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こうめだせら
2019年5月28日 01:04
職業選択で、人魚と書いた。 国を覆う天空照明が黄昏をつくる。 放課後、教室に残るよう言われた。提出した紙を手に、教師は眉をひそめる。「きみの歌声は、たしかに美しいが……」 顔に落ちる影のコントラストが、物々しさを強調していた。「まあ、ありがとうございます」 文脈はどうあれ、悪い気はしなかった。 でも、所詮はその程度なのか、と虚しさも募る。「きみは、人魚に選ばれることがどういう