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英読書会-柳田國男「遠野物語」

2021/2/19
参加者:英、TAさん、HNさん、AIさん

*「吉日読書会」…思い立ったが吉日なので開催する、ジャンルフリーの読書会。本を読んで好き勝手に感想を言い合います。

柳田國男「遠野物語」
岩手県遠野地方に、今なお語り伝えられている民間信仰や異聞怪談の数々。東日本大震災をきっかけに注目されました。震災から10年の今年、改めて読んでみたいと思います。

https://honto.jp/netstore/pd-book_27806592.html

●学問的でもなく、昔話調としてでもなく、絶妙な立ち位置の書き方。
●たんたんと語っているのだが、読んでいるうちにいつの間にか書き手(語り手)自身が体験したことのように感じた。
●じゅうぶん文学作品だと思った。文体が心地よい。
●リアルに想像するとおどろおどろしい、人間の闇の部分を書いている。(親子で殺したりとか)しかし文体が淡々としていて心地よく聴ける。
●自然との共存、一体感。
●地理的な話に惹かれる。地名とアイヌ語の語源など。
●同時収録の「山の人生」:山で暮らしている人たちについての考察。読めば理解が深まりそう。
●妖怪的な存在というより、人間にツッコミどころの多い人がたくさん出てくる。
●のどかな田舎というイメージが勝手にあったが、遠野は小盆地、城下町として栄えていた。交通の要衝。だからこそ、古さと新しさが混在した物語が残っている。盆地は独特の発展のしかたをする。(京都や奈良も盆地。)富豪も多く登場する。海岸の異人の話も出てくる。釜石に鉱山もあるので、明治期に産業が栄えたり技師が入ってきたのかもしれない。
●女性で心を病む人が多い。封建的な道徳の中で行きづらいことが多かったのかもしれない。今よりもっと人間関係など大変だろう。
●家族や近隣の人どうしで殺すなどおどろおどろしい話もあるが、家族であっても殺さなくてはならなかった、飢饉など本当に厳しい時代はつい最近まであり、身近な話だっただろう。これより後の、昭和の初期には東北で飢饉があり、飢死したり家族を売らなくてはならなかった。飽食の時代で、家族愛が前提となっている現代のほうが特殊な時代で、そのような厳しさへの対応は普通に存在した時代。淡々とした文であるのも、厳しさへの感情移入の度合いは現在とは違っていたゆえかもしれない。
●生死の境があいまい。子供と神が遊ぶのも。宮崎駿も神や妖怪を出す物語が好きだけど、「となりのトトロ」も子供にしか見えない。「千と千尋の神隠し」にもオシラサマ出てきた。キャラデザはちょっと違うけど。
●この地域での河童の色が赤いというのも面白い。山男も赤い顔と言われる。異なる民族系統の人に共通なのかもしれない。刺青文化もあったのかも。(古代日本人やアイヌなど)
●「遠野物語」が書かれた明治の終わり頃は、明治時代以降の外国文化が流入してくることに対し、日本の固有の文化を意識する時代。再発見したり、残そうという意識もあったか。森鴎外や芥川龍之介が今昔物語など日本の民話をもとに小説を書いた時代も近い。夏目漱石「夢十夜」も、不思議な体験を不思議なまま、とくにオチはなくナンセンスなまま描いている。明治以降、合理的な精神がメジャーになり、怪談や妖怪などは迷信扱いされたが、見直す動きも。語り手である佐々木喜善も文学者を志していたので、共通する意識持っていそう。
●時代が新しい話が多いのが意外。フィクションではない。神話と民話の違い。「民話」は必ずしも昔話ではない。体験した人が生きていたり、せいぜい祖父母の話だったりする。
●「遠野物語拾遺」という続編も出ている。うちの話も話したくなる気持ちがわかる。
●宮沢賢治の童話と通じるので、この後、宮沢賢治を読んだら理解が深まりそう。



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