すみれ先輩を待っている。
青と紫が移りゆく中で、すみれ先輩を待っている。
市民公園の古ぼけたベンチで、少し重い端末を握って、風に揺れるブランコを見ていた。どうせあの人は遅れてくるのだ。そして、もうすぐ。
『みて、薔薇だよ。あとふた月くらいで咲くかな』
震える端末に、芽生えたばかりの薔薇が映る。美しく整えられた丸い枝。きっと、先輩の家から出て直ぐの大きな大きなお屋敷だ。あそこは、むかしから腕の良い庭師がいるらしいから。
『写真、また指入ってますよ』
メッセージを送れば、返信はすぐにきた。
『急いでたんだ