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入眠朗読日記「笑いと治癒力」ノーマン・カズンズ


就寝前の朗読タイムで、「笑いと治癒力」という本を読んでもらった。

朗読者は末っ子(15歳)。

冒頭からスムーズに読んでくれていたのだけど、ある箇所にきたところで、とんでもない誤読の魔球が飛んできた。


「しかしともかく、わたしが重症の……ちんばらびょう……にかかっているという点では意見は一致していた」

読みが想定外すぎて、訂正するいとまもなく、爆笑に沈められた。


正しくは「膠原病(こうげんびょう)」である。

しかしともかく、わたしが重症の膠原病(結合組織の疾患)にかかっているという点では意見は一致していた。

ノーマン・カズンズ「笑いと治癒力」 岩波現代新書 p5


難病名を読み間違えて笑うなんて不謹慎の極みだとは思うけれども、本書の趣旨に沿うものとして、どうか許してもらいたい。

「膠」と「珍」。似ているといえば似ている。

「膠」という漢字を初めて見て、「こう」という音を思いつくのは難しいかもしれない。


だけど、いくらなんでも「ちんばらびょう」はないだろう。


あとでトイレに「膠着状態(こうちゃくじょうたい)と書いた紙を貼り付けておくことにしよう。

ノーマン・カズンズ(Norman Cousins 1915年-1990年))はアメリカのジャーナリストで、第二次世界大戦後に広島を視察て衝撃を受け、原爆で孤児になった子どもたちや、皮膚にケロイトが残ってしまった若い女性たちを支援した人だという。

多忙でストレスの多い生活を送るうちに体調を崩し、膠原病と診断されたときには、身動きとれないほどの重症になってしまっていたのだそうだ。

末っ子に読んでもらった文章を、もう少し引用する。

わたしは十年ばかり前にハンス・セリエの古典的な名著『生命のストレス』を読んだことを思い出した。

セリエはその書物の中で、副腎の疲労が、欲求不満や抑えつけた怒りなどのような情緒的緊張によって起こり得るということを非常に明快に示し、不快なネガティブな情緒が人体の科学的作用にネガティブな効果を及ぼすことを詳しく説明していた。

それを思い出した途端に、当然の疑問がわたしの心に湧いてきた。では積極的、肯定的な情緒はどうなのだろう。もしネガティブな情緒が肉体のネガティブな化学反応を引き起こすというのならば、積極的な情緒は積極的な化学反応を引き起こさないのだろうか。愛や、希望や、信仰や、笑いや、信頼や、生への意欲が治療的価値を持つこともあり得るのだろうか。科学的変化はマイナスの側にしか生じないのだろうか。

(中略)

そこで、健全な情緒を追求する組織的な計画がわたしの中で形を取り始め、わたしはいずれ主治医にその計画の相談をしなければなるまいと思った。

ノーマン・カズンズ「笑いと治癒力」 岩波現代新書 p10-11


著者の入院した病院は、検査のための検査ばかりするようなところだったため、入院しながら「積極的、肯定的な情緒」を維持するのは困難だった。

そこで著者は環境を変えて、思いっきり笑いながら闘病することを決意する。

希望と愛情と信頼とを持つことは別にむつかしくはないが、さて笑いとなるとどうしたものだろうか?

脊椎と関節の骨が一本残らず火がついたように痛みながらあおむけに臥ているのは、面白いどころの騒ぎではない。

そこでわたしは順序を立てて計画を実行するように指図した。

まず手始めには滑稽な映画がよかろうとわたしは思った。人をかつぐテレビ番組「どっきりカメラ」のプロデューサー、アレン・フォントが自分の代表作から選んだフィルムと映写機とを送ってくれた。看護婦が映写機の使い方を教わった。昔のマルクス兄弟のフィルムまで私は探し出して、手に入れた。そして窓のブラインドを下ろして、映写機をまわした。

効果はてき面だった。ありがたいことに、十分間腹をかかえて笑うと、少なくとも二時間は痛みを感ぜずに眠れるという効き目があった。

ノーマン・カズンズ「笑いと治癒力」 岩波現代新書 p01-17


涙が出るほど爆笑すると、一時的にではあれ、慢性的な痛みが消えるというのは、私自身も経験している。

そして、私の場合、どういうわけか、爆笑によって睡眠障害が改善し、僅かな量の睡眠導入剤によって、すみやかに入眠することができる。

この日は、末っ子の「ちんばらびょう」で大笑いしてから、二十分もたたないうちに、熟睡してしまった。


※画像はフリー画像サイト「pixabay」からお借りしました。

https://pixabay.com/ja/

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