機能解剖学からみる運動器疾患
こんにちは!HAMTライブラリ編集部です。今回の記事も特別ライター編となります。
前回大変好評だった鍼灸師のYaMatoさんによる記事の第2弾!
実際に鍼灸の専門学校で講師をされているYaMatoさんが「学校の勉強をどうやって臨床に活かせるのか?」をテーマに分かりやすく解説してくれています。
今回もめちゃくちゃ面白いので若手鍼灸師や鍼灸学生は必見の内容となっていますのでぜひご覧ください。
こんにちはYaMatoです。今回はシリーズ全3回の第2回目「機能解剖学からみる運動器疾患」というテーマで書かせていただきます。
第1回「受験勉強は臨床に意味があるのか」はこちらとなります。
こちらで説明した解剖学・生理学・病理学・臨床医学・リハビリテーション医学を一連の流れで学習する「横断的な学習」を基に、国家試験にも出題する代表的な運動器疾患を例に説明していきます。
学校教育で身に付く現状の知識に加え、臨床でさらに必要となる知識についても紹介していきます。
1、横断的な学習を基に整形外科疾患を振り返る
ここからは運動器疾患を例に横断的な学習の流れをみていきます。
●五十肩(肩関節周囲炎)
【解剖学】
肩関節は肩甲骨の関節窩と上腕骨の上腕骨頭で構成される肩甲上腕関節を想像しやすいですが、広義では胸骨と鎖骨からなる胸鎖関節、肩甲骨の肩峰と鎖骨からなる肩鎖関節、肩甲骨の肩峰と烏口突起と上腕骨の上腕骨頭からなる肩峰下関節、肩甲骨と肋骨面からなる肩甲胸郭関節の4つも含まれています。
肩峰下関節には肩峰下滑液包が存在しており、円滑な関節運動に関わっています。
肩甲上腕関節は球関節で可動域が大きい反面、関節窩は狭く、安定性が乏しく脱臼しやすいという特徴があります。そのため安定性を高めるために靭帯や腱が豊富で、とくに回旋筋腱板(ローテーターカフ)が上腕骨頭を関節窩に吸着させるような構造となっています。
回旋筋腱板は棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4つからなります。
【運動学】
肩関節の運動に関わる筋には以下のものがあります。
関節運動としては肩関節だけでなく肩甲骨と鎖骨が連動しています。代表的なものには肩関節の外転時に肩甲骨の上方回旋が起こる、比率が2:1の肩甲上腕リズムがあります。(肩関節60°外転であれば肩甲骨30°上方回旋)
このリズムには個人差があることや、90°以降では1:2に逆転するとも言われています。
【病理学】
皮膚・骨格筋・関節包・靭帯などの関節周囲の軟部組織が器質的に変化し、柔軟性や伸張性が低下すると拘縮が起こります。研究ではとくに骨格筋と関節包が制限因子となりやすいことが分かっています。
関節の不動期間が長くなるとさらに拘縮のリスクが高まります。骨格筋が短縮すると筋周膜や筋内膜が肥厚したり、皮膚の脂肪細胞が萎縮・消失すると間隙を埋めるようにコラーゲンが増生して線維化することなどが挙げられます。
【臨床医学】
肩関節周囲炎は肩関節の疼痛と可動域制限を主体とする疾患群の総称で、五十肩以外に腱板炎や上腕二頭筋長頭腱炎なども含まれます。
五十肩は名前の通り中年以降に後発する肩関節の疾患で、急性期には肩関節の運動時痛、炎症の程度によっては安静時痛や夜間痛もみられます。慢性期には肩関節が拘縮し、とくに外転・外旋・内旋での可動域制限が顕著となります。
【リハビリテーション医学】
急性期では三角巾やバンドなどを使用して安静にして過ごすことが多く、運動療法は疼痛の増悪しない範囲に限られています。慢性期に移行してから積極的に患肢を使用するようになります。コッドマン体操や可動域訓練などを実施します。
【東洋医学臨床論】
新版東洋医学臨床論(はりきゅう編)では肩関節の拘縮に対する鍼灸治療の記載があります。
拘縮による可動域制限が原因で、肩甲骨の代償性運動が増加することから、菱形筋・僧帽筋・肩甲挙筋・前鋸筋といった肩甲骨の運動に関わる筋肉に対する鍼灸治療が推奨されています。
ここまでが受験のために必要な知識であり、学校で学ぶ教科を横断的に並べて紹介してきました。
第1回目にも通ずる内容になりますが、そもそもなぜ「受験勉強が臨床に意味があるのか」という気持ちになるのかを考えると、この知識量やこうした鍼灸治療のみで実際の臨床で対応できるのか不安になるからだと思います。
2、臨床でさらに必要になる知識はどういったものか
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