家族にカニの身を取ってもらいましょう。
参考文献
1)千賀祐子:「病態の新しい考え方 食物アレルギーとの関係」,皮膚科の臨床 61(6): 771-777, 2019.