思考実験:ルール免除要員制度の導入
はじめに
こんにちは、ICT系フリーランスの花田です。
今回はエンタープライズ系の開発現場でずっと感じていた課題についての思考実験をしてみます。
これは、すべての要員が同じルールを守らねばならない(完全な再現性を目指す文化)に対する謀反です(笑。
ひとつの読み物としてご笑覧ください。
コメントやDMで所感をいただけたら幸いです。
本記事の要旨
ルールの存在意義は生産性を底上げすることにあり、足かせをはめることではありません。
ルールを守ることが成果の底上げになっている要員と足かせになっている要員がいるのは確かで、それぞれが特性に合わせた働き方を選べると成果の最大化につながる可能性はないでしょうか。
自己管理能力を定量的指標で測ること、待遇を定量的指標で決めることで、制度の透明性を確保し、実現可能性を高めることができるのではないでしょうか。
1. 制度の狙い
ルールの順守がむしろQCDを下げていて、さらに、自己管理のもと成果を出せるという実績が積まれている要員は、足かせを外すことができる。
ルールが嫌いな要員は発想力と想像力を基礎能力にしていて、皆が同じルールを守るべきという要員は反復力と継続力を基礎能力にしている。という傾向があるかもしれないという仮定に基づいて、個人の特性に合わせた働き方を選べるようにすることで、パフォーマンスの最大化を狙う。
働き方の選択ができるだけで、待遇に差はない。
2. 制度の概要
ルールの免除が許容される要員を免除要員、ルールを必ず守る要員を遵守要員とする。
免除要員と順守要員の評価は後述する同一の評価指標を使う。評価指標はあらかじめ全要員に周知する。
免除要員と順守要員の待遇は同じで、職制や階級、給与体系に差はなく、働き方だけが異なる。
明確なルールがありそれを守ることで安定した成果を出す要員、自由度が高い環境で革新的な成果を出す要員、どちらも不可欠で、どちらにも免除要員と遵守要員がいることが想定される。
免除要員と順守要員は自分で選ぶことができ、評価指標が一定水準を超えていても順守要員を選ぶ要員が多くいることが想定される。
3. 免除要員を選択できる条件
ルールの免除要員は最小ルール順守+裁量制であることを納得できること
待遇は順守要員と同じであることを納得できること
プロジェクト終了時に評価指標に沿ってそれまでの蓄積成果を更新した際に、一定の水準を超えている間は免除要員であることを継続でき、一定の水準を下回ると順守要員になることを納得できること
4. 免除要員の選択のプロセス
プロジェクトの終了時に参画した全要員について指標に沿った評価を実施し、フィードバックミーティングを実施する
フィードバックミーティングにおいて、評価指標が一定水準を超えている順守要員に対しては、次のプロジェクトから免除要員になるか意思を確認する
フィードバックミーティングにおいて、評価指標が一定水準を下回っている免除要員に対しては、次のプロジェクトから順守要員になることを伝える
フィードバックミーティングにおいて、評価水準が一定水準を下回っている順守要員に対しては、免除要員になりたいか意思を確認する。なりたい場合はフォローアップが必要かをヒアリングし、求めに応じて実施する
5. 全要員の評価指標
納品後不具合発生率(定量指標)
マイナス評価。
高品質な成果を提供できることを示す。
QCDのQに該当する。納品後に発生した不具合の割合を評価する。
狩野モデルでの基本的品質に該当する。不具合が発生しないことは、顧客にとって当然期待される基本的な品質であり、マイナス評価となる。
計算方法: 納品後に発生した不具合の数 ÷ 総納品数 × 100
目標値: 例えば、不具合発生率を5%以下に設定する。
コスト削減の貢献度(定量指標)
プラス評価。
コスト意識が高く、効率的にリソースを使用できることを示す。
QCDのCに該当する。各要員がコスト削減にどれだけ貢献したかを評価する。具体的なコスト削減提案が採用された場合や、実際にコスト削減が達成された場合に評価する。
狩野モデルでの魅力的品質に該当する。コスト削減の提案や実現は、顧客にとって予想外のプラス要素であり、魅力的な品質として評価される。
計算方法: 提案されたコスト削減額 ÷ 総コスト × 100
目標値: 例えば、コスト削減率を10%以上に設定する。
納期前倒し率(定量指標)
プラスマイナス評価。
効率的に作業を進められることを示す。
QCDのDに該当する。プロジェクトやタスクを納期よりも早く完了した割合を評価する。
狩野モデルでの性能品質に該当する。納期を前倒しで完了することは、顧客にとって期待される性能の一部であり、プラス評価となる。
計算方法: 前倒しで完了したプロジェクト数 ÷ 総プロジェクト数 × 100
目標値: 例えば、納期前倒し率を20%以上に設定する。
6. 想定するポジティブな変化
個人の特性に応じた働き方の実現
創造力や発想力を重視する要員と反復力や継続力を重視する要員が、それぞれの特性に応じた働き方を選択できるため、パフォーマンスの最大化が期待できる。
個々の強みを活かすことで、組織全体の生産性が向上する可能性がある。
制度の透明性の向上
評価指標を明確にし、全要員に周知することで、制度の透明性が向上し、公平な評価が行われる。
透明性が高まることで、要員の納得感が得られやすくなり、モチベーションの向上にもつながる。
モチベーションの向上
自己管理能力を発揮できる要員にとっては、裁量が増えることでモチベーションが向上し、より高い成果を期待できる。
自己管理ができる要員にとっては、自由度が高まることで、創造的なアイデアや新しいアプローチが生まれやすくなる。
7. 想定するネガティブな変化と打ち手
チームの一体感の低下
要員ごとに働き方が異なることで、一体感が低下する可能性がある。
対策として、働き方の多様性を受け入れる文化を醸成し、目的や目標を共有することで、働き方の違いを理解し合う環境を作ることが重要となる。また、ルールの透明性を確保し、なぜ順守が必要なのかを明確に説明することで、軋轢を軽減する。
自己管理能力のばらつき
免除要員が自己管理能力を発揮できない場合、パフォーマンスが低下するリスクがある。
対策として、免除要員になるための条件を厳格に設定し、普段から自己管理能力があることを確認することが重要となる。また、特別措置としてフォローアップやサポートを提供することで、パフォーマンスの低下を防ぐことができる。
8. 導入の障壁と対策
文化の変革
この制度を導入するには、組織全体の文化を変革する必要がある。
要員が新しい制度に適応しやすくするために、教育やトレーニングを実施することが重要となる。
評価者の訓練
フィードバックミーティングの質を高めるために、評価者のトレーニングを行うことが重要となる。
具体的で建設的なフィードバックを提供することで、要員の成長を促進する。
おわりに
この制度により、働き方の多様性に対応した柔軟な組織に変化し、要員のリテンションアップにつながるのではないでしょうか。
その結果、成果の最大化の一助になるのではないでしょうか。
今回の思考実験はここまでです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
コメントやDMで所感をいただけたら幸いです。
最後に、独自の方法論をお持ちの方がいらっしゃったらぜひ一度会話させてください。
よろしくお願いします。