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英読書会-吉野源三郎 「君たちはどう生きるか」

2021/9/20
参加者:英、AIさん、YMさん

*「吉日読書会」…思い立ったが吉日なので開催する、ジャンルフリーの読書会。本を読んで好き勝手に感想を言い合います。

吉野源三郎 「君たちはどう生きるか」(1937)
自分の生き方を決定できるのは、自分だけだ。人間としてあるべき姿を求め続ける、コペル君と叔父さん−。「子どもたちに向けた哲学書であり、道徳の書」として読み継がれてきた歴史的名著。スタジオジブリの宮崎駿監督が映画制作中との発表もありました。もう子どもではないですが、読んでみます。あえて敬老の日に!

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●王道の成長物語。高校生の時に読んだ時は、説教くさいと思ってしまった。
●哲学的だが、物語にしてあって読みやすい。上手い書き方。
●こんなおじさんがいたら良い。
●いじめ問題のシーンが印象的。本人たちだけの間では解決できないのがいじめ。大人が正しく介入している。まぶしい。
●主人公たちはインテリの家庭。本の出版は1937年。成長し、太平洋戦争のときには学徒出陣などで徴兵される世代では。生きづらいだろう。生き延びられたのだろうか。「火垂るの墓」の主人公も、周りから浮いてしまった物語。いじめてきた上級生や山口は適合していそうだ。
●勝子さんの立ち位置は少し謎。コペルくんは好きだったのかな?
●女性の描きかたが戦前にしては画期的では。コペルくんの母や友達の姉・勝子はかなりのインテリジェンス。豊かな階層だったのだろうが、この時代にありがちな「女ながらに」的なエクスキューズは無い。
●豆腐屋の浦川くんの母も強い。女性が総じて自我があるキャラクター。浦川くんの妹も弟よりしっかりしてる。宮崎駿監督の作品に登場する女性たちと親和性がありそう。
●友人の危機やいじめを傍観してしまった主人公。今でも共感。
●サン=テグジュペリ『星の王子さま』を彷彿とさせた。大人になると失ってしまう、子供たちに本質を見る力を忘れないでというメッセージ、という点は似ている。どちらも子供に向けた本で、近い時代に発表されており、吉野源三郎もサン=テグジュペリも同世代。世界は第二次世界大戦の前や最中。きなくさい時代に子供に向けたメッセージという共通点がある。また、少々教訓的な文体は、長く『星の王子さま』定番訳とされてきた内藤濯氏の文体と似ている。それも思い出した要因かも。この時代周辺の物書きが子供に向けて書くとこうなるのかな。(近年の『星の王子さま』の訳は教訓めいた調子は少ない)
●中盤のおじさんのノート「(コペルくんたちも)生産しているものがある」ということだが、答えははっきりと書かれてない。生産してるのは「良い人間になるべき自分たち」ということであってる?友情とか…
●コペルくん「良い人間になりたい」と締めくくる。良い人間てのはどうなん、とも思うが、13歳ぐらいってこんな感じ。アンネの日記の最後も同様の記述。戦争のある時代の10代の子たちの切実さ。
●数年前にスタジオジブリの宮崎駿監督がアニメ化に取り組んでいるという発表があったが、どうなるのだろう。やがて大戦に至る1930年代の世界が現在の社会と共通しているということは感じている。宮崎駿監督もやはりそのような空気を感じて、今、再度読み直されるべき作品ということか。少し怖い。
●1930年代後半頃の子供たちに向けて書いたものだが、すでに満州事変、2.26事件があり、直後には日中戦争が始まる。太平洋戦争でこの世代の子は戦争被害を受ける。大人たちが子供に希望を託すには遅いよ、と今の時代からは思ってしまう。が、実際に1930年代渦中の人たちは案外呑気だった。戦争も外国のことで、日中戦争もすぐに終わるだろうと思っている。吉野源三郎氏がこれを書いたのは30代後半(同世代by英)。コペルくんたちの親世代。今の私たちは人ごとではない。子供より大人が読まなくてはならないのでは。
●岩波文庫版では、丸山眞男氏の解説がある。演劇版を見たらいまいちだった?勝子さんのキャラが強すぎたようだ。
●演劇にしろアニメにしろ、物語でありアートである。哲学書を物語形式で描いている本書をアート化するのは難しそう。どうなるのか?ジブリさん頑張ってください。

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