チーズ:個性を引き出しあおう
私はチーズが大好きだ。チーズのことは、普通に美味しい料理がとびっきり美味しくなる魔法の食材だと思っている。
たとえばオムライス。それだけでも十分に美味しい食べ物だが、中からじゅわーっとチーズが溢れ出てくると、卵のとろみとチーズが溶け合って絶妙なハーモニーを奏で出す。
たとえばハンバーグ。ハンバーグだけでもたっぷり肉汁ジューシーなのに、チーズINなんてしてしまうと、チーズと肉汁がとろりと溶け出し口の中でうまく絡み合う。
ついついとろりとしたチーズばかりに気を取られていたが、チーズの魅力はそのとろみだけではない。ミートスパゲッティにかけるあの粉チーズもたまらない。チーズをかけなくても成立する料理なのに、どうしても仕上げにチーズを振らなければ気が済まなくなってしまう。
そう、チーズという食材は、それだけでも成立する料理に対して、いつでもとびっきりのプラスアルファを足してくれる。
プラスアルファか……。と、プラスアルファを決してみくびってはならない。プラスアルファというものは、素晴らしい個性によって成り立つものだから。
人生においては、このプラスアルファというものが求められることが多い。個性を出せ、と。就活においてもそうだ。みな黒いスーツをきてぴしっとしているなかで、自分にしかない個性を出せと求められる。他の人となにが違うのか。自分にしかない魅力とは何なのか。
そんなもの、わかるわけがない。自分は自分で、何にも特別などではない。そんな風に思ってしまう。
けれど、個性のない人なんていない。みんな、自分にしかないなにかを持ち合わせているはずだ。それが、何なのかわかっていないだけ。
チーズの場合は、わかっている人がそれを生かすことで個性を光らせることができている。料理においてはすべてそうだ。食材の個性を理解して、生かしてあげることで素敵な一品が出来上がるのだ。
だから、人も同じであって良いと思う。自分で自分のことを理解するのは難しい。身近な人に、自分を理解してくれる人に、その個性を引き出してもらおう。自分はありのままでいれば良いのだ。
その代わり、まわりの人の個性を引き出すお手伝いをしてあげよう。人の個性というのは、案外目につきやすいものだ。この人はこういう人なんだ、そう思ったらその良いところを引き出して、より光らせてあげる。皆がそうやって支え合うことができたら、きっと素敵な世の中になるだろう。