体調不良の原因は、合板や集成材のシックハウス症候群かも
◆苦い経験
私と化学物質過敏症との出会いは、20年前にさかのぼります。
19歳女性の患者さんの訴えは、
「体調が悪い、体がだるい、頭が重い」でした。
検査の結果、異常がなかったため、
「疲れでしょう」と様子を見てもらうことにしました。
-半年後-
その患者さんが来院し、打ち明けてくれました。
「一人暮らしを始めてから、おかしな症状が無くなりました。住宅に問題があったのだと思います。」
当時は「シックハウス症候群」という言葉が、まだ広く知られていませんでした。
病気を見つけることができず、申し訳ない思いでした。
(個人情報保護のため、実際とは少し変えてあります)
◆シックハウス症候群
シックハウス症候群とは、化学物質過敏症の一つです。
今日、シックハウス症候群という言葉は有名ですが、
実際、病院を受診する人は滅多にありません。
いや、あるのかもしれませんが、極めて見つけにくい病気です。
「新築の家に住んでから、目がチカチカするんです」
「自宅をリフォームしてから、気持ちが悪いんです」
そんな患者さんなら、シックハウス症候群を疑いますが、
多くはそんな訴えはありません。
「体調が悪い」「疲れやすい」「のどがつまる」「動悸がする」「頭が痛い」など、訴えは多岐にわたり、何の病気なのか、絞ることが難しいのです。
いろんな科をたらい回しにされ、最後は精神科か心療内科というパターンもあるでしょう。
◆合板や集成材からホルムアルデヒドが
1990年代、新築住宅が多く建てられ、シックハウス症候群が表面化するようになりました。
大昔、家は無垢材で建てられていましたが、
近年、合板や集成材が使われるようになりました。
合板は、薄いシートのような木を、何枚か接着剤でくっつけて作ります。
集成材は、いくつかの木を接着剤でつけて作られます。
使用される接着剤は、尿素とホルムアルデヒドが反応することで強い接着力を発揮します。
問題は、建材が湿気を帯びたとき、尿素とホルムアルデヒドの結合切れて、ホルムアルデヒドが放出されることです。
それを吸い込むことにより「頭が痛い」「気持ちが悪い」などの症状が出るのです。
◆対策は
シックハウス症候群になるかどうかは個人差があります。
同じ家に住んでいてもシックハウス症候群になる人と、ならない人に分かれます。
一般に、家にいる時間の長い奥さんがなりやすく、
あまり家にいない旦那さんはなりにくい傾向があります。
シックハウス症候群の一番の対策は、家を建てる時、
合板や集成材をなるべく使わないことです。
すでに建ててしまった場合、まずは、換気扇による24時間換気をしましょう。
参考文献
柳沢幸雄:「空気に漂う危険な物質」,月刊保団連 1366:4-10, 2022