春になると食べたくなる、キャベツの入った思い出のカレー
『カレーにはね、キャベツとタケノコをいれるのよ』
それは私が当時担当していたクライアントの言葉だった。
「キャベツと、タケノコですか?初めて聞きました」
『美味しいのよ。春先になって、春キャベツとタケノコが出てくると食べたくなるの』
その方はとある脳の病気で入院、手足に麻痺があった。
私は初めて聞く、その組み合わせに俄然興味を持った。
『退院も間近ですし、料理の練習を兼ねて、そのキャベツカレーとやらを作ってみませんか?』
そう提案したのだ。
材料は
春キャベツ、タケノコ、たくさんの玉ねぎ、ひき肉、普通のカレールー
『にんじんはお好みでね。私は入れないかな』
『カレールーもお好みのものをね』
キャベツは千切り
タケノコは細切り
玉ねぎは薄く切る
キャベツとタケノコ、玉ねぎを炒めて
しんなりしたらひき肉を投入
炒めたらあとは普通のカレーと同じ
水を入れて少し煮て、カレールーを入れる
「初めての組み合わせです」
『私も初めて作った時、どんなのが出来上がるかと思ったのよ。でもおいしくて、それから毎年食べてるの』
麻痺がある手でゆっくりと作業する。
『この調子なら、家でも作れそうね』
嬉しそうに、その方は笑っていた。
『こんな病気して、また料理ができるなんてね。お父さんにご飯、出してあげられるね』
あれから約5年。
その方にお会いしたことはないけれど、今年もどこかでキャベツカレーを作っているのではないかと思い出すのである。
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