文豪、シスコの想い出と共に、永遠に。
こんにちは。
実は昨年、とある文豪が亡くなられました。
高橋三千綱先生。
記事を書くタイミングを考えていましたが、先日『シスコで語ろう』を再読し終わりましたので書きたいと思います。
高橋三千綱先生の本は、私の母が読んでいた本を、大学入学前の余暇に耽読しました。『九月の空』、『シスコで語ろう』、あともう一冊読んだ記憶がありますが、本名を思い出せない…。
特に、『シスコで語ろう』の跳ねるような軽快な文章は、頭から離れずに長い歳月が経ちました。
先生の訃報で『シスコで語ろう』を探すことに。どこにあっただろうか、本を詰め込んだ段ボールをひっくり返して探しましたが見つかりません。しかたなく、古本を買おうかとネットを見ると、高いんですよね。Amazonでは二万円とか…。ちょっと手が出せない。
やれやれと思ってましたら、実家で再開を果たしました。いつ実家に持ち帰ったのだろうか。もしかすると、自由奔放な先生と同じように、風に乗って実家に帰ったのだろうか。いずれにせよ、再会をはたせてよかった。
『シスコで語ろう』は、先生がサンフランシスコに遊学されていた時の私小説です。先生の人間味がふんだんに散りばめられ、どこから読んでも面白い。若者には勇気を与えられますし、壮年には青臭さに憧憬を抱かされます。
僕も、全てを投げ捨て海外に行こうかなあ、と思った時期があります。ですが、先生と違って踏み出せなかった。ほろ苦い。
まあそれも人生の醍醐味ではあります。
そして、訃報後に出版された一冊の本を手にしました。
『人間の懊悩 今は飲みたい』
先生が書かれたエッセイです。
酒、酒、酒、酒。先生の人生には、どこもかしこも酒が出てきます。酒で病気を罹患されますが、決して悲観的ではない。これは、先生が作られた文学と酷似しています。先生の本は、清々しい気分で読むことができます。
この本で知ったのですが、『シスコで語ろう』はビザが切れて大学を退学されて、帰国後に出版社に持ち込まれました。何社からは断られますが、一社から自費で出版することに。しかし、本が売れず、担当の編集者は逃げ、借金が残ってしまった、と。
このようなストーリーがあったなんて、とても驚きです。芥川賞を取って順風満帆な先生が書かれた本だとばかり思っていました。
そう思うと、『シスコで語ろう』はさらに読み甲斐があります。どこかで出会うことがありましたら、ぜひ読んでみてください。
それではまた。
花子出版 倉岡