警視ヴィスコンティ 黒の失踪 人の業と生々しさを浮き彫りにした映画
名優ヴァンサン・カッセルがアル中で小汚い恰好をしセクハラまがいのことも言う堕落した刑事を演じる、人を選ぶ映画。
ヴァンサン・カッセル演じるヴィスコンティは離婚した妻を忘れられず堕落した生活をしながら刑事を続けている。
事件を追う姿勢は立派だが、満たされない情欲や生々しさは、不快指数MAXで、好きになれる人は少ないだろう。
全編を通して、真っ黒な沁みが心の中に広がっていくような暗澹たる気持ちにされるが、出来が悪い訳ではなく、俺の中では高評価だった。
でも、全然人にススメられる映画ではなく、暗い映画が好きな人向け。
だって一片もクスリとする場面はないし、重苦しい。
容疑者の国語教師もクズ(ロマン・ディリスの名演技が光る)で、胸倉掴みたくなるくらい、いけ好かない。
事件は解決するが、澱のように暗く沈んだ心が晴れることはない。
ただね。この映画、一人だけ正しいことをしている人間がいるんだよね。
そこが救いなんだけど、わからないようにしているんだよね。
その人物の思いが唯一報われる鍵になったのは、ヴィスコンティであったのは僅かな光だったんじゃないかなと。
そういう見方が好きな人には刺さる映画ではないかと思う。
いや、でも観るとメンタルが削れるので気を付けてね。