リファラル文化のなかったスタートアップが半年本気で向き合ってみたので振り返る
こんにちは、GaudiyでHR/PRを担当してる山本(@hanahanayaman)です。
採用手段の一つとして一般化した「リファラル採用」。自社にマッチした人材に出会いやすく、採用コストを抑えられるなどのメリットがあることから、「リファラルを強化しよう!」と日々奮闘している人事の方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、採用のあらゆる手段があるなかで、最も実行が難しいのもまたリファラル。これほど「言うは易し、行うは難し」といえる手段もないのではと、個人的には思います。
私が勤めるGaudiyというスタートアップでも、2024年1月からリファラル採用に本気で取り組みはじめ、この半年で実行のポイントや課題がだんだんと見えてきました。
今回のnoteでは、私たちの思想や実際に取り組んだことを、反省点も含めて公開することで、リファラル採用の「実行」に対する解像度を高める一助になるといいなと思っています。
特に、以下のような課題をもつ人事の方を想定して書いてみます。
まだまだ取り組みの過程ですが、なにかしらご参考になれば嬉しいです!
リファラル採用は、なぜ難しいのか?
そもそもリファラル採用がなぜ重視されるのか。会社によって考え方は異なると思いますが、私は、採用のコストダウン以上に、圧倒的に「売り手市場」の昨今の採用市場において自社を選んでもらうには、信頼してる人からの口コミ=リファラルがますます重要になっているからだと考えています。
特にスタートアップは、認知が弱く、採用予算が限られる会社も多いです。その環境下でも、成果を出せるのが「リファラル」だと思います。実際に、採用に強いスタートアップは、軒並みリファラルも強い印象があります。
(数年前のnoteですが、Ubieさんの事例も圧巻でした…!)
とはいえ冒頭でもお伝えしたように、リファラル採用ほど実行難易度の高い手法もないと思います。実際に自社で取り組んでみて感じたのは、「企業文化や従業員エンゲージメントとの紐付き」と「変数の多さ」がリファラル採用を難しくしているということです。少し説明したいと思います。
1:社員から推される会社になっているか?
そもそもリファラル採用は「友人や知人に自信をもって推せる会社なのか?」が大前提にあります。そこがないと、リファラルはうまくいきません。
心から推せる会社であれば、一緒に働きたいというピュアな気持ちで誘うことができますし、熱量をもって口説くこともできると思います。もちろん自分の推しが相手の推しになるとは限らないですが、まずは自分が心から推せて、どんな部分が推せるのかを自らの言葉で語れるかがとても重要です。
2:どの企業にも効く「万能薬」は存在しない
もうひとつ大切なのは、リファラル採用には、どの企業にも効果を発揮するような「万能薬」は存在しないということです。なぜなら、リファラルを強化すべき目的も、社員が誘いたくなるような施策も、「自社のカルチャー」を無視してはうまくいかないからです。
特に、リファラル採用が一般化するにつれて、施策のHOW自体はインターネットからも情報収集しやすくなりましたが、それを自社にそのまま持ち込むのは危険だと考えています。
たとえば、リファラルごはん補助やリファラル報奨金を高額に設定して紹介を促すような施策もありますが、内的動機付けが強いカルチャーだと、金銭報酬を釣り上げただけではうまく機能しないことも多いです。それよりも「紹介してくれた人をみんなの前で称賛する」ほうが有効だったりします。
つまり、紹介のインセンティブとして機能するものは、企業文化によって異なるという観点も、リファラルを推進する上で大事だと考えています。
3:入社決定までの変数が多く、戦略実行が難しい
さいごに実行面でハードルになるのが「変数の多さ」です。リファラル採用のKPIを分解すると、以下になります。
応募以降は他の候補者と同じ選考プロセスになるため、リファラル採用の施策は「紹介してくれる社員比率」「1人あたりの紹介数」「応募率」の3つをいかに向上させるかになります。これらの変数を念頭に置きつつ、自社の組織コンディションを見極めて、効果的な打ち手を繰り出し続けなければ、リファラル採用はうまくいきません。
そしてもうひとつ、上記のKPIには入っていませんが、考慮すべき大事な点が紹介から応募に転換する「時間軸」です。転職相談を受けて紹介してくれるケースもあれば、転職を全く考えていない人に声掛けして紹介してくれるケースもあり、特に後者は中長期的なキープインタッチが肝になります。
また、企業側が明確に採用したい期日が決まっているポジションなのか、そうではないのかによって施策のアプローチも変わってきます。前者の場合は、明確なペルソナ像をもとに全社に呼びかけたり、ペルソナと接点を持っていそうな特定の人に個別アプローチするのが効果的ですが、後者の場合は、対象範囲を絞らずに、友人や知人に自社を知ってもらうきっかけづくりを施策として実行するほうがより効果的です。
このように、実効性のあるリファラル採用を動かすには、高い水準の戦略立案と実行力が求められます。「良い人がいたら紹介してください」という声掛けだけでは、なかなかうまくいかないのがリファラルです。
創業6年目にしてリファラルに本気を出した理由
そんなこんなで、私自身も「難しい…!」と思いながらリファラル採用に向き合ってますが、ここからはGaudiyの事例を紹介していきたいと思います。
前述のとおり、リファラル採用を強化する理由は各社が置かれている状況によって様々であり、それによって打つべき施策も異なるため、まずはGaudiyの背景情報からお伝えさせてください🙇♀️
最近よく見かける「採用のブラックホール企業」には、連続起業家やスタートアップを何周か経験している経営層がいることが多く、これまでの人脈をフルに活用したリファラルで、採用を強力に推進しているケースが多いなと感じます。
一方のGaudiyは、代表の石川さんが23歳のときに起業した会社です。よくリファラルは「経営やリーダー層のコミットメントが大事」と聞きますが、そもそも知り合いが少ない状況においてはコミットメントしようにも限界があり、Gaudiyはもともとリファラルを得意としていなかったと思います。
そこからGaudiyを知ってもらうための発信を増やし、スカウトでお声掛けし、エージェントさんの力も借りながら、徐々に仲間を増やしてきたGaudiyは、2023年末時点で約80名まで社員数が増えました。
初期フェーズには若手中心だった組織にも、徐々にミドル・シニア層が増え、その頃には平均年齢は33歳になっていました。さまざまな企業で活躍してきたメンバーが増えた今なら、リファラルでも成果を出せるのでは?と考えたのが、創業6年目にしてリファラル採用を強化した一番の理由です。
また、数は多くなかったものの、リファラル経由の候補者は他のチャネルと比べて入社決定率が高いという過去実績も、判断の後押しになりました。
なのでGaudiyの場合、リファラルの文化が元からあったわけではなく、採用戦略としても特別リファラルに注力してこなかった状況下でのプロジェクト立ち上げであったことを前提に、読み進めていただければと思います。
本気を出した結果、成果につながったのか?
このnoteを読んでいる方は「半年本気を出してみた結果、成果は出たの?」が気になるかと思うので、先に実績数値(※正社員ベース)をお伝えします。
まず、この半年間(2024年1月〜6月)におけるリファラル経由の入社決定は、8人でした。これは、2023年通期の5人を上回る結果です。また入社決定数に占めるリファラル比率は、「11% →36%」に増加しています。
また、先行指標となるKPIも、総じて上昇しています。
紹介数は、まだ2024年の折り返し地点ですが、2023年通期の36人を大きく上回る 83人 の着地でした。応募率は下がっていますが、すぐの転職を考えていない知人・友人にも声掛けやごはんに行くなどのアクションが増えたことは良い傾向だと考えています。また、紹介してくれた社員比率が 25.6%→40.8% に増えたことも、取り組みを通じた大きな変化です。
もともと手付かずだったため初速を出しやすかったという背景はありますが、みんなの頑張りのおかげで、一定の成果は出せたかなと思います。
とはいえ初速を維持するのは難しく、ここからがまさに真価を問われるところ…!というのは後半にお伝えするとして、この半年間、どんなことに取り組んできたのかについて次にご紹介します。
「カルチャー」と「仕組み」の両輪で立ち上げ
プロジェクトの進め方
タイムラインとしては、最初の1ヶ月で社内ヒアリングや土台づくりなどを行い、2〜3月に立ち上げ施策をいくつか投入して、4月以降は運用フェーズに入っています。主導メンバーは、HR/PRチームのmukyaさん(途中で異動)→やまもと(私)→namiさんにバトンパスしながら進めてきました。
リファラルの立ち上げでは「文化」と「仕組み」の両輪が大事だと考えていたので、初期フェーズでは、まず自社のカルチャーにリファラル採用を位置付けることと、リファラル活動しやすい土壌づくりに注力しました。
1:自社のカルチャーにリファラルを位置付ける
まずはじめに、「なぜリファラルを推奨するのか」のWHYを、自社のビジョンやカルチャーに紐付ける形で言語化することから始めました。
Gaudiyでは、「DAO(自律的にオーナーシップをもって行動する)」というバリューに基づき、「採用を人事の仕事にしない」という考え方をこれまでも大切にしてきました。
それに加えて、今回新たに位置付けたのが、ファンベース採用としてのリファラルです。採用活動は「ファンづくり」であり、自社のコアファンともいえる社員全員で仲間集めをしたいというビジョンをnoteで伝えました。
2:リファラルしやすい「土壌」をつくる
同時並行で、リファラル活動しやすい仕組みづくりにも取り組みました。
先のリサーチでわかってきたのは、Gaudiyにはエンゲージメントが高い社員が多いにも関わらず、リファラル活動が活発でないという事実でした。
その心理的背景には「自分は推せるけど、Gaudiyにフィットしそうな知り合いがいない」「誘いたい気持ちはあるけれど、どう進めればいいのかわからない」といった課題があることが見えてきました。
そこでまず、リファラル採用に対する会社のスタンスや、具体的な進め方などを明示した「リファラルHandbook」をNotionで作成し、Weeklyの全社会議で共有しました。
このハンドブックで特に意識したのは、リファラルへの向き合い方を伝え、心理的ハードルをなるべく取り除くことです。mukyaさんが社内調査から導き出してくれたインサイトをふまえて、会社のスタンスを明記しました。
さらに、実際にアクションする際の障壁になりそうなことを前もって取り除けるよう、よくあるQAも含めて具体的なTIPSを盛り込みました。
他にも、リファラル専用のSlack channelを整備して紹介ワークフローをmukyaさんが作ってくれたり、「お誘いごはん」「ごめんねごはん」などのリファラル採用経費を整備したり、リファラル報奨金制度を見直したりして、リファラル採用の活動がしやすい環境づくりを最初の1ヶ月で行いました。
紹介を促進するために、なにをやったか?
リファラル採用のスタートラインに立てるくらいの土壌が整ったところで、次に紹介促進をブーストするための企画をいくつか実行しました。
Gaudiyの状況としては、まずは紹介数を増やすところに課題があったため、「思い起こす」→「声をかける」のアクションを促進する施策から着手しました。施策として目新しいものはあまりないですが、人事として意識していたことを含め、具体施策をいくつか紹介してみます。
1:リストアップするまで帰れまテン
まず思い起こす施策として実施したのが、Gaudiyで一緒に働きたい人をリストアップする飲み会、通称「リストアップするまで帰れまテン」です。
リファラルのリストアップ手法としてはメモリーパレスが有名だと思いますが、もくもく記入するよりも、わいわい食べ飲みしながら開催したほうがGaudiyメンバーには相性がよさそうだと考え、ゆるく懇親会をしながらSNSを眺めてリストアップするというシンプルな方法にしました。
またネーミングは、当時「帰れまテン方式のミーティング」がプチ流行していたので社内伝達率が高そうだったのと、参加しやすいエンタメ感を醸し出すため、「リストアップするまで帰れまテン」としました。(1人あたり10人のリストアップを目標にしつつ、知人・友人が少ないメンバーもいるので、参加してくれた人数 × 10人をみんなで達成したらOKという形式で開催。)
Engineer/Designer/PdM/Mixにグループを分けて、計5回開催した結果、合計567名のリストアップをすることができました👏
2:Fandom Dinner Ticket
次に、リストアップが終わる頃合いに用意したのが、リストアップした人に声掛けしやすくするための施策「Fandom Dinner Ticket」です。
このお誘いごはんチケットは、HR/PRチームの namiさんと、コムデチームで業務委託をしてくれてる kasumi さんが企画・制作してくれました🫶
リファラルごはん経費の存在周知も兼ねて、期間限定のブースト施策として、使用するごとに上限金額が引き上がる3枚綴りのチケットにしました。
また「社員全員にFandom Dinner Ticketを配りました🎟️」というX投稿をしたところ、それをみた社員の知人・友人から「チケット配られたらしいね、ごはん誘ってよ」という風に、逆のお誘いをいただくこともありました。
詳しい運用はここでは割愛しますが、社内のSlackでも美味しいごはんの投稿が相次いで、リファラルの空気醸成にも大きな貢献をした施策だったと思います。(詳しくはnamiさんが後日noteを書いてくれるはず…!)
3:リファラル専用channel / 採用月報のリファラルコーナー
もうひとつ、紹介促進する上で大事なのがモメンタムづくりです。
モメンタムを生むために私が意識しているのは、情報を散らさず一箇所に集約することです。せっかくリファラルの動きがアクティブになっても、その情報が散らばってしまうとモメンタムになりづらいので、全社員が入っているリファラル専用Slack channelに「紹介ワークフロー」や「リファラルごはん申請ワークフロー」を連携し、リストアップ会の声掛けや結果報告なども集約するなどして、リファラル採用が活発に動いてる空気感の醸成を意識していました。
また、全社のWeekly Meetingで共有する採用月報に「リファラルコーナー」を設けてもらい、リファラルのKPI進捗や、紹介してくれた人/された人の声をミニインタビューで届けるなどして、モメンタムを維持できるような情報発信を心がけました。
振り返りと、今、直面している課題
立ち上げ3ヶ月で上記の施策に取り組み、この半年間リファラル採用に全社で取り組んできたなかで、以下のような気づきがありました。
リファラルしやすい環境さえ整えれば、自律的に動いてくれる社員が多いなということ(全員に感謝🙏)
当初の仮説どおり、以前よりもリファラルできるメンバーが増えているなということ(特に入社歴の浅いメンバーからの紹介が多かったです)
Gaudiyの場合は、金銭報酬よりも、称賛されたり、楽しんで活動できたりする方が動機付けになるなということ(もちろん活動ハードルを取り除くための金銭補助は必要)
「(短期で)採用につながりそうな人」だけでなく「(中長期目線で)一緒に働いてみたい人」もお声掛けの対象として、リファラルをファンづくりの一環と捉えてもらえるかが、持続的な活動には大事だなということ
一方で、正直なところ初速ほどの勢いは失われてきたと感じています。
今まで本気でやってなかったからこそ、立ち上げは比較的成果が出やすかったですが、ここからがまさに正念場。いま直面している課題をシンプルに表現するならば「リファラルを企業文化にできるか」に尽きると思います。
まだリファラルしたことのない社員にいかに参加してもらうか
リストでまだ声をかけていない人に、いかに声掛けしてもらうか
一度紹介してくれた人とキープインタッチし、いかにアトラクトできるか
社員を飽きさせない、参加したくなる企画をどう継続的につくれるか
などなど、難しい課題が山積していますが、ひとつひとつ仮説検証を繰り返しながら徹底してやり続けることで、その積み重ねが文化になっていくのだと思います。そのために必要なのは「全員でやり抜く」という意思です。
DAO的な組織カルチャーを持つGaudiyなら、リファラルを文化にできると私は思っているので、そのプロセスもまたいつかお伝えできるといいなと思います。
社員に推される会社であり続けたい
さいごに。繰り返しにはなりますが、社員に推される会社であり続けなければ、リファラル文化は途絶えてしまうので、Gaudiyのファンづくりを担うHR/PRチームとしては、ここに本気でコミットしたいと考えています。
個人的には「リファラル採用」という言葉を社内で聞かなくなるくらい、採用につながるか否かに関わらず「Gaudiyのことをついつい知人友人に話してしまう」状態をつくれることが理想だと思っているし、「今やっていることや会社のビジョンを語っていたら、向こうから興味をもってくれた」という事例を、もっともっと増やしていきたいです。
日々悩みだらけですが、私たちの取り組みが、どなたかのご参考になれば嬉しいです。より詳細が気になる方がいたら、ぜひラフにお話しできればと思うので、PittaやXなどでご連絡お待ちしています!
ではまた〜👋👋
GaudiyのHR/PRチームでは、グローバルHRを担う未来の仲間を探しています!興味のある方がいましたら、ぜひお話しさせてください。
HR以外も全方位採用してますので、採用サイトぜひ覗いてみてください💁♀️
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました!