『ミスキャスト!』
『ミスキャスト!』 作 すがの公
<あらすじ>今年もさびれた温泉宿では、年に一度の劇団興行を待っていた。今年の演目は『お夏と清十郎』、地域のじじばばも楽しみにしている。仲居のカレンは今日も宿を支えている。役者の一人、夢見勘之助がケガを負いながら宿にたどり着き、劇団のバスが事故にあったと告げる。支配人が考えた挙句、なぜか従業員で『ロミオとジュリエット』を上演する事になる。
温泉宿の大広間。
■「無理」
ロミオとジュリエットの出会いのシーンが始まる。
客席側に座っている、支配人。
ロミオ役=板前、ジュリエット=芸者、乳母=おかま
■■出合い
遠くから、ジュリエットを見初めるロミオ
ロ:あの人は松明に美しい輝き方を教えているようだ。
ジュリエット、登場、ロミオ、手をとる。
ロ:もしも、このいやしいぼくの手が、聖者よ、清らかなあなたの手にふれて汚すとすれば、
はにかんで赤らめている巡礼の唇でくちづけし、
その汚れを拭い取りましょう。
ジ:巡礼さま、汚すなどとおっしゃってはあなたの手がかわいそう。
このように信心ぶりを示しておいでなのに。
聖者の手は巡礼の手がふれるためのもの。
そして手をふれるのは、巡礼のくちづけと申します。
ロ:では聖者は、そして巡礼は、手をもっていても唇はもっていないのですか?
ジ:その唇は祈るためのものです。
ロ:聖者よ、手がすることを唇にもさせてください。
この唇がそう祈りますので。
ジ:聖者の唇は動きません。
祈りは許しても
ロ:では動かさないでください。祈りのしるしを受けとるあいだ。
この唇は、あなたの唇で、罪を清められます。
ジ:では、あなたの唇から、罪を受けますのね?
キズだらけの役者、登場。
服はやぶれ、血まみれ。その様子を真剣に観ている。
くちづけをする二人。
役者:んーーーーー。
ロ:その罪をお返しください。
ジ:口づけの儀式のよう。
乳母
乳母:お嬢様、お母様がお呼びですよ。
役者:んーーーーー。
ジュリエット、退場。
ロ:あの人のお母様とは?
乳母:この家の奥様ですよ。そして、先ほど話していらしたお嬢様の乳母が、この私。
ロ:、、、なんてことだ。
初めてくちづけを交したあの美しい方が、にくきキャピュレットの娘であるとは!
ああ、ぼくのいのちは敵からの借金のようなものだ。
ロミオ、退場
乳母:?
役者:?
ジュリエット登場
ジ:ねぇばあや、あの方は、どういう方?
乳母:タイピーリオさまのご長男でいらっしゃいます。
役者:あー。
ジ:いま、ドアから出て行かれる方は?
乳母:たしかペトルーシさまと思いますよ。
役者:んー。
ジ:そのあとのかたは?
踊りをなさらなかったようだけど。
乳母:、、さあ、あの方は、、
ジ:ばあや、お名前を聞いてきて。
乳母、退場。
役者:、、、、。
ジ:、、もしもあのお方がすでに結婚しておいでなら、
私は結婚をしないまま、お墓に入るかもしれない。
役者:んーーー。
乳母、登場。
乳母:名前は、ロミオですってよ。
モンタギューの。
憎い敵の家の一人息子なのですよ!
役者:んんんん。
ジ:私のただ一つの愛が、ただ一つの憎しみから産まれたとは!
知らずにお会いしたのは早すぎ、
知ったときは遅すぎる!
産まれた時からこの恋は、不吉な運命のよう、
憎い敵の一人を愛差根羽ならないとは!
支配人:はい。えーと。ここでひとくぎり。
舞台の3人、出てきてにやにやする。なんか素人ぽくしゃべる。
支配人:だいぶ、良くなったと思う。たぶん。
たえ:やったー!あたし向いてんでねか!(なまってる)
板前:なんか、ごめんね。ちょっと、手強くにぎってしまった。
たえ:なんもなんも、わしの手でよかったぎゃ、ばんばんにぎれ!
支配人:いや、握ってもらった方が。ほら。
絵本を見せる。子供用のロミオとジュリエット。
板前:あ、そっか良かったー。
たえ:あどりぶか?あどりぶか?
板前:いやぁ、アドリブっていうか、なんか自然に。
たえ:向いてんでねか?板前よりも!
板前:あ、手、魚臭くない?
役者:やめよう!
支配人:え?やめる?
役者:そもそも素人が突然役者やろーってのが間違ってっから。
支配人:え?まだ始まったばかりじゃないですか、、
役者:無理、無理!そんなに簡単に出来るわけがない。
しかも、なんでロミオとジュリエットなんだ!
支配人:それはたまたま、
板前:あったから。
役者:馬鹿にしてる!
あんたたちは!演劇を!役者を!そしてなによりも
ウィリアムシェークスピアを馬鹿にしてる!
支配人:バカになんてしてないですよ。
たえ:臭い。
役者:バカにしてる!
おかま、思い切り、はだけて登場。
おかま:なに?続けないの?こっからいいとこなんじゃないの?
板前:あ、ジュリーさん。
たえ:ちょっち休憩。
おかま:なぁに、言ってよぉ。あたし、むこうで出番待っちゃったわよ。
支配人:すみません。
役者:あんたら、自分たちがなにをやろうとしてるのかわかってやってんのか?!
おかま:え?ロミオちゃんとジュリエットちゃん。
役者:ちゃんはいらない!
たえ:かわいいべさ。
役者:うるさい!
おかま:あんた何血まみれで猛り狂ってるの?かわいい顔して〜。
役者:なんだこの!あきらかにおかまは!
おかま:まっ、差別だわぁ。キズつくわ〜
たえ:いやだわぁ〜
おかま:あら、いけるわねあんた。
たえ:もぉ、やんなっちゃう〜
おかま:きゃは!ちっちゃいおかま。
おかま、仲居2をハグ。
カレン、様子をみながら明るく登場。
カレン:あ、いいですか今?
役者:やるんだったら真面目にやれ!
ちんもく
役者:真剣味が足りない。
稽古がどれほど大切なものであるかなんて、
あなたがたにわかるわけはないけど。
やるんだったらせめて、ふざけないでやってください。
板前:、、あの、ふざけたつもりはないんですけど。ねぇ?
たえ:キズつくわぁ〜
役者:ふざけてる!
支配人:たえちゃん
たえ:だってー。
役者:たとえあんたたちが、真剣に稽古を重ねた状態ならまだしも。
こんな調子で、あと3日で作り切るなんて土台無理な話だ!
おかま:ねぇ
役者:なに。
おかま:ちょっと温泉でも入って休んだら?
せっかくなんだから。
役者:そんな暇あるか。
これから、芝居にして、小道具も用意して、出来るかぎりの照明も考えて、
、、衣装だって、、。休んでる暇なんかない。
おかま:じゃ、せめて消毒してもらいなさいよ。
カレンちゃん、ずーっと待ってるんだから。
役者、カレンを見る。
カレン:あ、いいですいいです〜
ほら、今休憩かなって時めがけて、ゴーしますから。
ちゃちゃっと!ね?ちゃちゃっと!
役者:いい。もう乾いた。
カレン:でもほら、なんか着替えたりした方が。
役者:そんなのんきな事してる暇ない!
カレン:でも。
役者:本来ならもう大広間に舞台を設営して、
イントレ組んで、照明吊ってなきゃいけないんだ!
カレン:でもほら、
役者:でももくそもあるかあ!!
カレン:ほらほら。
役者:なんだよ!
カレン:ほら、血まみれで怒ってると、ものすごくこわいっすよ?!
たえ:確かに。
役者:ああ?!
板前:うん。
役者:みてんじゃねぇよ!!?!
おかま:こわいわぁああああ
役者:く。
皆:どはっははあっはははっは
カレン:ほらほら、せっかく温泉宿来たんだから。
ほら。これ、着替え。ちょっと小さいかもしれないけど。
お部屋も用意しましたから。ま、たいした部屋じゃないけど。
支配人:こら!
たえ:おカミさん聞いだら怒るべな。目らんらんして。
カレン:うそうそ!うそ!
先にぱっとお風呂入って、ね?
ここの旅館、さびれてるけど、露天風呂だけはいいから。
板前:だけって事ないでしょ!!料理もうまいですよ?!
カレン:あ、そか。うそ!料理も!
板前:もう冷え切ってるよ。
カレン:そうだそうだ。ね?食べて貰わないと。何人分?
板前:15人。
カレン:全部食べて全部!ね。
役者:無理だろ
カレン:とにかく露天風呂、最高だから。女湯。
役者:え?男湯は?
カレン:最低。
支配人:こら!
カレン:ね、ほら、あたしくっちゃべってると
支配人本気で怒りだすから、早く。
役者:しかたねぇな。
カレン:入ってから考えましょう。ね?
役者:入ればいんだろ。入れば。
おかま:さぁすがぁあ
カレン:これ、包帯。ね。あと消毒液。
お風呂あがったら言ってくださいね?
おかま:マッサージ、欲しかったら言ってね〜
役者:いらねぇ!
カレン:はいはい、ほら、歩けます?歩けますね。ほらほら、そっち上がって、右。
ビールは?飲みます?あ、日本酒?
おかま:たいしたもんだわ、カレンちゃん。
たえ:あこがれるっちゃ。
おかま:たえちゃん、あんたどこの出?
たえ:色々っし。
おかま:方言めちゃめちゃね。
たえ:おかまに言われたかねーべさ。
支配人:はぁ、、、。
板前:参りましたねぇ
支配人:参った。
板前:実際、どうしましょう。
支配人:俺だけじゃなぁ、、。
おカミが戻んないと。どうにも。
板前:決めたらいいじゃないですか。自分で。
支配人:、、どういう意味それ?
板前:別に。
支配人:、、あのさぁ。
板前:あ、言ったそばから。
支配人:来た?!
支配人直立、びびってる。
おカミ、ものすごい勢いでかけこんでくる。
新聞で、支配人をなぐる。
おカミ:ちょっとお!
支配人:、、ってぇ、、
おカミ:なにしてんのこんなとこで!
支配人:えっっと、、、あの、、、実はその、、。
大変言いにくいんだけど、、。
たえ:こえぇ。らんらんだ。らんらん。
板前:ぼくらは、ドロンしますか。
たえ:練習は?
板前:あとあと。
おカミ:聞いたよ?
支配人:あ、ほんと?!ならちょっと話し早いかも。
殴る。
おカミ:練習って何。
支配人:あ、ほら、劇の。
おカミ:バカじゃねぇの?!支配人だったらもうちっとましな事考えなさいよあんた!
何すんの?劇?劇って一体何すんのって?
支配人:ロミオと、、
殴る。
支配人:、、、。
おカミ:聞いたよ?!ロミオとジュリエットやるって聞いたよ!?
支配人:、、はい。
たえ:聞いただら聞かないばいいのに。
おカミ:仕事!
たえ:ぴゅーーん
おカミ:たく。
おかま:おカミさぁん。今日も素敵ね。
おカミ:ありがとう。
おかま:怒るとしわ増えるわよ。
おカミ:仕事ぉお!!
おかま:あ、ぴゅううん
たえ退場。
おカミ:で。一人で山道転げ落ちてきた役者は?
まさかと思うけど今、なにしてんの?
支配人:、、答えると、殴られる。
殴る。
おカミ:答えなくても殴るよ!
風呂入ってんだってか!
支配人:知ってるなら聞かないで!
おカミ:、、ったく。何をのんきに。
板前:あの、
おカミ:あ。
板前:なんかあったら言ってください。
おカミ:!ごめんねぇ!
せっかく15人前も作ってもらったのに。
あたし食べるから!全部食べるから!一人で!
板前:いやいや、いいですって。
作りなおせば、明日のまかないにもなるし。
おカミ:いや食べさせて!あたしに全部!
それくらいしないと気が済まない!
板前:無理だと思いますけど、、
おカミ:無理だったら、こいつ食うから!全部!
あたし3人前!こいつ12人前!
支配人:えええ
おカミ:嫌なの!?
支配人:嫌だよ!
殴ろうとする。ガード。逃げる、ちょっと追う。
板前:あの、そんなことより。
どさくさに、それでいて自然に、おカミの手を取る。
おカミ:、、。
支配人:あ!
板前:あの、僕の料理のことより。そんなことより。
あさっての劇。どうするか考えた方がいいです。
おカミ:その通りだ。さすが。誰かと違って。
支配人:、、ちっ。
おカミ:!?
殴ろうとする。ガード。逃げる、ちょっと追う。
板前:あの!
おカミ:あ、、
今度は両手で手を取っている。
支配人:!!
板前:何か僕に出来る事あったら、言ってください。
今日は洗い物と明日の仕込みしたら、
だいたい終わりですから。
調理場にいます。それじゃ。
板前退場
おカミ:ごめんね!
ほんとごめんねぇ?食べるからね?食べる!こいつが!
支配人:くわねぇ!
おカミ:食え!
支配人:食えねぇ!
おカミ:なにがなんでも食え!食えええ!
支配人:いいだろその話は!
おカミ:、、、そうだった。
ちんもく。
支配人:、、、どうすんだよ。
おカミ:、、今考えてんでしょ?
支配人:年に一度の芝居興行。
この辺のジジババ、相当楽しみにしてるからな。
今さら、取り止めにはできねぇだろ。
実際、あさっての売り上げないと、うち相当きびしいし。
もう、借金出来るあてないし。
あ、どうだった?銀行。
おカミ:駄目。もう泣き落しも聞かない。
こうなったら色じかけでもすっか。
支配人:おい
おカミ:冗談だって。、、いや、冗談でもないか。
支配人:やめろよ悪い冗談。
、、どうする?あさって。
おカミ:、、、、あんた決めなさいよ。
支配人:、、、いや、、
おカミ:支配人でしょ?!
支配人:だから俺も考えたあげく、ロミオとジュリエット
おカミ:バカじゃないの!?
年寄りにそんなもん見せてどうするっての!
支配人:しかたねぇだろ!他に本ないんだから!
おカミ:なら桃太郎とか猿カニ合戦とか浦島太郎とか見せた方まし!
支配人:それこそどうしようもねぇだろ!
ガキじゃあるまいし!誰やるんだよ!
いい年こいてカニ!とか!カメ!とか!栗!とかか!
従業員だってそんなんじゃ乗り気にならねぇだろ!
おカミ:ロミオとジュリエットならいいの!?
支配人:少しは、、少しはいいよ!
ちんもく
おカミ:、、、別れよ。
支配人:え
おカミ:もう全然今関係ないけどっ別れよ。ね?
支配人:なに言ってんの。
おカミ:もうね。頭のなか整理してきたいから、とりあえず。別れよう。
じゃないと駄目だ。
支配人:おい。それ本気で言ってんの?
おカミ:うん。はい。次の話。
えーと。あんたが呼んだ劇団のバスとトラックは、どこで事故ってんの。
支配人:二人でこの旅館もりたててくんじゃねぇのか?
おカミ:事故ったあとどうなったの?山道にほっぽりだしたまま?警察とか救急車とか呼んだ?
支配人:聞けって!
おカミ:頼りにならない。
支配人:!!
おカミ:、、ぜんっぜん頼りにならない。
ひとっつもなにも決めてくれない。
決めたとしてもどうしようもない事ばっかり。
銀行で頭下げて泣き落としする情けない気持ちわかる?
あんた一度だって一緒についてきてくれた事ない。
酔っ払い、登場。気付かない二人。
なんか探してる。
酔客:?
おカミ:男なんでしょ?
支配人:、、うん
おカミ:だったら少しはどうにかしようとしてよ。
支配人:だから、してるって。
おカミ:してない!
支配人:俺だって色々がんばってるんだって!
おカミ:どこがよ!
、、、あんたにはこんなさびれた温泉宿なんてどうだっていいんだ。
支配人:そんな事ねぇよ!
おカミ:どうせ、今のうちにつぶして、
どっか売り飛ばした方が金になると思ってるんでしょ?!
支配人:言ってねぇだろそんな事!
おカミ:所詮、雇われ支配人だもんね!
やめれば済む話しだもんね?!
どうなったっていいよね?!
ばかばかしいでしょこんな話!
こんなとこにしがみついてるあたしの事、
心ん中で笑ってんでしょ!
支配人:そんな事ねぇよ!
酔客:あ。
酔っ払い、物を探すはずみに、リモコンにふれる。
曲、「また逢う日まで」
デッテテレーレレっ!ドン!デッテテレーレレ!ドン!テーテーテー
二人:!?
酔客:あ。
二人:、、、、、、、。
酔客:あ、すまん!すまん!すまん!これ!どやって?これ!
おカミ:、、、、。
止める。
酔客:なんか、アレなとこ、アレして、、、あの、、
おカミ:みっともない所をお見せして。
申し訳ございませんでした。
酔客:いや、ちょっと、捜し物してたもんだから。
おカミ:なにか?
酔客:本、なんだけど。
おカミ:本?
酔客:うん。
おカミ:どのような?
酔客:あ、えっと、シェイクスピア。
おカミ:、、、、、、
おカミ、支配人を横目でにらむ。
酔客:ロミオと、、
おカミ:ロミオとジュリエットでございますね?
それでしたら、心あたりがございます。
酔客:あ、そう。良かった。
おカミ:ただいま従業員にいいつけまして、
見つかりしだいお部屋にお持ちいたしますので。
酔客:あ、すまんね。
とり込み中。
おカミ:いえ。こちらこそ、気付きませんで。
お部屋に一本つけさせていただきますので、
どうぞ、ご勘弁ください。
酔客:あ、、、なんか、、すまんね。
おカミ、出てく。
支配人:、、、、すみませんっ
支配人、追う。
酔客:、、、、。
一人、手持ちぶたさでマイクをもつ。
酔客:、、、、。、、ま、またっ、、あう、、ひまで、、。あえる。あえるぅ。
なまらエコー。
■事の発端。
舞台前下手にサス。仲居、日記を書き書き歩いてくる。
ピンクとかの乙女の日記を書いている。
照明に気付き手を止める、客席に向かって話し始める。
カレン:田舎の温泉宿。ほぼ過疎のこの温泉街に年に一度、旅の劇団が来る。
その日ばかりはこのサビれた温泉宿も活気づく。
あさっての予約は、おじいちゃんおばあちゃんでいっぱいだ。
事の発端は、2時間くらい前の話し。
本当なら、旅の劇団が到着するはずだった。
カレン、何かを歌う。
ひとしきり歌い
カレン:(オンマイク)全然休憩じゃないなぁ。(エコー)
支配人
支配人:あ、いた!カレンさん!
カレン:あ!すみません!休憩過ぎちゃってました?
支配人:いや!いやいや!いやいやいや!た、たいへん!大変!大変!
カレン:なんですか?
支配人:大変!とにかく大変!大変なんだって!
カレン:温泉宿の支配人、轟万太郎さん。
この旅館の雇われ支配人になって1年。
どういう経緯で支配人になったのか、あまり本人の口からは聞かない。
普段は結構もの静か。
よくおカミさんに殴られている。
あたしは、よく轟さんのグチを聞く。
支配人:大変なんだって!大変!もう大変!
カレン:落ち着きましょう。とりあえず。どしたの?
お水。はい。これでいい?
支配人:あ、ありがと。ンゴンゴゴ、かぁああ!
カレン:落ち着いた?
支配人:、、落ち着いた。、、たぶん。、、でも落ち着いていられない!
カレン:ほら、座って。
支配人:それどころじゃない!
カレン:じゃ、質問に答えてください。イエスノーで
支配人:え?
カレン:質問*******
支配人:答え
女性雑誌からの性格判断イエスノークエスチョンをやらされる。
カレン:114ページ。
支配人:え?
カレン:えっと、B。あなたは****タイプ。
まわりに気を使いすぎて自分の事が**生理不順*で**赤ちゃん*恋愛***。
支配人:、、何それ
カレン:女性自身11月20日号、心と体のうんたらチェック(などなど)
支配人:俺、男!男!男!
カレン:おちつきゃいっかなぁと思って。
支配人:あ。落ち着いてる。俺。
カレン:どしたんですか?
支配人:実は、、
下手階段から人の声。わっせわっせと役者をかついでくる、
カレン:?
支配人:そっと!そっと!
おかま、たえ、板前。役者、気を失ってる。
口々に、でかい、おもい、じゃまくさい、きたない、などの文句。
3人:わっせ、わっせ、わっせ。
カレン:あららら、どうしたの?遭難?
たえ:そうなんです。なんつてな。
おかま:あら、おやじギャグ!欲しいわぁあ。
板前:そっち置きましょうそっち。
カレン:死んでる?生きてる?
たえ:気失ってるだけみたいだだだ。
板前:置きますよ。
3人:せーの、よいしょおっ!
舞台と体の許す限り、思い切りほっぽり出す3人。
支配人:あ、こらぁ!
役者:いて
板前:なんか言った?
おかま:寝言じゃない?
役者:うーん
たえ:寝言でし。
支配人:あーどうしよ。今のでとどめさしたんじゃないか?
たえ:わかんね。
支配人:だいじょうぶですか!?
だいじょうぶですかー!
だいじょーぶでいてくださーーい!
お願いしまーす!!!
おかま:お願いされても気失ってるわよ。
支配人:だってぇ!
板前:落ち着いてくださいよ、支・配・人。
支配人:突然血まみれの人間が山からおりてきて、
わけのわからんダイイングメッセージとともに気を失ったんだぞ!
おちつけるか!
板前:え?ダイイングメッセージ?
たえ、おかま、再現。
おかま:あたし、支配人ね。あんた、あの男。
たえ:お。よっしゃ。
階段をかけあがる。
おかま:仕事中ね。あいらびゅーう、あいらーぶゆー。おーけー
支配人:矢沢栄吉なんて歌ってない。
板前:まーまー。
たえ:どっちゃーん!ばきゃ!ぼぎゃああん!
おかま:な、なんだ!この、温泉宿の裏の山から誰か人間が転がり落ちてくるやうな音は!
たえ:宿の扉ばきーーん!ごろごろごろぉ!
おかま:は!だ、大丈夫ですか!
たえ:血まみれぇ!
おかま:ちまみれじゃないですか?!た、立てますか?!
たえ:にゃああ!
おかま:で、でかい!
板前:いや、小さいっ
たえ:ううう、ううう、
だんの、、バス、、、山、、ツルゥ。(気絶)
おかま:気絶?!
たえ:ううう
おかま:良かった。
たえ:(気絶)
おかま:だれか!だれかあ!このなかにお医者様はいませんか!
支配人:言ってないそんな事!
おかま:こうなったら私が!マウストゥマウスで!
支配人:しない!
おかま:そこに板前さん!はい!
板前:あ、僕か、どうしたんですか!
おかま:マウストゥマウス!
板前:うわあ!
なぜか板前に襲いかかる
板前:やめてください支配人さん!
おかま:禁断の木の実をしゃぶりつくすのエキストリーム!
たえ:やれやれぇ〜
支配人:こらぁ!
おかま:ちょっとだけ先っちょだけ
板前:うわ、こちょばしい!
たえ:(気絶)
支配人:うるさい!!!
おかま:、、というわけなのよ。
カレン:え?おかま?
支配人:違ああう!
おかま:なんかキズつくわ。
たえ:よしよし。
板前:あー、面白かった。
支配人:どうしてそんなみんなのんきなんですか!
とにかくこの人に事情を聞かないと!
悪い予感がする!悪い予感がする!
だいじょうぶですかあ!
だいじょうぶでいてくださいねぇ!
気、失ってますかぁ!
カレン:あーまた。
支配人:どうしよ!どうしよう!悪い予感!
まさか、今日到着する予定の劇団の人が途中で事故ってたらどうしよう!
たえ:的中の予感。
支配人:んにゃああ!?
おかま:カレンちゃん〜どーにかしてよぉ。
カレン:えーと。万太郎さん、ふとん。
支配人:え?
カレン:楽屋にあったでしょ?
支配人:あ、うん。
カレン:とってきて。
支配人:ハイ!ただいま!
支配人、かけ足で奥に退場。
たえ:さすがぁあ。
カレン:万太郎さん、パニックになるとザ・役立たずだから。
おかま:支配人をアゴで使えるの、おカミとカレンちゃんだけね。
板前:あー。
人物紹介
■ジュリー
カレン:おかまのジュリーさん。本名不明。
その昔、なにかの興行でどさ回りしていて行き着いたのがこの温泉宿。
2年前からエセマッサージ師としてすみついた。
彼女のマッサージはもー最高。
■板前
カレン:板前のケンちゃん。
3年前からここの調理場を任されている。
経営不振で板前さんがづぎつぎとやめて去っていくなか、
ケンちゃんだけはこの旅館の料理を作り続けてくれている。
■たえ
カレン:仲居さん。その2。
たえ:(礼)
照明戻る。
おかま:え?
たえ:なんであの人血まみれなんだべか。
板前:え?
おかま:ちょっとっなに自然に物語に戻ってんの
たえ:ん?
おかま:駄目だ。扱いのひどさに気付いてないみたいだわ。
板前:人物紹介、されてないよ。
たえ:あ、
カレン:あ、きづいちゃった?
たえ:こんカバチタレがぁ!
人物紹介。
■仲居2(たえ)
カレン:たえちゃん。方言がめちゃめちゃ。
つい最近ここに来た。
扱いがひどくても元気いっぱい。
ただいま仲居さん見習い中
照明戻る。誰も動き出さない。
板前:ほら。たえちゃん。
たえ:ん?
おかま:続きっ
たえ:なんであの人血まみれなんだべか。
「だんの、バス、山ツルゥ」(気絶)
3人:だんのバス山ツルゥ、、、
たえ:湯けむり殺人事件。仲居2は見た。
ダイイングメッセージの意味、とは。
カレン:てててっ、てててっ、てーれえぇ〜♪
おかま:やだもうワクワクしちゃう!謎ね!謎!
板前:僕もすきですよ!
4人:エヘラエヘラ
役者、起きる。
役者:うお!劇団のバスが山ん中でツルってすべって横転しちゃった!うわ!どこだここ。
カレン:、、、え?
板前:、、なんか、あっさりと正解出ちゃいましたね。
役者:え?
たえ:つまらん。
おかま:あんた女の喜ばせかたを全然わかってないわ!
役者:うわ、、起きがけに、ショック。
カレン:あの、横転したって、どういう事ですか?
役者:、、、そのままの意味です。
カレン:じゃ、劇団のかたたちは?
役者:あ!救急車お願いします!
おかま:よく考えたらえらい事じゃないのよ。
板前:ですね。
カレン:たえちゃんお願い。警察も!
たえ:はいなー!
カレン:ケンちゃんっ
板前:おカミさんに連絡つけときます。
カレン:うん。ジュリーさん。
おかま:おっけぇ、あたしが抱いててあげる。
カレン:うんちがう。村の青年団にも声かけてきて。
おかま:おっけぇい
支配人、ふとん持ってくる。
支配人:ふとんありました!これどうぞ!
3人:いらん!
3人退場。
支配人:えええ
カレン:万太郎さん大変。
悪い予感あたっちゃった。
支配人:え?
役者:もうしわけない!
土下座
役者:携帯つながんねぇもんだから!
走ってきたらこんな時間になっちゃて!
支配人:あさっての芝居は!?あさっての!
カレン:万太郎さん。
役者:なんとかする!
支配人:なんとかったって!あんた一人でどうすんですか!
役者:車ある?!車。
カレン:どうするの?
役者:ほら、器材だけでもとりあえず。
照明とか音響とか!
支配人:役者は?役者いないと始まらないでしょ?おしばいなんだから!
役者:あさってまでにはなんとかするよ!
役者、たりなきゃ、、ほら、演目かえたり、、。
支配人:もう宣伝うっちゃってんですよ?
「お夏と清十郎」!!
これ、毎年、このへんのじいさんばあさんが楽しみにしてんですよ。
うちだって、年に一度の大入りなんだから!
あああ、こんな事なら去年の劇団に頼めば良かった。
役者:すまん!でも、必ずなんとかする!
支配人:だからどーすんだよ!
カレン:万太郎さん。
支配人:なんとかするったって。
事故ったんでしょ?まだ生きてるかどうかすら
カレン:万太郎さん!
支配人:、、
カレン:しかたないっ
支配人:、、、
カレン:ね?今言ってもしかたない。
よっぱらい登場。
酔客:あ、今まずい?
カレン:あ、いえ、どうぞどうぞ。
酔客:あ、どうも
カレン:何にしましょ?
酔客:水割。
たえ登場
たえ:カレンさん!
カレン:あ、電話した?
たえ:もう出動してんだと!
役者:ほんと?
たえ:山管理の人が血まみれであんた走り抜けるのみてて。
変だと思って通報したってさ
役者:じゃあ、救急車も?
たえ:んだ。今さっき向かったと。
おかま登場
酔客:あのー水割、、
カレン:あ、ごめんなさい。
おかま:カレンちゃん〜
カレン:ジュリーさん。
おかま:青年団ももう出てたわ。情報早いのね。
カレン:そうか。
酔客:みずわり
板前登場。
板前:おカミさんすぐ帰ってくるって。
カレン:じゃとりあえず、やれる事は、、
酔客:水割ください。
役者:車貸してください。車!
おかま:あ、だめだめ、外ふぶいて来てるから。
地元の人間でも出てかないわ。
役者:、、、くそ。
酔客:水割。
支配人:台本!
全員:え?
支配人:台本貸してください!
役者:え?
支配人:僕たちでやりましょう。
役者:あんた、、何いってんの?
支配人:僕たちでやるんです!
カレン:万太郎さん。
おかま:ちょっとぉ、それいいわよぉ。
役者:まてって。
たえ:やる!あたすやる!
板前:僕もやってみたい
役者:しろうとには無理だ!
おかま:ナメない方いいわよ。おかまバーあがりのおかま
たえ:なめない方いいわよ。つい最近まで女子高生
板前:僕、高校で演劇部。
おかま:あら希少!カレンちゃんも、ね?
カレン:いやいや、あたしはいいです。
たえ:なしてー?
板前:やろうよー。
酔客:みずわりー。
カレン:でも、賛成です!それで行きましょう。
もしも、もしも役者の方が到着したら、
入れ替われば、ね!
役者:ちょっと待てって!
支配人:待てない。もう、時間はないんです!
台本貸してください!カレンさん!コピー!
カレン:はい!
役者:台本なんてない!
全員:え
役者:、、、全部バスの中だ。
カレン:、、そんな、、。
酔客:なんでもいいけど水割くださいよ!
俺客だよ?客!
手にロミオとジュリエット。
全員:あ。
曲。
支配人、ふとんを投げる。本をうばう。
酔客:あ。
支配人:この旅館の危機は、僕が守ります!
鼻息あらく、非常にらしくない格好悪い、キメ。
おかま:かぁっこいいいいい!
カレン:万太郎さん!
ファンキィな音楽。全員ストップモーション。
■カレン
音楽の中、日記を書き出すカレン。
カレン:これがこの物語の始まり。
あたしはチョイ役の仲居。
事の顛末をこの日記に綴っていく係。
ヒロインは、もちろん他にいる。
音楽上がり、ミュージカルのごとく踊り出す
おかま、たえ、板前、役者、支配人、よっぱらい
によるジュリエットダンス♪♪♪
ジュリエット登場。
美しい妖精のような衣装を着たおカミ
役者を残し、5人のダンサー退場。
■約束・坪内逍遥バージョン
一瞬、美しいおカミ。
しかし、芝居に入り、くずれる。
役者:や、待てよ!あの窓から漏るひかりは?!
あれは東、ねればジュリエットは太陽ぢゃ!
おカミ:あぁ。
役者:物をいうた!おお!今一度物をゆうてくださされ!
天人どの!さうして高いところに光り輝いておいやる姿は、
おごろきあやしんで、後へさがって、
目を白うして見上げている人間共の頭上(とうじょう)を
羽のある天の使いが、しづかにただよおふ雲に騎って、
虚空の中心(ただなか)を渡っているやう!
おカミ:おぉ、ロミオ、ロミオ!何故おまへはロミオぢゃ!
父御(ててご)をも、自身の名をも捨ててしまや。
それが否ならば、せめてもわしの恋人ぢゃと
誓言(せいごん)してくだされ!
すれば、わしゃもうカピューレットではない!
役者:もっと聞かうか?すぐ物を言はうか?
おカミ:名前(なまへ)だけがわしの敵ぢゃ!
モンタギューでのうても立派なおまへ!
モンタギューがなんぢゃ!
手でも足でも顔(かほ)でもない。人の身についた物ではない。
おお、何か他の名前にしや。
カピューレットがなんぢゃ!!
役者:あいや、あいや、あいやぃやい
おカミ、両手をゆらゆらふりながら、階段へ上がっていく
そでから出てくるおかまとたえ
太鼓と、笛をふく。
ドン、ドン、ドンドンドン
ピッ、ピッ、ピッピッピッ、
おカミ:あいや、あいや、あいやぃやい
役者:あいや、あいや、あいやぃやい
二人:あいや、あいや、あいやぃやい
カレン、舞台に腰掛ける。
役者:では、何を誓ひにかけよう?
おカミ:誓言には及びませぬ。
役者:わしのこころが真実を恋(こひ)慕ふ。
おカミ:あ、もし。
誓言はおよしなされ。
うれしいとは思へども、こよいすぐに約束するのは、
粗忽らしうて、無分別で、早急(さっきゅふ)で、うれしうない
恋(こひ)しいお人、さよなら!
恋(こひ)のつぼmじは、皐月(さつき)の風に育てられて、
又逢ふまでに美しう咲くであらう。
さよならさよなら。
おまへの胸にも、なつかしい安息の宿りますやう!
役者:すりゃ、これぎりで別れようといふのか?
おカミ:では、どうせいとおっしゃるのぢゃ?
役者:あいや、あいや、あいやぃやい
おカミ:あいや、あいや、あいやぃやい
そでから出てくるおかまとたえ
太鼓と、笛をふく。
ドン、ドン、ドンドンドン
ピッ、ピッ、ピッピッピッ、
と、おカミ、去っていく。
役者:あいや、あいや、あいやぃやい
支配人:はい、止めます。
おかま:ちょとぉ、なんやかんや言っておカミさん乗り気じゃないの。
たえ:ジュリエットできるって事んなったらコロリだ。
板前:殴られ損でしたね。
支配人:うるせえ
おカミ:そう?どうだった?
おかま:もう最高。素敵。どしたのその衣装?
おカミ:カレンさんが。
カレン:去年の劇団の忘れ物あったんで、それちょっとサイズ替えて。
おかま:まるで天使よぉ。
たえ:カレンさんわなんでもできんだな。
おカミ:ちょっとゆるいかも。
カレン:あ、なおしまーす。ちょっと一回縫いで貰っていいです?
おカミ:うん。
おカミ、カレン、楽屋へ。
板前:きれーだなぁ、おカミさん。
支配人:ちっ
板前:なんすか?
支配人:なんでもないです。
おかま:休憩?ちょっと休憩?はい皆さん休憩でぇす。
たえ:やっぱジュリエットはおカミさんで決まりだな。
おかま:いや、あたしの線が残っているわ。
板前:残ってないと思いますよ。
おかま:ちょっと支配人、この旅館、失礼な人しかいないわね。
支配人:いや、はは。
支配人、おカミが気になる。
役者:あの、おくつろぎ中大変申しわけないんですけど。
役者、ずーっとコピーされた台本を見ていた。
役者:例えば、ジュリエットのジュがチュにてんてんとか。
これ、どうして全て歴史的仮名遣いなんですか?
たえ:お客様の本、ずっと借りるわけにはいかなかぎゃ?、
おかま:村の公民館の図書貸出しコーナーから借りてきたのよ。
本を出す(中央図書館より)
たえ:ほれ。
役者:ロミオとヂュリエット、シャースピア?
板前:シェィクスピアでしょ?
たえ:はは、間違ってんなこれ。ミスプリだミスプリ。
役者:、、、訳、坪内逍遥、、定価70銭。
たえ:せん?せんって何?
おかま:1円の100分の一よ。
たえ:安い本だすなぁ
役者:違う!古いんだ!なんだ!この、ここ!
20ページ、5行目!ジュリエット!
板前:おぉ、ロミオ、ロミオ!何故おまへはロミオぢゃ?
おかま:おまえはどこのワカメじゃ?
役者:古い!
支配人:でも、あの、おとしよりに見せるお芝居ですから、、。
役者:ここまで古い必要あるのか!
俺らがやろうとしてたお夏と清十郎だって!
ここまで古い言葉使いなんてしない!
だめだこんな本!
投げつけようとする。
全員:ああああ!
役者:え
全員:借り物だからっほんとにっ
そっと置く。怒る。
役者:だめだ!だめ!だめだこんなの!
支配人:だめって言われても、、
役者:
あんたたちは!演劇を冒涜してるとしか思えない!
と楽屋に入る。
おかま:あ。そっち今。
役者(声):あ、すいません。
おカミ:やーだもぅ。えっちぃ。
役者:はははは。
バチン!
板前:まんがだ。
おかま:まんがね。
たえ:まんが。
役者登場。
役者:、、、、、、、、。
支配人:、、いたかった、、でしょう(気遣い)
役者:はい。
役者階段へ退場。
支配人:、困ったな、これじゃ全然すすまない。
板前:パンツみたかなパンツ。
おかま:うぉほう!みてぇ!
支配人:ジュリーさん。
おかま:え?見たくないの?見テェよなまら見てぇっ
支配人:ジュリーさん。
おかま:ゴホン。女のパンツのどこがいいのよ、ねぇ?
たえ:(少し離れる)
板前:あ、子供の信用を失った。
おかま:ウルトラマンにチャックついてた、みたいな感じ?
たえ:あ、はい。
おかま:なぁによぉお!もぉ!冗談よぉ!(バシバシ)
たえ:いでで!にゃろうお!(こちょばす)
おかま:ああ、そこだめそこ!
たえ:こんかばちたれが!
おかま:意味わかって言ってんのあんた?やめて!あ!
板前、支配人の方に寄ってくる。
支配人:、、はぁ、、のんきでいいなぁ。
板前:どうすんですか?
支配人:どうするって、病院から連絡ないし。
今はやれるだけやるしかないよ。
板前:いや、そっちの話しじゃなくて。
支配人:え?
板前:あっちの話し。
支配人:あっちって、、
板前:別れたんですか?
支配人:、、お前に関係ねぇだろ。
板前:ありますよ。
支配人:なんで。
板前:僕、ぶっちゃけ狙ってますもん。
支配人:、、、
たえ:ちょぉっ
おかま:あ!
たえ:ちょちょう!
おかま:ああ!ああん!
支配人:こちょばすな!
二人:あ。
支配人:、、こんな時に。
二人:、、ごめん。
支配人:トイレ行ってきます。
支配人、トイレ
おかま:なに?
板前:さぁ
カレン、おカミさんの衣装持って登場。
カレン:今来ますから、おカミさん。
あれ?減ってる。
板前:トイレとか。いろいろ。
たえ:怒られたす。
カレン:だれに?
たえ:支配人。
カレン:なんで?
おかま:こちょばされてたから。
たえ:こちょばしたから。
カレン:そりゃ怒るわー。
二人:うそ!
カレン:機嫌悪いんでしょ?
板前:あ、正解。
カレン:遊んでちゃ駄目ですよ。
万太郎さん、あさっての事で頭パンパンなんだから。
ほら、役者さんたち、練習練習。
おかま:やけに支配人の肩持つじゃないのよ?
カレン:そうですか?
この旅館の危機はあたしたちの危機じゃないですか。
ほら。
おかま:怪しいわぁ、もしかして支配人にホの字?
おカミさんに殺されるわよ?
カレン:何言ってんですか。
あたしはケンちゃんオンリーですから。ね?ケンちゃーん。
板前:お、僕もてもて?
おかま:あたしもー。
板前:うわ、いらないのも来た。
おかま:たえちゃんは?ほら。たえちゃん。
たえ:うーんいやー。
板前:何それ傷つくんだけど!
たえ:あたしはどっちかちゅうと役者さんの方いいべし。
おかま:あら大胆発言。衝撃告白。突然カミングアウト。
板前:もう十分。
たえ:なんだか一生懸命な男の人ってあこがれるべす。
おかま:あら恋?恋なのそれ?わかんないの?決めてあげる!それ、恋よっ
たえ:恋かぁ〜
板前:たえちゃん、自分をしっかり持って。
たえ:見てるとなんとなぐほわーっとするちゅうか。
おかま:ありゃこれ本気かも。
カレン:あったばっかなのに?
たえ:だってほれ。このシュエイクスピアだってほれ、
あったばっかで恋に落ちたんだで?
ロミオとジュリエットさん。
板前:お、詳しいね。
たえ:読んだで。さっき。
おかま:これを?!
板前:坪内逍遥でしょ?歴史的仮名遣い。
たえ:すらっと読めるべ。
おかま:ま、あんたの言語、歴史的仮名遣いに近いとこあるものね。
たえ:ねねね、そういうの無い?先輩。
カレン:え?あたし?
おかま:突然先輩になっちゃったわよ。
カレン:えっと。えーと。
あたしはぁ、ないない。そういうのまったくない。
ほら、たえちゃん、若いからだ。あたしもうすぐ30だもん。
おかま:恋愛に年齢なんて、関係ないわ!
年齢に関係なく、人は恋に落ちるのよ。ね?ケンちゃん。
板前:性別は関係ありますけど。僕は。
おかま:あら、うまい事言うわこの子。ますます好きになりそう。
板前:助けて!
カレン:はいはい、遊びおわりにしましょ。練習練習。
たえ:へーい。
板前:助かったー
おかま:人をばけものみたいに。
立ち上がる4人。
トイレから出てきた支配人。
支配人:あの。
たえ:どうやんの?
カレン:なんかわかんないけど読んでみればいいんじゃないですか?
板前:役は?役。
おかま:さすが高校演劇出身。
板前:馬鹿にしてません?
おかま:してるわよ。
支配人:、、、、
支配人、意を決して楽屋へ行く。
カレン:役かぁ、、えーと、じゃ、挙手。
板前:え?そんなんで決めるの?
カレン:やりたいのやった方が、いいじゃないですか。
覚えるんですよね?最後には。
おかま:一理あるわね。
カレン:じゃ、ロミオの人
板前:はい!はい!
カレン:はい。じゃ、ジュリエットの人。
おかま:はい。
間
おかま:なによ!?
板前:それは厳しいんじゃ?ビジュアル的にもわかりにくいんじゃ?
おかま:あたしこの前テレビでみたわよ!
シェイクスピアの時代は男が女役やってたのよ!
女は舞台にのってはいけなかったのよ!
なに!なにこの仕打ち!あたしに死ねっていうの!?
おカミの声:死ね!
おかま:それはちょっとひどすぎるんじゃ、、え?誰の声?
ビンタの音、バチン!!
全員:!!
楽屋を見る
おカミの声:いいかげんにしてよこんな時に!
支配人:でもあの、、ほら、、
ビンタの音、バチン!!
おかま:!いったぁい。
支配人、出てくる。
支配人:、、、、、、、
ちょっと、空気を吸ってきます。
、、、、、、。
全員:(うなづく)
支配人、トイレに行く。
たえ:(小声)こっちこっちっ
おかま:(小声)それトイレ
支配人、階段をあがる。途中でとまる。
支配人:、、、トイレの空気、吸ってどうすんだ。ってね。
全員:、、、、、、、、、。
支配人:、、、、、、、、、。
退場。
カレン:、、万太郎さん、、。
たえ:ちょと泣いてた。
おかま:修羅場?
板前:ちょっと様子見てきまーす(にやにや)
板前、楽屋へ。
板前:着替え終わってますー?
退場。
おかま:火事場どろぼう
たえ:なにそれ?
おかま:説明する?
たえ:うん。
おかま、たえ、退場しようとする。
おかま:カレンちゃん
カレン:、、え?
おかま:(行こっ)
カレン:あ、うん。
おかま:(なんか言って、なんか)
カレン:あ、ああ、あー、お腹すいたなぁあ。
おかま:あ、(グーよグー)ああ!そうね!すいたわねえ。ほら
たえ:あ、すいたすいた。グーグー
カレン:ちょっと外に食べいきますー
たえ:グーグーグーキュルウルルルル
おかま:へた!
たえ:お腹の音。
おかま:役者なんてできんのかしら。
たえ:火事場どぼぼ?
おかま:泥棒くらいちゃんと言いなさい。
2人。退場。
カレン、階段上にサス。
日記を出す。書く。
カレン:あさっては予約でいっぱい。
この予約をキャンセルするだけで
この温泉宿はあっさりつぶれる。
病院からの連絡は無し。
こうして時間は、どんどん過ぎていく。
日記、閉じる。
クラシックな曲
カレン:、、、、、
万太郎の心配をする、カレン
よっぱらい登場
酔客:あ、やっぱこれながれたら終わり?
カレン:あ、いえ。
酔客:あ、もうだめ?
カレン:あ、えっと。
楽屋を気にする。
カレン:ちょっと待ってもらっていいですか?
酔客:あの、水割。
カレン:はい。
階段を降り、楽屋を覗きに行こうとする。
板前、登場。
板前:あれ?みんなは?あ、ごはん?
カレン:あの、中って、、
板前:おカミさんさすがにバツが悪いみたいで、
みんなに謝ってくれって、
裏口から上がりました。
カレン:そか。
酔客:いいの?だめ?
カレン:あ、どうぞどうぞっ。
板前:じゃ、おやすみなさい。
カレン:あ、おやすみなさいっ
水割を用意するカレン
酔客:ごめんね。寝るとこだった?
カレン:いえ。
酔客:やること無くてさ。
酒ばっかのんじゃう。
部屋で飲んでても、なんかね。
カレン:お一人でしたもんね。
酔客:、、、。
間
カレン:おちつかないでしょう?
いつもはもっと静かなんですけど。
もう、静かすぎるくらい。
酔客:いや、十分静かだよ。
お客さん、俺だけだもんねぇ?
カレン:ええ。もっと入ってくれたらいいんでしょうけど。
酔客:これ。良かったら。
カレン:なんですか?
酔客:やるんでしょ?ロミオとジュリエット。
カレン:あ、でも。
酔客:いいよいいよ。
興味あるわけじゃないし。
もう読んだし。
カレン:すみません。助かります。
酔客:いや。
間
カレン:興味ないのに、読んでるんですか?
酔客:まーね。
水割を飲む。
酔客:飲む?
カレン:あ、あたしは、、、、いや、、のもっかな。
酔客:無理してつきあわなくていーのよ?
カレン:飲んじゃいます。
酔客:、、、、
カレンの様子を見てる、よっぱらい。
酔客:ながいの?ここ。
カレン:ええ、もう5年くらいになりますか。
酔客:なまえは?
カレン:カレンです。
酔客:本名?
カレン:はい。
酔客:名字は?
カレン:綾乃小路です。
酔客:おお、結構な名前だ。綾乃小路カレン。
カレン:ねー。名前負け。
間
酔客:結構広いよね、ここ。大変でしょ。
カレン:いえ、慣れました。
酔客:一人?
カレン:いえ、住み込み仲居はもう一人。あとはたまにバイトさんが。
酔客:あ、いやいや
カレン:え?
酔客:だんなさんと来てるわけでもなさそうだなぁと思って。
カレン:あ、一人です。
酔客:わけありだ。
カレン:まぁ。
酔客:ちょっと、便所。
カレン:あ、そっちでーす。
トイレに消える、よっぱらい。
カレン:、、、、、
シェイクスピアの本を手にとる。
カレン:「おはよう、ロミオ」
「早いのか、まだ?」
「9時だよ」
「そうか、悲しい時は長いなぁ。」
「ロミオの時を長くする悲しみって、なんだい?」
「手に入ったら時を短くしてくれるはずのものを、手にもたない悲しみさ」
「つまり、恋か」
「その恋を、、、」
「その恋を、失ってか?」
「恋こがれる恋人の心を失ってだ」
「おれは、自分を見失っているのだ。
ここにいるのはロミオではない。どこか、ほかにいるのだ」
、、、、、。
一人、ウィスキーをあおる、カレン。
いつの間にか、それを聞いていた支配人。
カレン:明日も元気にがんばろうーっと。
タバコを出し、火をつけようとして、やめる。
支配人:ぼくはどうかしてるんだ。
ここにいるのは僕、轟万太郎じゃない。
僕は、本当の僕はどこか他にいるんだ。
ヒック、、なんつて
カレン:、、飲んでます?
支配人:お、階段、いつから丸くなったんら?
カレン:ああ、もう。
カレン、あわててささえにいく
支配人:自慢じゃないんだけどぉ
おれ、結構な大学出て、結構な大企業に就職して、
ハブルもバブル崩壊もなんて関係なかったくらいのエリートコース進んでたんですよね。
見えます?見えませんか?
やっと座らせる。
支配人:見えます?見えませんか?どっちですか?
カレン:見えます見えます。
支配人:おお、いいれすねぇ。見えますか、どーもすんまでん。
あれ、ここのかべ、ゆがんでる。
カレン:大丈夫ですか?
支配人:きいて!それが!そのエリートが!
それが、、なんでこんな温泉宿にいるかっていうとぉ。ひっく。
カレン:なんでですか?
支配人:恋!しちゃったんですよ!
会社の慰安旅行でたまたまこんなド田舎に来たんですよ。
なんだか知らないけど来たんですよ。
そしたら。そしたらあなた。
恋しちゃったんですよ!恥ずかしい!恋!恋だってさ!
カレン:、、、あ。
支配人:その日にやめました。全部。
カレン:、、、
支配人:エリートコースを捨てました。そして!
支配人になりました!
晴れて!その人のハートをいとめたわ良いんれすが!
、、駄目ですねぇい。
あの!あの!
カレン:はい、はい。
カレンの肩をしっかりもつ
支配人:信じますか!
カレン:え
支配人:一目会ったその日から!
一瞬で人をすきになるなんて事を信じますか!
カレン:、、、
支配人:どうだい?
カレン:いや、、、、、、、、、どうでしょう。
支配人:気持ちわりい。
カレン:え?
支配人:吐きますか?
カレン:え?聞かれても!
支配人:吐きましょう!
支配人、なぜか階段をかけあがる。
カレン:ちょと、こっち!こっち!トイレ!
支配人:おおおおう!おおおおう!
カレン:そっちじゃない!ちょっと!ちょっと!
曲、少しあがる。
■お夏と清十郎。
結構長い間。曲消える。
役者、ゆっくりと、登場。
舞台上に正座をする。
大きく息をすいこみ、扇子を打つ。
タン、タンタンタンタンタンタンタンっっタタン!
口上。
役者:1625年寛永2年、徳川幕府全盛の江戸時代。
姫路城は大手門本町、
19で米問屋「但馬屋(たじまや)」に丁稚(でっち)奉公にやってきた色男、
室津(むろつ)港酒造り問屋の和泉清左衛門の息子、その名も清十郎。
錦絵にもまさる美男に町行く乙女は恋焦がれ、
切々たる想いよせた恋文が15人の遊女たちから来る日も来る日も届くほどだ。
扇子を打つ
役者:但馬屋九左衛門の娘、お夏の器量は京島原の太夫を軽く上回る。
その器量は言うに及ばず、16ながらすでに匂い立つような女の色香、
降るほどの縁談も、相手の姿形を選り好み、袖にし続けていた。
扇子を打つ
役者:ある日、あの清十郎がこのお夏を出会った。
二人はあっと言う間にひかれあう。
恋に恋して恋こがれ、いつしか深く愛しあう。
しかし、お夏の父、但馬屋九左衛門はそれを許さない。
清十郎は思いも寄らぬ冤罪により死刑。
それを知ったお夏は一人、とうとう狂ってしまいましたとさ。
悲恋悲恋の物語。
扇子を打つ。
タン、タンタンタンタンタンタンタンっっタタン!
階段に、パジャマのたえがいる。
たえ:(拍手)似てるな。ロミオとジュリエットと。
役者:、、、。
たえ:風呂はいればいいに。
役者:、、今何時?
たえ:もう夜中の2時。
役者:、、、連絡は?
たえ:病院たってこのへんのはちっこいがらな。
14人もかつぎこまれりゃ
てんてこまいで電話する暇ねんだべ。
頭を抱える役者。
たえ:名前は?
役者:夢見勘之助。芸名。
たえ:へぇ、いいねぇなんだか。本名は?
役者:田中はじめ
たえ:普通だぬ。
役者:だから、うちの団長が名前変えろっつって。
たえ:夢見がちって事か
役者:そう。あと頭で考えないで勘で動くっつって。
たえ:勘之助
役者:、、うん。でも、、こんな事になっちゃって。
ほんと、もうしわけない。
頭を抱えながら、あやまる。
たえ:勘之助さんが運転してたわけでないでしょ?
役者:、、そうだけど。
カレン、駆けこんでくる。
カレン:あ、いた!あれ?たえちゃん。
たえ:カレンさん。
カレン:お。なにやらただならぬ雰囲気。こ、これは、じゃましたか。
たえ:そだこたねーっち!
カレン:今、病院から電話あって。
14名様無事ですって。運転手さんも。
役者:、、ほんと?!じゃ、今こっち向かってる?!
カレン:それが、、
役者:え?
カレン:みんな骨折だったり打撲だったり。
2、3日は安静にしてないとって。
役者:、、、じゃ
カレン:あさっての本番には間に合わないって。
、、、残念だけど。
役者:、、、、そうか。
ちんもく
たえ:さーて、ねっかな。明日もはえーし。
たえ、部屋を出る前に立ち止まり、
たえ:あ、あんた山から転がって連絡しないば、
他の連中死んでたってよぉ?ほれ、山ん中さみぃから。
役者:、、、(顔をあげる)
たえ:表彰状もんだに。おやすみー。
たえ、退場。
役者:、、、表彰状もんか。
カレン:あれ、たえちゃん。
最近ここ来たばっかなんだけど
ひとなつっこいんだ。
若いんだけど、色々あってここに来たんだと思うよ。
役者:、、、、。
カレン舞台に乗り学芸会
カレン:棒だ!棒だ!槍だ!矛(ほこ)だ!打ちのめせ!たたき伏せろ!
キャピュレットをやっつけろ!モンタギューをやっつけろお!
やれやれぇ!
役者:、、何してんの?
カレン:小学校ん時の学芸会の役。
ロミオとジュリエットの喧嘩のシーンの「市民4」。
役者:ああ。
カレン:いっつも脇役だったなぁ。
あ、一番最初にやった役はねぇ、
小学校1年生のてんとう虫4。
台詞、「そうそう」だけ。
すごくない?「そうそう」だけだよ?
でもねぇ、毎日練習してたな。
パパとママに見せてさ。学芸会まで1ヵ月毎日だよ?
パパとか「もっと、そうだなぁって感じを込めたらいんじゃないか」とか。
ママとか「うん、いい。だいぶ、そうそうって感じになってきた」っつて。
役者:、、、
カレン:あたし難しい事わかんないんだけど。
なんとかなるんじゃないかな?あたしほら、手伝うし。
なんか用意するもんあったら言って。小道具とか?
あたしこの旅館長いから、どこになにあるかだいたいわかるから。ね?
役者、たちあがる。
役者:、、猿とか入ってくんの?露天風呂。
カレン:なにいってんですか。当然ですよ。
役者:え?当然なの?!
カレン:今の時間は大入りじゃないかな。
役者:猿が?そういうもん?見てえ!
カレン:でも気をつけてくださいね。
自分はオスだという事をアピールしないと大変な事になります。
役者:どやって?
カレン:もうほら、ぶるんぶるんしなさい。ぶるんぶるん
役者:え?マジで?
カレン:じゃないと大変な事になります。
役者:どうなるんだ!
談笑しながら階段を昇って行く二人。退場。
トイレから出てくるよっぱらい。
酔客:、、便所で寝てた。そして出るタイミングのがした。
、、ん?
カレンの日記。
酔客:日記、、。
、、、女の日記。
、、ちょっと興奮するな。
パラパラとめくる。
酔客:ふーん。
中から落ちる、一枚の写真。「支配人」
酔客:あ。
なんだこの細い目のやさ男は。
華流スターか。中国人。
肩ねぇなこいつ。あ。、、、支配人じゃん。ここの。
カレン
カレン:忘れもん忘れもん
酔客:!!
素早く日記を放りだし、トイレに隠れる。
カレン:あぶない。日記読まれたら大変だ。あれ?
こんなとこ置いたっけ?
いや、、誰もいないもん。大丈夫大丈夫。うん。
カレン写真がない事に気付かず、日記を胸に退場。
よっぱらい、再び登場。
酔客:、、、へー。さすが場末の温泉宿、色々あるんだ。
さて、どっから攻めてっか、、
、、ボロい宿。
ま、おれの手にかかれば、イチコロだ。
写真を出す。
酔客:いまどき、ホレた男の写真を日記にいれとく女がいるとは。
こりゃ相当脳味噌お花畑だな。
カレンの声。
カレン:カギカギカギカギカギ
酔客:え?、、カギ?
SEガチャ(生音?)
酔客:あ!
カレン:あ、電気!
酔客:え?あ、ちょっと。
SEパチ。パチ、パチ(生音?)。
暗。
酔客:あ、、。
ちょっと、
いるよー。
閉じ込められる酔っ払い。
■ロミオとジュリエットに、ついて。
暗の中、セリフ。
役者:おはようございます!
全員:おはようございます!
役者:本日は早朝よりお集まりいただいて誠にありがとうございます!
これより、とうとう明日に迫りました本番に向け、
早朝ミーティング及び決起会を行います!拍手!
全員:(拍手)
役者:それでは、例のものを。
たえ&カレン:あい。
たえ、カレン、ホワイトボード(もしくは手書きテロップ)もって出てくる。
ロミオとジュリエットの人物紹介図。
登場人物:●モンタギュー家○キャピュレット家
・ロミオ・ジュリエット
・(ロザライン)・(パリス伯爵)
・マーキューシオ・ティボルト
・修道士ロレンス・乳母
おかま:あら、ほっそい目の支配人は?
おカミ:寝てんじゃないの。
おかま:あら、おっかない。
役者:はい注目!
これが、ロミオとジュリエットの主要登場人物であります。
しかし、当初予定していた演目
「お夏と清十郎」の宣伝がなされているわけで、このままではよろしくない。
おかま:日本映画観に行ったらずっと外人ばっか出てきちゃうみたいな感じ?
板前:あーやだなそれ。
役者:したがって、これを。
モンタギュー家→室津港酒造り問屋
キャピュレット家→米問屋但馬屋
全員:どよどよ、どよどよ
役者:そして、
ロミオ→清十郎
ジュリエット→お夏
役者:物語は、「ロミオとジュリエット」
登場人物は、「お夏と清十郎」!
なお、この案はたえちゃんの
たえ:『似てるな。ロミオとジュリエットと』
役者:という言動にヒントを得ました。そして、
カレン:『いいじゃないですかーやっちゃえやっちゃえ』
役者:という言動に背中を押されました。
3人:(礼)
全員:おおおおお(拍手拍手)
役者:ジュリエットは満場一致でおカミさん。いいですか?
おかま:仕方ない!ゆずるわ!
全員:(拍手拍手)
おカミ:礼、礼、礼。
役者:で、他の役は俺が勝手に決めました。
男性キャストがもともと多いので女性にも男役をやって貰います。
全員:ざわざわざわざわざわざあわ
役者:ティボルト、たえちゃん
たえ:おお!男役!よす!
役者:マーキューシオ、ジュリーさん
おかま:おお!久しぶりの男役!高校以来だわ。
役者:乳母、カレンさん
カレン:うわ、あたしも?
役者:役者不足なもんで。よろしく!
カレン:おおお。わかりました。うわぁ。
役者:そして、ロミオ役、板前ケンちゃんさん。
板前:え?僕?あれ、勘之助さんやった方が。
役者:いや、朝方までよく考えたんだけど。
俺は、こうなったら回し役に徹した方がいいと思う。
少しでも芝居の事知ってる人間がやった方がいい。
おかま:ちょっとあなた案外キレものね。
たえ:いんやぁ、男まえだなや
おかま:ま、あんたのストレートな愛情表現、見習いたいわ。
板前:ジュリーさん十分だと思いますよ。
役者:そして、ロレンス神父は、支配人にやって貰いたかったんだけど。
、、どこに?
おカミ:寝てるんだ、酒くらって。
カレン:あ、あたし起こしてきます?
おカミ:あたしに聞かなくてもいいよ。
カレン:え?
おカミ:別れましたので。
カレン:、、、え
おかま:あらいやだ、朝っぱらから急展開ね。
おカミ:ちょっと、いい?
役者:あ、はい。
おカミ、皆の前に行く。
おカミ:あたしは、この温泉宿の娘に産まれて、
若い時、さんざん親に迷惑かけて、
家飛び出して、好き勝手やって、
そんで、なにもできずに年とっちゃって、
都会で疲れて帰ってきたら、二人ともいっちゃって。
だから、おカミになるって決めて、
あたしは、この旅館を守る事が親孝行だとおもってて。
それはみんなにはまったく関係ないことなんだけど。
いや、みんなに関係のない事だと言うのに、
みんな、がんばって支えてくれて。
、、、昨日はほんっとに申しわけない!
この大変な時に、
みんなが力を貸してくれてるって時に、
ああいう事があって。
昨日は、本当に、まこっとに、まこっっっっとにもうしわけない!
もう、ああいう事は金輪際ありませんので。
年に一度のお芝居興行、ジュリエット、あ、お夏?お夏役!
しっかりとつとめさせていただきます!
拍手
おかま:素敵!
たえ:ブラボー!
役者:感動した!感動した!
板前:日本一!
カレン:かっこいい!よぉ!
役者:じゃ、これ!
俺が朝方までかかって、素人でも出来るレベルに
落としまくった台本ですー!
板前:恩着せがましいうえに
おかま:バカにしてるわね。
役者:事実ですから!
おかま:くやしい!あたしくやしいわ!ロミオ!
板前:しかたがないですね。
おカミ:カレンちゃん、あの人起こしてきてくれる?
カレン:はい!
カレン退場。
たえ:、、、
おかま:さ、がんばろ!ティボルトだかコロボックルだかしらないけど!ん?どしたの?
たえ:あー。まだ「あの人」なんだなぁとおもて。おカミさん。
おかま:するどい田舎者ね、あんた。
役者:さ、びしばしっとガンガン覚えて行きましょう!
全員:はい!
曲
■稽古風景
役者:あ、女性陣、先に動きやすい服そうに
着替えてきてくださいー。
二人:はーい!
二人楽屋へ。
役者:じゃ、清十郎とマキューシオ、この親友二人で出来るシーン。
板前:質問!
役者:はい清十郎くん。
板前:僕清十郎で、マキューシオですよね。
役者:はい。
板前:二人は国境を越えた親友って事ですか?
おかま:ペンパルってこと?
板前:なつかしい。
おかま:エアメールで文通友達?
役者:そっか、突然困ったな。名前かえよう。
おかま:じゃ、「マー坊」。
役者:それで行こう。
板前:てきとーーー
楽屋から叫び声。
二人:ぎゃああああああ!!!
役者:なんだ?
おカミ:へんたい!へんたい!
たえ:えっち!すけべ!マイペット!
酔客:いたたたたた!
よっぱらい。
二人にひっぱられてくる。
なんか衣装をいっぱいきてる
酔客:いたたたた!いたい!
板前:覗きですか?!覗き!
おかま:しかもコスチュームプレイね。
酔客:違う!違う!
おカミ:じゃあなんでそんな服着てんだよ!
酔客:こわい!
おカミ:ああ?!
酔客:閉じ込められたんだ!
凍えて死ぬところだったんだぞ!
あの、大きな仲居に!綾乃小路!
おカミ:え?カレンちゃん?
たえ:綾乃小路っていうのか。
おカミ:知らなかったの?
おかま:ぜんぜん
板前:財閥系?
おかま:もしかして富豪の娘?
役者:だれだれ?だれの話?
酔客:ちゅうもーォォく!!
全員:あ。
酔客:私は客である!
暗くて寒くて怖かった!
ひもじくてぇ!
このまま死んでしまうのかと思った!
さびしくてぇ!
楽屋の衣装の残り香をかんでいた、、
おカミ:へんたい!
全員:いやいやいやいや
おカミ:ほんと、
全員:すんませんでした!
おカミ:さ、許してもらった事だし、やろうぜやろうぜぇ
全員:やろうぜぇやろうぜぇほっといてやろぜぇ
酔客:こらあ!
役者:台本20ページ!清十郎とマー君のおしゃれなシーン!よおい!アクション!
マ:「それならカガミこんで俺の靴を観ろ、カガミのようにみがいてある」
せ:「その調子でおれのシャレについてくるか、
おまえの靴がすり減るまで。いいか?お前の靴裏へったとて、
シャレはへらずにうららかに」
マ:「へったくそなるシャレなれど、口のへらずがうらやまし」
せ:「まいった!駄洒落くらべじゃ俺はお前のいいカモだ。それでいいカモしれんがね」
役者:、、、
酔客:シェイクスピア?
役者:うん
おカミ:おしゃれ!
全員:あいや!あいや!あいやいや!
カレン
カレン:ロレンス神父二日酔いです!今支度してまーす
役者:それじゃ稽古になんないな。
板前:あ、
おかま:あ。
役者:あ。
酔客:え?
役者:おっさん、代役。
酔客:おっさんじゃねぇ!
役者:はい、セリフセリフ、
酔客:どこ?!
板前:ロレンスは?
おかま:老人でいいよ。
酔客:こらぁ!
役者:よおい!アクション!
老:はげしい喜びにははげしい破滅がともなうものよ!
口づけするときが砕けるときになりかねん!
だから、ほどよく愛するのじゃ!
それが、永い愛の道じゃ。
カレン:どしたんですか朝っぱらから。
酔客:あんたのせいだよ!
独白体制、独白照明
カレン:みんなの気迫もあいまって、
酔客:こらぁ!
カレン:今大事なとこ。
酔客:はい。
カレン:稽古は予想以上に順調にすすんだ。
長年ここに勤めてきたけど、
こんなにみんなが頼もしかったことはない。
なんか、しあわせ!
このしあわせが、ずっと続けばいいのに!
役者:乳母セリフ!
乳母:そう、お嬢様は私の乳首のニガヨモギをなめて、
むずがりなさって、私の乳首と喧嘩さわぎ。
酔客:なんだそれ。
役者:ロミオ清十郎セリフ!
せ:ティボルト!おまえを愛さなければならないわけがあるから、
このような腹の立つあいさつも許すのだぞ!
ティボルトは日本名にしないの?
役者:マー君!
マ:じゃ、「ティン坊」!
役者:それでいこう!
せ:まじで?
楽屋からティン坊
テ:ティン坊参上!わたしの名前は、ティン坊!
せ:ギリギリだ。ギリギリ
マ:やいやいティン坊!この俺、マー君とやる気があるのか!?
役者:お!いいぞいいぞ!
ティン坊マー坊喧嘩警報!
テ:ティン坊!
マ:マー坊!
カレン:天気予報みたい。
役者:台詞!
せ:ふたりとも!乱暴はよせ!ティン坊、マー坊!
この町での争いは、禁じられているぞ!
役者:ト書き!
カレン:はい!清十郎!二人の剣のあいだにわりこみ、
マー坊を抱きとめようとする!
その腕の下かあら、ティン坊のアレが、マー坊を貫いた!
酔客:アレ?
マ:あああん!
カレン:その声を聞き、ティン坊は走りさる!
テ:良かったぜ。
役者:清十郎台詞!
せ:しっかりしろ!おまえはキズものなんかじゃない!
マ:うう、ううう、ううああ、、うあああん!
カレン:マー坊、昇天。
せ:いっちまったか。
酔客:なんてえげつない台本なんだ!
カレン:ちょくちょくえげつないアドリブいれるのやめてください!
3人:はーい。
役者:清十郎!復習!
せ:やい、ティン坊!
マー坊の魂は、まだわれわれの頭上高くへ飛び去ってはいない!
おまえという道連れを、待っているのだああ!
カレン:切りかかる清十郎!
テ:おまえはこの世であいつとつきあってたんだ!
おまえが一緒にいけ!
せ:つきあってなーーーーーい!
カレン:こうして、清十郎は、町から追放されるのです。
役者:所変わって!お夏の実家!乳母台詞!
乳母:悲しい!ああ悲しい!
おじょうさま!おじょうさまーーー!
支配人。階段に登場。稽古の様子を見ている。
お夏:どうしたの?清十郎が殺され、イトコのティン坊が死んだの?
大事なイトコと、もっと大事なあの人が亡くなって、
だれが生きていられよう、、
乳母:違います!
ティン坊は死んで、清十郎は追放です!
大事なイトコがしんで、あなたの清十郎は追放されたのです!
お夏:ああ、蛇の心が花のお顔にひそんでいたとは!
天国のようにかぐわしい人間のからだの中に、
悪魔の魂が包みこまれたことがあって、、?
乳母:男などというものには、誠実も、名誉もありません。
にくきあの男も、恥をさらすといい。
板前、階段の支配人に気付く。
お夏:そんな事を願う舌はただれるがいい!
あの人は恥さらしではないわ!
ああ、私はなんという人でなし、あの人を悪く言うなんて!
乳母:では、あなたのイトコを殺した男を、よくいうのですか?
お夏:悪く言えると思って?
私のあの人を、、、。
せ:、、、、。
役者:はい。すばらしい!ちょっとここで休憩、、
板前、故意に芝居を続ける。
板前:お慈悲です!「死刑」と言ってください!
追放のほうが死よりも恐ろしい顔つきをしている!
猫も、いぬも、ネズミも、この世界にすみ、
ハエでさえ、あの人の白い手にふれることが出来るのに!
たえ:ん?
おかま:?
板前:猿でさえ!犬畜生でさえ!どんなにくだらない人間でさえ!
あの人に触れる事が出来るのに!
板前、いつの間にか、支配人を見ている。
役者:、、、あ、、えと、はい。あの。
板前:どんなにくだらない人間でさえ。
支配人:、、、
板前:あの人に触れることができるのに、、。
おカミ:、、、、
カレン:、、、、。
役者:えっと、
たえ:アドリブか!アドリブか!
おかま:なんだびっくりしちゃったぁ!
だって台本にぜんぜん書いてない事いうんだもーん
板前:ははー。いやなんか自然に。
板前、おカミをみる。
カレン:あ、万太郎さん起きました?
支配人:え
カレン:昨日のみすぎだったから覚えてないでしょう?
だいじょうぶですか?あたま?二日酔い。
おカミさん。服どうですか?今度きつくないです?
結構、うん、結構いいかんじ。
ケンちゃんほら、そろそろ板前の仕事!
お客さんいるから。いちお。
酔客:いちおだと?
カレン:うそ!朝ご飯、これから準備しますから。ね?
酔客:はいはい。あ、ちょっと便所。
カレン:行ってらっさーい
ささ、われわれは少しづつ明日の準備もしますか。
明日は大入り。ね。がんばっていきましょー。
たえちゃん手伝ってー。
たえ:あいー。
おかま:カレンちゃん。
カレン:あ、手伝ってもらえます?
ぱっとやっちゃって
稽古しましょ。稽古。ね。
おかま:あのさ。
カレン:さささ。いこういこう。
お客さんも、ほら。脇役陣、出発!
たえ:おー。
おかま:カレンちゃん。
カレン:あそうだ!万太郎さん予約チェック。
また問い合わせ当日来ますよ?
はい、脇役退場〜!またお昼にー。
支配人、おカミ、板前残る。
支配人、退場。
板前:どこいくんすか。
支配人:、、顧客管理。
板前:聞きたい事ないんすか
支配人:、、別に。
板前:ぶっちゃけ狙ってるって言ったじゃないすか。
支配人:、、
板前:あたまに来ますね。支配人。
おカミ:よくないよくない。
こういう雰囲気。後にしよ!
さっきあたし金輪際こういうのは持ち込まないって宣言しちゃったから。
板前:そうですか?
さっきものすごく持ち込んでたように見えましたけど。ジュリエット。
おカミ:なに言ってんの、お芝居にほら、入り込んだって言うの?
あらやだ。ちょっとこっぱずかしいね。芸能人みたい。
板前:「あの人」って誰ですか。
おカミ:、、、、、
板前:答えたくないならおカミさん黙っててくださいよ。
なんなら退場してくれて構わないですよ。
これ、僕個人の問題だから。
支配人:仕事するぞ。
板前:あ、仕事、手つきません。
支配人:なにいってんの?
板前:手つかないんですよ。
僕、はっきり言って最近の料理、手抜いてますもん。
おカミさん、気付きました?
おカミ:、、、うん。
板前:支配人は?
支配人:、、俺は、、
板前:言えばいいじゃないすか。
愛だの恋だの子供みたいな事考えてないで
大人として仕事しろよとか。
気付いてんなら。
支配人:、、それは、、
板前:僕ねぇ。初めて会ったその日から、
ずーっとチャンス狙ってたんですよ。
おカミさんを奪い取る。
だから、はっきりして欲しいんですよ。
すっぱりと、別れるなら別れてくださいよ。
こっちはずっと待ってんだから。
ま、おカミさんには昨日、いいましたけど。
支配人:、、え
板前:え、とかいっちゃって。
支配人:、、?
板前:わざとですか?そのダメっぷりは。
支配人:なにいってんだよ
板前:なにいってんだよとかいっちゃって。
いいなぁ、それ。
支配人:、、
板前:口ごもる。みたいな。
たじろぐ。みたいな。
ごはんつぶつけちゃって。みたいな。
わざとですか?
支配人:わざとじゃねぇよ!
板前:助けてあげたくなりますよ。女性は。ねぇ?
最近、お二人の不仲が気になって手つかないですよ。仕事。
だからあんたしっかりしてくださいよ。
支配人:、、、
板前:しっかりしてくんないと、
おカミさんの「あの人」。
ものすごーく重いんですけど。
じゃ、おカミさん。
俺、待ってますから。
板前、支配人の横を抜け、退場。
支配人:、、、、
おカミ:、、、、
支配人:待ってるってどういう意味?
おカミ:、、、なんでもない。
支配人:答えろよ。
おカミ:関係ない。
支配人:関係あるだろ。
おカミ:どこが。
支配人:俺は、ここの支配人として、
おカミ:なんだそりゃ。
支配人:、、、え
おカミ:もうちょっと、ましなセリフないの?
支配人:、、。
おカミ、シェイクスピアの台本を渡す。
おカミ:、、、はい。
支配人:、、、
おカミ:勉強しな。
ロマンチックなセリフがいっぱい書いてあるから。
支配人:、、、
台本に目をおとす。
おカミ:とにかく、別れた。そうしよう。
あたし頭の中がぐちゃぐちゃになる。
いろんな事いっぺん考えられない。
支配人:、、、
台本を捨てる。
支配人:こんなもん嘘だ。
おカミ:、、(鼻で笑う)
支配人:俺は、おまえと
おカミ:もういいよ。
支配人:俺は、おまえとこの旅館もりたてるんだ!
おカミ:もういいって。
支配人:嘘じゃない!俺、ほんとにそう思ってんだ!
いつか、この旅館どうにかして!
結婚して!子供作って!一緒にじいさんばあさんになって!
そんで幸せに笑って暮らせるくらい!
おカミ:もういいって!!!!
おカミ、台本を拾う。
おカミ:そういうのじゃないんだって、、
支配人:わかれってくれって!
俺、優柔不断で、決断力なくて、
頼りがいなくて、
なにかにつけて失敗ばっかしてて、
でも信じてくれって!
おカミ:甘えてんじゃねぇよ!!!!
支配人:、、
おカミ:決断力あるって嘘ついてよ。
頼りがいあるフリしててよ。
失敗したって、うまくいってるって嘘つけよ。
本当の俺?なにそれ。
そんなもん。
、、そんなもん見たかねぇえよ!!
弱い弱いって甘えないでよ。
嘘でもいいから強いふりしててよ。
歯浮くようなセリフばっか言っててよ。
脳味噌、お花畑のまんま、
しあわせなお姫様みたくだましててよ。
、、、
苦しいんだよね。
現実ばっか見えちゃって、、。
支配人:結婚しよ。
おカミ:、、は?
支配人:いま全然関係ないけど結婚しよう。
おカミ:なにいってんの、あんたバカ、、?
支配人:頭ん中整理しないと、
まず結婚しよう。そしたらきっと全部うまくいく。
おカミ:いかないよ。
支配人:俺、初めて会った時、決めたんだって!
おカミ:そんなの
支配人:あの人を幸せにするって!決めたんだって!俺!
おカミ:そんなの
あたしだって同じだよ
台本を、地面にたたきつけ、おカミ、楽屋へ退場。
支配人:、、、、。
よっぱらい。
酔客:、、、、
いや、盗み聞きする気は、なかったんだけど、、。
出るタイミング、完璧に逃しちゃって。
支配人:、、、すいません。
酔客:、、、、、あの。こんな時になんなんだけど。
いや、こんな時だからこそ。っていうのかな。
支配人:?
酔客:わたし、こういうもんです。
支配人:、、、不動産
酔客:おカミさんに持ちかけてくれませんかね?
一回、死にませんかって。
支配人:え
名刺。曲
階段にカレン、ロミオとジュリエットを読んでいる。
カレン:ロレンスが考えた案は次のようなものでした。
ジュリエットが前夜、その薬を飲むと、結婚式の朝、
花婿が向かえにくる頃、彼女は死んだ状態で発見されるだろう。
ロレンスはその計画を手紙でロミオに知らせ、
死体安置所に安置されたジュリエットの寝覚めを待つ。
そして、夜のうちにロミオはジュリエットをマンチュアっへ連れていく。
ジュリエットは、その薬を受け取ると、
強い決意を抱いて家に帰ってきました。
カレン:「ロミオ、いま行きます、これを飲むのも、あなたのため」
カレン:死ぬ?
酔客:そう、一回旅館つぶしちまうんだ。
今の状態じゃぁ、サラ金だって貸してくれねぇよ。
サラ金ってのは、最後に人間に行き着くから金貸しになるんだ。
糸をたぐれば売り物がついてくる。そういう寸法だ。
今のうちにつぶしちまえばまだ金になるってのは、
どこぞの誰かさんの意見が正しい。
でも俺が言ってんのはそういう子とじゃないんだ。
実は他にいい話しを持ってる。
今ここにリゾート施設を建てようって会社がもひとつあるんだ。
だが、勢力的に一歩届かず、歯がみしてる状態だ。
そっちに話をつけてやろうかと持ちかける。
この旅館、都合がいいんだかわるいんだか、
リゾート施設のど真ん中になる。
はなから温泉が湧き出る場所だ。そうしたくなる気持ちもわかるわな。
例えばあんたがガンとしてここを動かない。
それじゃ駄目だ。
ここがつぶれるのは時間の問題。
向こうは工事の手はずを整え、手ぐすね引いてまつばかりだ。
でもだ。ここがすでにライバル会社の手に落ちたとあっちゃ、話しは別だ。
リゾート施設のど真ん中のライバルが経営する温泉旅館がリニューアル。
客は自然と流れてくるのは誰の目にもあきらかだ。
それは面白くねぇだろう?必死になって止めにくる。
だから表向きに一回死ぬんだよ。
死んで速攻ライバル会社に売りに出す。
支配人:でも、それじゃ結局同じじゃないですか。
酔客:だから。俺がそうなる話しを両方にふれまわってやるよ。
そしたら、今の会社も血相替えて、いろんな贈り物をしにくるぜ。
支配人:贈り物
酔客:俺はどっちの味方でもねぇ。
のらりくらりと契約かわしてるうちに、
ここに両方からの贈り物だけたまるようにしてやるよ。
金はあるにこした事はねぇ。
金は天下の回り物。めぐりめぐってあちゃらこちゃら。
まずは流れてく金をひとっところにためる。
誰のものかは関係ねぇ。
まずは手元にためた奴がつええのよ。
だから、一回死ぬ。
支配人:でも、そんなこと。
酔客:まぁ、俺に任せろ。薬がある。
支配人:薬。
酔客:ロミオ。
支配人:、、
酔客:どうしても物にしてぇんだろ?ジュリエット。
支配人:、、
酔客:ならモンタギューなんて捨てちまえ。
支配人:、、、
酔客:修道士ロレンスって呼んでくれい。
支配人:、、、、
酔客:言っとくけど。あっちのロミオにも声かけたよ。
どっちのロミオが口説こうが、
俺にはどうでもいい話しだ。
必要なのは、権利書。
権利書を、ジュリエットが持ってくりゃいい。
あとは、お手手つないで、
マンチュアへでもどこへでも。
退場しかけ、階段付近の
支配人:興味ないのに、読んだんですってね。
酔客:ないよ。
支配人:なんでですか
酔客:むかーし、フラレた女に言われたんだよ。
よんどけって。
よっぱらい、退場。
カレン:、、そして。本番の日
■本番の日。
明、板前と、おカミがいなくなっている。
役者:いないってどういう事よ。
カレン:いや、今、たえちゃんが探してるから。
役者:探す?意味がわからん
カレン:でも
たえ
たえ:カレンさん!カレンさん!
カレン:いた?
たえ:おカミさんの部屋に、、、これ。
役者:見せろ!
、、、、探さないでください、、、?
おかま:やだ。書きおき?
たえ:机んとこにポンってあった。
おかま:じゃ、なに?ケンちゃんも一緒?そういう事?
役者:ふざけんじゃねぇええ!!!
そりゃもとはと言えばうちの劇団が事故ったせいだけどよ!
なんかしらねぇけど!
それ以前の問題だろが!
おかま:頼むから怒鳴らないで!
ああもうそういうの大っ嫌い。
言ってもしょうがない事
怒鳴られるこっちの身にもなってよ
役者:、、、すまん。
たえ:まぁまぁ。
みな、茶のむか?とりあえず、茶ー。
茶柱くれぇは、立つかもしんねぇぞ?
おかま:強い子良い子。
たえ:元気な子。
おかま:あんたが居てくれて、すくわれるわ。
支配人
カレン:すみません。
役者:、、あんたに謝られてもよぉ、、
カレン:、、すみません。
役者:、、どうするよ。
ロミオとジュリエットがいなくて
お夏と清十郎が出来るかよ。
支配人:いなくなった、、、?
役者:、、、いなくなったよ。
支配人:!!
支配人、退場。
役者:、、なーに慌ててんだ。今さら。
たえ:カレンさんがやればいい。
カレン:え
たえ:カレンさんと支配人さんでやればいい。
支配人:、、え?
たえ:あたす、知ってんだ。カレンさん、
一人でロミオとジュリエット、練習してたの知ってんだ。
部屋で。聞こえてんだど?
カレン:え?練習?練習じゃない練習じゃない!
遊んでただけっ!一人で!
なに言ってんの!恥ずかしい!
あたしは乳母!乳母役でもう手いっぱい。ばばぁ!ばばぁの役!
役者:ほんとか?!
カレン:ほんと!手いっぱい!
役者:そういう意味じゃねぇよ。
ちょっとでも練習してたなら、まだましだ。
カレン:無理無理!
あたしなんて出てったら笑うって!
お夏でしょ?!ジュリエットでしょ?!
無理ですって!
こんな大きなジュリエットがどこにいんのってな!
役者:本番までまだ時間はある。
カレン:、、、え、、、まじ?
全員:まじ。
カレン:、、、あたし、、脇役しかやった事ないんですけど。
役者:安心しろ。
実は俺。劇団内では、下から2番目。
一番のはまり役は、ただ、バカな男だ。
おかま:ただ、バカな男。
たえ:興味あるわぁ。
おかま:あんたは、鏡見なさい。
たえ:ん?
カレン:なんか、
、、みんなといると、
なんでもできるような気になるね。
たえ:ね。
おかま:んねぇ。
役者:俺も入っていい?
たえ:許可。
全員:ねーーーーーー。
支配人、
支配人:金庫のなか、権利書も、金も、全部、、、すっからかんだ。
全員:、、、
だっひゃっっひゃひゃっひゃっひゃ!!
支配人:、、え?
おかま:あーあ、笑った笑った。
支配人:、、笑ってる場合じゃ、。
たえ:わらえわらえー
全員:だああひゃあひゃあっひゃあ!
支配人:えええ?
カレン:万太郎さん、ほら!
しかめっつらしてたら、
しあわせどんどん逃げるんだって
おかま:何に書いてあったの?
カレン:今朝、鏡にうつってたたあたしの顔!
全員:だああひゃあひゃあっひゃあ!
支配人:は、はは、
いつの間にか曲。静かなクラシック。
おかま:ロミオは、あんたにゆずるわ。
支配人:え。
おかま:カレンちゃん、がんばって。
カレン:、、、、、、、、、、、、、、、、
役者:頼む。
たえ:おねがい!
おかま:がんばって。
カレン:、、、、、、、、、、うん。
全員:よし!よお!拍手拍手!よしぃ!
おカミ
カレン:よ、よおし、がんばろぉ。
あ、そのまえに!ちょっと、ジュリエットの服、
でかくしてくんない?!
たえ:ああ!あたすやる!
おかま:背中はだけたジュリエットじゃかっこつかないもんねぇ。
カレン:よっし!あ、あと靴!ま、はだしでいっか?
万太郎さん、よろしくお願いします。
ちょっと勢いよすぎのジュリエットですけど!
支配人:うん。
カレン:実はー、学芸会でジュリエット、やってみたかったのよねぇ
おかま:わかるわぁ
たえ:乙女だものねぇぇえ
役者:わかるわぁ
おかま:あら、おかまだらけ。
全員:だっひゃっっはっひゃああ!!!
独白照明、独白。
カレン:人物紹介!
ヒロイン!綾乃小路カレン!
お相手は、白馬の王子、轟万太郎さん。
28歳独身!
とうとう脇役からの脱出!
、、のはずだった、、
光り戻る。
役者:よし、そうと決まったら特訓!
じゃあもう、急遽、俺も出ます!
ロレンスと、乳母!
おかま:できんのそんな事
役者:だてに貧乏役者、やってませんよ。
たえ:あ
役者俺も特訓特訓!がんばりましょう!
支配人:、あ
役者じゃ行きますよ!えいえいおー!
カレン:えいえい、、、、
おカミ
たえ:、、おカミさん!帰ってきただすか!
よっぱらい、
板前
酔客:ほら。
板前:いたいいたい
おかま:、ケンちゃん、、
酔客:ったく、とんだ茶番だ。水割くれよ。
たえ:あいー。
酔客:あーあ。
おかま:あんたたち、金もって逃げたんじゃないの?
板前:夜明け前、駅で待ち合わせまでしたんですけどねー。
おカミさん、
ごめん、ごめんの一点ばり。
カレン:おカミさん、、
何か、かくしてた?
支配人:え
おカミ:、、、あたし、、、ごめん。
今まで、嘘ついててごめん!
ごめん!ごめん!ほんとにごめん!
ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!!
ごめん!
ごめんなさい!
支配人:泣いてたら、わからんって。
おカミ:、、、もう無理なの、、。
全員:、、、、!
おカミ:今年いっぱいで、ここ、無理なの。
役者:え
おかま:、、、、なんでだまってたの、、
おカミ:いえなかったんだもん!
みんなの顔、みるたび、
いおういおうとおもったけど。
いえないんだもん。
酔客:ねぇんだとよ
全員:え
酔客:わかりやすく言えばスッカラカン。
実質、つぶれてんだよここ。
全員:、、え
酔客:金庫においてた権利書みてぇなのは、
見たら笑ったね。
「トイレは奇麗に使ってください」のはり紙だ。
おカミ:ごめんなさいい
板前:バカな話しでしょ?
俺ら、必死に便所のはり紙守ってたんですって。
支配人:いつから。
酔客:半年前だと。
支配人:、、言えよ、それ。
おカミ:だって、、たよりないんだぼん。
支配人:、、はり紙って、、しかも便所の
たえ:笑うか。
おかま:そうね。
板前:僕もいい?
おかま:反省しないの?
たえ:まぁいいまぁいい。
役者:もっかいいえ、もっかい。
支配人:便所の、貼り紙って!
おカミ:うぇえええええええええ
全員:どひゃあああひゃっやあっやっや
カレン:人物紹介。
全員、さわいでいる
カレン:おカミさん。
じょじょに舞台の練習に入る。
カレン:気が強くて
もう時間がないぞと、支配人
カレン:でも優しくて
そろそろお客を入れる頃だ。
カレン:気が回って
かいえんのベルがなった
カレン:でもおっちょこちょい
ひとりづつ減っていく。
カレン:この物語の、ヒロイン。
曲、上がっていく。暗
■カレン
暗の中、セリフ。
おかま:その日のお夏と清十郎、シェークスピアバージョンは
思いのほか受けもよく。見事に、拍手喝采をあびた。
満員御礼。あたしたちは抱き合って喜んだ。
あたしは、
ジュリエットを袖から見て
お芝居の最後には泣いていた。
なんの涙だったのか。
わかんない。
階段の踊り場から、
ステージの方を観ながら。
グラスにウィスキー。たえは日本酒。
おかま:なんだったのかしらねぇ。あれ。
たえ:んー。
おかま:あたし、好きだったんだけどな。ココ。
たえ:わっちも。
おかま:だからあんたどこ出身なのよ。
たえ:わからん。
おかま:わかんないの。
たえ:わしゃ捨て子だもし。
コインロッカーベイベーちゅう奴じゃき
おかま:ああ。どおりで打たれ強いわけだ。
たえ:まーな。
おかま:すきよ。あんた。
たえ:さんきゅう
おかま:素直ね。
たえ:ジュリーさんは?
おかま:あたしは、高校ん時に、女に振られて、おかまになったの。
たえ:ほんと?
おかま:ほんとよぉ。すっごいすきだったんだから。
でもね。振られたのよ。理由ききたい?
たえ:聞きたい。
おかま:女々しい。
たえ:ふはっ
おかま:笑うでしょ?男として言われた最後の言葉。
でもよく考えたら、男だから言われるのよねぇ、、
たえ:恋とか愛とか、無いんじゃろか。
おかま:え?
たえ:みんな、恋とか愛とかで、ボロボロのす。
おかま:ああ。勘之助ちゃんは?
たえ:ガキすぎてな。
おかま:あら。男はみーんなガキなのよ。
たえ:、、いかんのじゃろか。
おかま:ん
たえ:のーみそ、お花畑じゃと。
おかま:、、
さ、いこか。
たえ:ん。
おかま:おせわになりました。
たえ:した。
帰り支度。
おかま:覚えてる?
たえ:ん?
おかま:なんだったのかしらねぇ?アレ。
たえ:え
おかま:きれいだったわねぇ。
まるで妖精。
しかもラストシーンじゃないわよ?
バルコニーから、結婚の約束をするあのシーン。
たえ:ああロミオ、あなたはどーしてロミオなのー
おかま:美しいかったわぁ。
たえ:んー。
おかま:ほれぼれしちゃった。
たえ:どっち?
おかま:、、夜中の。
たえ:終わりの音楽、勝手におわるじゃろか。
ふたり、去り、
曲、ながれ続ける。
■■約束
光り、ロミオとジュリエットの世界へ。
バルコニーのジュリエットを発見するロミオ
舞台からロミオ登場
ロミオ=板前
ロ:、、まて、、
あの窓からさしそめる光りはなんだ、、?
向こうは東、とすればジュリエットは、太陽か。
ジュリエット登場。
ジュリエット=おカミ、
ロ:あなたは僕のもの、おお、ぼくの恋人!
あの人にこの心通じてくれ!
口を開くぞ、いや、なにもいわない。
それでもいい、
あの目が話しかけている。
それに答えようか、大胆すぎるか、、、、
夜空に輝くもっとも美しい二つの星が、
用事があってもどるまで、
あの人の目に、かわりにまたたくよう頼んだのだ。
あの人の目が夜空にあり、二つの星があの顔にあればどうなる?
日光の前のランプのように、
あの頬の輝きが、その星を恥じいらせるだろう。
そして、
夜空にある目は、
空いっぱいに輝く光をあふれさせ、
鳥も朝がきたと思って歌い出すだろう。
、、、
見ろ。
あの人が頬を手にもたせかける。
あの手袋になりたい、
そうすれば、あの頬にふれられる」
ジュ:おおロミオ、ロミオ、どおしてあなたはロミオなの?
お父様と縁を切り、ロミオという名をお捨てになって。
そうすれば、私もキャピュレットの名を捨てます。
、、、
私の敵といってもそれはあなたのお名前だけ。
モンタギューの名をすてても、あなたはあなた。
モンタギューってなに?
手でも足でもない、腕でも顔でもない、人間のからだのどの部分でもない。
だから、別のお名前になって。
名前ってなに?
バラと呼んでいる花を別の名前にしてみても、
美しい香りはそのまま。だから、ロミオというお名前をやめた所で、
あの美しいお姿はそのままのはず。
ロミオ、その名をおすてになって。
あなたとかかわりのないその名を、
すてたかわりに、この私を受け取って。
ロ:受け取ります。
ジ:、、、、、どなた?
夜の暗さに身を隠し、この胸の秘密をお聞きになったのは?
ロ:ぼくが何者か、名前を聞かれてもどうすればいいかわかりません。
僕の名前は、、、聖者よ、われながら憎らしい、というのも、
それはあなたの敵だからです。
書いてあるものならその文字を引き裂いてしまいたい。
ジ:どのようにしてここに?
なんのために?
庭の塀は高くて乗り越えるのは難しいはず。
それにここは、あなたのお身を考えると、
死の危険がひそんでいるのに、、。
ロ:恋の軽い翼であの塀はとびこえました。
石垣などでどうして恋を閉め出せましょう。
恋がなしうることならどんな危険も恋はおかすもの。
この家のものがどうしてぼくをさまたげられましょう。
台本をめくりながら、カレン登場
ジ:優しいロミオ、愛してくださるなら、
心の底からそうおっしゃって。
あまりに早く心を与える女、とお思いになるなら、
顔をしかめ、意地をはり、いやといいましょう。
それでも愛を求めてくださるならば。でなければいや!
、、
カレンをみながら、支配人登場。
ねぇロミオ、私って本当におろかな娘。
だからはすっぱ女とお思いになるかもしれないわね。
でも信じて、うわべだけひかえめに見せる女より、
私の方がずっと真心があることを。
ロ:ぼくは誓います。
あの木々のこずえを銀一色に染める清らかな月にかけて、、
ジ:いけません、月にかけては。
月はひと月ごとに満ちたり欠けたりするもの、
あなたの愛もそのように変わりやすいものになってしまいます。
ロ:では、なんいんかけて誓えば?
ジ:誓いなどなさらないで、、
ロ:光ったという間もなく消えてしまう稲妻にあまりにも似ています。
ジ:この恋のつぼみは、あたたかい恵みの日差しを受けて、
今度お会いするときは美しい花となっていましょう。
おやすみなさい、いとしいかた。
ロ:満たされないぼくをこのままにして行かれるのか?
ジ:どうすればあなたは満足することができますの?
ロ:あなたの愛の誓いを、ぼくの誓いと交換すれば。
ジ:それはお求めになる前にさしあげたわ。
出来ることなら、返していただきたいとは思ったけど。
ロ:返していただきたいですって?
ジ:気前良く、もう一度あなたにさしあげるために。
ジュリエット、ノックに気付く。
ジ:ちょっとお待ちになって、すぐ戻ってきます。
ジュリエット退場。
ロ:ああ、しあわせな、しあわせな夜、夜だからこれはすべて夢だということはあるまいな。
ジュリエット登場
ジ:ほんのひとことで、ロミオ、今度こそお別れします。
もしあなたの愛のお気持ちがまことのものであり、
結婚ということを考えてくださるなら、
明日、あなたのもとへ人を送りますから、ご返事を。
いつ、どこで式をあげるか、知らせてください。
ジュリエット退場
ロ:ああ、ジュリエット。ジュリエット。
僕の、ジュリエット。あの人を思えば思うほど、
帰る足取りが重くなる。
ジュリエット登場
ジ:ロミオ!ロミオ!
ロ:ここにいます。ここに!
ジ:あら、お呼び止めしたわけを忘れてしまったわ
ロ:あなたが思い出すまで、ここにいていいですね?
ジ:忘れたままでいるわ。いつまでも居てくださるように。
あなたといるうれしさだけを思い出しながら。
ロ:いつまでもいます。
いつまでもあなたが忘れているように。
ほかに家があることなど、忘れてしまいながら。
夜が明けてくる
ジ:まもなく朝。あなたをお帰ししなければ。
でも遠くへはいや。いたずら娘が飼う小鳥のように、
少しは飛ばせてあげても、脚にゆわえた絹の糸を引いて、
たちまち連れ戻すことが出来るようにっっしておきたい。
ロ:あなたの小鳥になりたい。
ジ:そうしてあげたい。
けれどかわいがりすぎて死なせるかもしれなくてよ。
ロ:、、、、
ジ:おやすみ、おやすみ、別れは甘く切ないもの。
朝がくるまでおやすみをいい続けていたい。
間
支配人:、、、。
カレン:、、、、、ジュリエット、退場。
そして、ロミオ、
二人の結婚を心に決め、退場。
支配人:、、、
カレン:ありがとうございました!
ほら、
支配人:、、、、、、、、おれ。
カレン:あ。
支配人:、、あの
カレン:あ、いやいや、あの、感動しちゃって。
ロミオとジュリエット。
支配人:、、、ごめん。
カレン:なーにあやまってんですかぁ
ほら、退場退場。
支配人:でも
カレン:いやあ、いい話だなぁロミオとジュリエット!
何度読んでも感動しちゃう。特にこの後!
この後、ロミオは逃げるために仮死状態になる飲んで
死んだみたくなっちゃて、
そんで、それ見たジュリエット勘違いしちゃって
近くにあった短剣で、胸刺して死んじゃうんすよ?
悲劇。悲恋の話しですわぁ〜
結局添い遂げられないのに。
支配人:、、
カレン:添い遂げられないってわかってても
幸せになって欲しいなぁとか。
おもっちゃう。あたしこの本大好き。
支配人:、、ごめん。
カレン:ここも好き「おお、ロミオ!あなたはどうしてロミオなの」
すごい好き「ああ、しあわせな、しあわせな夜、夜だからこれはすべて嘘だという事にはなるまいな」
とか。あ、すみません。
退場退場。ロミオ退場。
支配人:、、
カレン:退場退場!
ロミオ、
結婚を心に決め、退場。
支配人:、、、ごめん!
駆け出す支配人
カレン:万太郎さん!
支配人:!
立ち止まり、階段で止まる支配人。
支配人:え
カレン:、、、「あら、お呼び止めしたわけを、忘れてしまったわ」
支配人:、、、、
支配人、振り切るように退場。
カレン:、、、、、、
「忘れたままでいるわ。いつまでもいてくださるように。
あなたといるうれしさだけを思いだしながら。」
カレン、舞台から降りる。
日記を拾う。
カレン:、、、、
やっぱあたしには似合わないや。
やっぱあたしには無理だや。
あたしの脳味噌お花畑。
恋に恋して恋こがれ。
顔で笑って心で泣いて。
恋する夢見るジュリエット。
さあお立ち合い、寄ってらっさい見てらっさい。
悲恋の脇役、綾乃小路カレンさんの、
だれにも見えないラブストーリーでござーい。
日記を閉じる。
地面に投げつける。
ゆっくりとしゃがみこもうとする
入り口から現われる、おかま、たえ
それに気付き、掃除をはじめる
何も出来ず、みまもる、おかま、たえ
じょじょに暗。
ここから先は
¥ 100
たくさん台本を書いてきましたが、そろそろ色々と人生のあれこれに、それこれされていくのを感じています。サポートいただけると作家としての延命措置となる可能性もございます。 ご奇特な方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いいたします。