天使突抜オコジョ
迷って進めない方
背中押します。
そう書かれた張り紙が街の掲示板に貼り付けられていた。
ここは天使突抜二丁目。
京都には風変わりな名前の土地が多く存在する。その中でもとりわけ目立ってロマンスなのがこの場所だ。
ハムちゃん先生はこの日、西洞院通りを南に向かって歩いていた。
四条通りを過ぎて、もうすぐ五条通りに着きそうな時だった。ものすごいスピードで白い何かが背後から走り去った。
あやしい...
スパイの血が騒いだハムちゃん先生。
どうしても気になって夢中でそれを追いかけた。
その正体はオコジョ。
白いオコジョはこう言う。
あぁ、なんだ人間じゃなくて良かった。
人に見つかったらコンプライアンス違反でこの仕事やめなくちゃ行けないんです。
仕事?
ええ、天使派遣会社から派遣されています。
人間のロマンを壊さぬように
この付近をよく走っています。
むかしむかし、人間がこの辺りに天使突抜なんていう地名をつけてしまったもんだから。
ここに来れば天使がいるんじゃないかって
本当に信じて来る人間がいるんです。
だけどこの辺り何にもないでしょう?
わざわざ来た人をがっかりさせないように
今何か通らなかった?くらいの速度で
人間の背後から突き抜けるんです。
もちろん"突抜"というくらいだから
通り抜けるのでもなく、
ぐり抜けるのでもダメなんです。
なんの迷いもなく突き抜けないと。
ついでにここらを通った人の迷いも
一緒にかっさらって行きます。
京都の街中でたまに見かける
ひょこひょこ走るどうぶつ、オコジョ。
彼らはもしかするとオコジョの姿をした天使なのかもしれません。
迷って迷って決めきれない方
あなたのその選択に幸あれ★