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大葉の天ぷら:自分から働きかけることの大切さ

  天ぷらという料理方法は、素材の味を引き出すのが非常にうまい。その技が最も光っている一品とは、大葉だと思う。あの名脇役である大葉を主役にするのだから。いつもメインの料理を引き立てるために使われている大葉、それが天ぷらになるとどんと構えて、その香ばしさだけで勝負をしている。なんと素晴らしいことか。

 さらには、大葉のあの薄さが、天ぷらという料理方法の美味しさ自体も引き立てているように思う。天ぷらのさくっと感、それが一番伝わる食材もまた大葉だからだ。

 そう考えていくと、天ぷらと大葉は互いにベストコンビなのではないだろうか。

 ベストコンビといえば、中学か高校の卒業文集で、友人と私がベストコンビに選ばれたことがある。たしかにその友人と私はとても仲がよかったし、卒業してしばらく経った今でも仲が良い。

 しかし、その友人とは一度喧嘩をしたことがある。家族や恋人以外とは衝突を避けがちな私が、初めて友人とした喧嘩だったかもしれない。卒業式間近の出来事だった。私がいつも話しかけられるのを待っていることが気になった友人が、私に話しかけるのをぴたっとやめてしまったところ、私から話しかけることもなくいつまでも冷戦状態が続いてしまったのだ。

 私はその友人が、訳もわからず私に怒っているのだと思っていた。いつも話しかけてくれるのに話しかけてくれないのはなぜだろう、と。そしてそのまま、自分から行動を起こせないでいた。

 理由を教えてくれたのはその友人だ。私は、猛烈に反省した。私は、自分から他人に働きかけるということが苦手だったのだ、とその時初めて気がついた。そして、その役をいつも他人任せにしてしまっていたのだ、と。大人になった今、もう一度あの喧嘩を思い出すと、友人のその行動に感謝さえ感じる。大人になると昔以上に、自分から働きかけるということが大切になってくる。

 自分から働きかけなくても仕事の付き合いなどで、ある程度の声はかかるのだが、そこから個人での付き合いへと発展するには、働きかけが必要となるのだ。あの人ともう少し話してみたい、そう思っても、受動的になっていると実現しないことがほとんどだ。

 だからこそ、あの時自分から働きかけるということの大切さに気づかせてくれた友人に感謝している。