見出し画像

マッパで解放され脳がほぐれた極楽浄土の平泳ぎ

男女混浴スパに行って脳内革命が起きたという話。

ある冬の終わり頃、私は体がバキバキに痛く、頭が爆発しそうな行き詰まりを感じて、理由はわからないけど発狂しそうでした。

ベルリンでは風呂桶有りのアパートに住むのは至難の技で、私は風呂桶に身を浸すことに恋焦がれていました。

私が住んでいたアパートの浴室は長細く、洗面・トイレ・シャワーが縦に並び、人間1人が使用できるギリギリの幅に設計されていたもので。クイズで答えるのにモタついていたら壁がどんどん迫ってきたみたいな圧迫感でした。

ベルリンの冬は暗くて濡れてて、いつも、今年こそ、こんな悲しい冬を味わうのは最後だ、と思うのですが、夏になると日が長く、爽やかで蚊のいない気持ちよさに、鬱々としていた季節をすっかり忘れて、また冬が来る、というのを繰り返していました。

以前から、ベルリンで評判だと耳にしていたスパがあったのですが、安くないし、近くないし、なんとなくめんどくさくて、行ったことがありませんでした。

スパには10個以上のサウナ、室内・屋外プール、露天風呂があり、ブッダの像がインテリアであったりして南アジアのおしゃれリゾートな雰囲気。非日常感を味わえ、一日中ゆっくりできる充実の施設。

猛烈に、風呂に浸かってぼーっとしたくなった私は、よし、このスパに行こうと思いたちました。

そのスパに行った結果、もっと早く来ればよかった!毎冬来ていたらよかった!高くてもまた来たい!解き放たれた!という衝撃が走りました。

リラックスできる充実の施設なのもさることながら、良い経験だったのが、全員が裸であるということ。トップレスとかそういうちまちました話ではなくて、男も女も上下全裸。

そして、男女分かれていないこと。風呂もサウナも、何だったら更衣室も男女一緒に使います。

日本の銭湯や温泉で、真ん中の仕切りの壁がなかったらと想像すると、恐ろしくてムリムリムリと思考がシャットダウンしてしまうかもしれませんが、ちょっと日本に当てはめて色々考えてしまうとあまりにも様子が違うので、一度母国文化のことは横に置いておいて受け止めていただきたい。

男女一緒で何もかもマッパというのが、私にとっては爆笑で(心の中で)。

ひとりで行っていたのですが、ずっと笑いをこらえながら、マッパでサウナで、おじさんやおばさんやタトゥーだらけの若者達と入ってました。

みんな、ボローン、ブラーンです。私だって平たいボディをバーンです。

サウナは直に座ると暑いのでタオルをお尻の下に敷いたりしますが、体を隠す目的ではないようで、裸のまま段々のところに横になっていたり、中には座禅を組み瞑想をしているヨガ女子もいました。もちろんどの身体のパーツも全て解放されており、タオルで覆われていません。

老若男女みんながずっとマッパで、自分もマッパだと、何もかも、どうでもよくなるのです。隠さなければと思っているから恥ずかしいのであって、誰も隠さなければと思っていなければ恥ずかしくありません。

裸を見るのがセクシャルだ、いやらしいという価値観は、結構すぐに揺らぐものなのだなと思いました。

あまりにもマッパに囲まれていると他のことが考えられなくなります。

ある種の雑念がなくなる、何もかも意味がないように感じる域に達するような。

人間もただの動物で、いったい何をいがみあったり、競い合ったりしてるんだろう、みたいな。人種も宗教も政治的立場も裸だとわからないし、世界平和に近づくかもしれない。

いろんなことが取るに足らないことに思えて来ます。

10個以上あるサウナをハシゴしながら、時にはサウナでおじさんと2人きりだったり。マッパで、おじさんと並び、スチームの中でジッと静かに汗を流すのは、なんともシュールでした。

冬の寒くて暗い午後に、水中がライトアップされた屋外の温水プールをマッパで平泳しまくるのは心身がほぐれて何とも言えない開放感。

天国に来たカエルのように悠々とのびのびと泳ぎました。極楽浄土とはこんな場所なのかもしれません。

裸を見ることが特別なことではないという価値観になると、ボローンもブラーンもただそこにあるだけで、皮膚に包まれた肉体であって、それ以上ではないのです。

一度、別のスパに行ったとき、そこはサウナ内がマッパ、それ以外の場所は水着着用ルールだったのですが、アラブ系の青年たちが興奮してふざけ合い騒いでいて、警備員に注意されてるのを見ました。

肌を覆い隠す女性がフツウである文化から来ると振れ幅が大きすぎて衝動が抑えきれなかったのかもしれません。

みんなが裸の解放について同じ方向性の意義を感じていなければ、見方が大きく違ってしまえば、裸の自由の平穏は崩れてしまうのも理解できます。

私はひとりだったので、より周囲を気にせず、解き放たれて、グヒグヒ笑いながら風呂やサウナへ渡り歩いていました。

スパ館内は携帯持ち込み禁止なので、みんなひたすらのんびりして、休憩のソファや寝台スペースでゴロゴロします。誰もジロジロ人を見たりしません。安全安心です。

通路を歩くとき、レストラン、バー、休憩ベッドスペースを利用するときはガウン着用がルールです。

もし、男女一緒というのを知らずに行ったら、まず更衣室で度肝を抜かれることでしょう(受付で言えば女性専用更衣室を選ぶこともできます)。でも、慣れてしまうと、まあそんなもんかな、くらいの気持ちになりました。

すっかりリフレッシュして服を着る世界に出て、帰りの地下鉄で一気に日常に引き戻されましたが、また行きたいなと思いながら帰りました。

ベルリンは自由で、誰も私のことを気にしていないというのがラクな街ですが、固定観念やしがらみから解放されるということが心底実感できた体験でした。

スパ Vabali 
https://goo.gl/maps/p56XtSiH3vp9b1N4A



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?