『アイの歌声を聴かせて』はどれくらい未来の話なのか。
皆さんは映画『アイの歌声を聴かせて』はご覧になりましたか。
もしまだでしたらぜひ見に行くことをお勧めします。
少なくとも私は今年一二を争う長編アニメ映画だったと思っています。
さて、このアニメを見ていてふと気になったことがあります。
それは「これは一体西暦何年の話なのだろう」ということでした。
多くのSF作品では『2001年宇宙の旅』や『2112年ドラえもん誕生』といった具合に「未来である」ということを示すために「それが何年なのか」を明示することがよくあります。しかし、この作品では敢えてそれを避けています。日常的に目にするカレンダーなどのシーンでさえ年号を明記することを避けているのです。おそらく、意図的に。
この記事では、いくつかの点から「何年なのか」を敢えて考えてみようと思います。
※この記事は筆者の勝手な推測であり制作サイドの設定とは無関係であることをお断りしておきます。また十分にネタバレには配慮しておりますが、できれば本作をご視聴になってからお読みいただくことをお勧めします。
手がかり①:曜日の並び
本作は多少前後譚はあるものの6月9日から6月14日までの6日間を描いた作品となっています。それは、度々映る監視カメラのタイムスタンプから読み取ることが出来ます。
そしてこれらの日取りは美津子のスケジューラ画面から「月曜日から土曜日まで」であることがわかります。
つまり、この年は「6月9日が月曜日」だということです。
では、「6月9日が月曜日」という年はどれくらいあるのでしょう。
これを求めるためにはいくつかの方法がありますが、ここでは「ツェラーの公式」を使ってみることにします。
「ツェラーの公式」とは、「ある年のある月のある日が何曜日か」を求める計算式で、以下のように表されます:
ここで「C」は「年の上2桁」、「Y」は「年の下2桁」、「m」は「月」、「d」は「日付」を表します。
また、「D」が求められる「曜日」で、「月曜日が1、火曜日が2、……、日曜日が7」となります。つまりこの式の「C」と「Y」の値をいろいろにいじって「6月9日が月曜日」という年を求めてやればいいわけです。
これを実際にやってみると、向こう100年では「2025」「2031」「2036」「2042」「2053」「2059」「2064」「2070」「2081」「2087」「2092」「2098」「2104」「2110」「2121」年がそうであるとわかります。
手がかり②:月の満ち欠け
この作品では月が非常に印象的に描かれています。特に14日のシーンの満月は印象的でした。ということでこれを手がかりにしましょう。
ある年のある月のある日が満月かどうかを正確に計算するのはとても難しい問題です。なぜなら太陽の動き(正確には地球の公転)と月の動きを計算しなければならないからです。またそれにしても常に一定で動いているわけではなく、他の天体との兼ね合いもあり時々刻々と速度が変化しています。
そのため実際には天体の動きを観測しながら計算式を補足して計算を行わなければなりません。
しかし、ここでは敢えてその辺を切り捨て、簡易的な計算式でもって望みたいと思います。確かにこれでは誤差が大きいですが、「実は軌道エレベーターが出来て月の公転周期変わったんだよ」みたいなことがあるともうどうしょうもないので、深く考えないことにします。
というわけでここで使用するのは堀源一郎の簡易式です。
この式は俗に「おにおににし」と言われ、日付からおおよその月齢を求めるのによく使われる式です。
この「b(m)」の項は月ごとに与えられる定数で、上半期の定数が「0,2,0,2,2,4」であることから「おにおににし」と呼ばれます。
月齢は新月を0とし、その14日後がおおよそ満月となるものですので、上の式の「y」に先ほど求めた年を当てはめ、「A」が14になる年を探すことになります。
これを実際にやってみると、「2098」の場合に満月であることがわかります。
ちなみに筆者はアマチュア暦師として趣味で江戸時代の暦・いわゆる「旧暦」を現代に再現する手帖を作成していますが、この手法で計算しても同じく「2098年6月14日は満月」という結果になったことを添えておきます。
結論
『アイの歌声を聴かせて』は今から77年後、2098年を舞台としていると、この記事では推定します。
なんだか思ってたよりも遠めの未来でしたね。
さいごに
『アイの歌声を聴かせて』はとてもいい映画ですので、どうか見に行っていただければ、と!