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「ラブカは静かに弓を持つ」を読んだ

本屋さんは危険だ。
本屋大賞とは、「全国書店員が選んだいちばん!売りたい本」と謳っているだけあって、本屋さんに立ち寄ったら一面ずらーっと受賞作を推しまくっている。「売ります」感ゴリゴリだなぁと感じつつ、思いっきり乗っかってしまう。読みたくなっちゃう。
今回の大賞「汝、星のごとく」と3位「光のとこにいてね」は、既に読了済みなので、2位「ラブカは静かに弓を持つ」にロックオン。

「スパイ」という言葉の響きから不穏な小説なのかと勘違いしていた。
派手なアクションとか、007みたいな話ではなく、タイトル通り、深く深く深海に潜るような心に触れる物語だった。

子どもの頃のトラウマ体験により、この世界に対する信頼が持てない主人公。今にも深い闇に引きづり込まれてしまうのではないかという不安を感じ、悪夢にうなされ、不眠に悩まされている。
そんな「不安」の土台に立っているから、人との付き合いもうまくできない。そんな状態でも生きられる。仕事もして、日々のタスクをこなして生きている。
潜入捜査員として音楽教室に通い、そこで出会った講師や仲間、そして「音楽」と共に、「安心」を取り戻していく。やがて潜入捜査員という「嘘の自分」が、心の平穏を感じられる「居場所」を獲得するという矛盾に苦しむことになる。

怖かった経験、抱えてしまった罪悪感、誰にも言えなかったことを開示できるようになり、少しずつ「自分」を取り戻し、自分が立っている世界の土台が「安心」「大丈夫」という信頼を取り戻していく。

じわり、じんわりと心に沁みる作品だった。
「ラブカ」は深海魚。「深海に潜る」というイメージは、暗くて怖いだけじゃなく、深く静かで、そこでしか出会えない「自分」があるのかもしれない。心の学びや探求を「深海」に準えることもある。
やみくもに「怖い」と「見ない」でいるよりも、思い切って飛び込んで、ちょっと溺れてみた上で、しっかりじっくり感じることって、人生を豊かにするエッセンスなのかもしれない。そんなことをふわふわ考えている。

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