空想世界詩 ‐外伝③‐
空想世界を旅した態で、出会った風景や出来事などを綴った詩です。 そのなかで、分類することができなかったものを集めて掲載しました。
<氷の心>
氷に覆われた世界
皇子殺しの対価
誤解が生んだ過ち
背負いし贖罪
争いと疲弊
息絶えた者たち
償いと救済
命を賭けた戦い
血を吐き進む
揺らがない決意
<決闘>
雨の中に
たたずむ影の
外套重く
濡れている
腰に帯びたる
剣は冷たく
鈍く光って
雫を落とす
静かに抜かれた
白刃の
鋭い軌跡が
描かれて
闇を切り裂き
苛烈に攻める
十合二十合(とごうはたごう)
打ち合い果たす
<人柱>
身体が壊れるまで
働くしかない
身体が壊れても
働くしかない
未来なんてものはなく
ただ生きていくためだけに
あるのはわずかな報酬と
ささやかな夢
人柱たらん我らの
屍の上に築かれた世界
多くの者たちが意識せず
気づくことのない世界
<腐敗>
熟れた果実が
腐り堕ち
集(たか)って貪る
下衆の虫
噎(む)せて吐き出す
甘臭(かんしゅう)を
吸って麻痺した
叡知の頭(かしら)
怠惰の沼に
肩まで浸かって
這い出すことすら
忘れ去り
哀れなものをば
切り捨てて
気づいたときには
あとの祭りよ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?