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could be anything #3 レッチリのライブで感じた、自由の美しさ

Facebookで、自分の病状のことを公表してから、たくさんの方にご連絡をいただいています。ありがとうございます。
Zoomで人生相談をしたり、食事をしながらお話をしたりする中で、今後の進路も少しずつ見えてきました。朝のめまいや倦怠感、日中の眠気がずっと続いていますが、それでも状況は良くなってきているように思います。

同時に、知らないだけで実は同じように、うつ病や適応障害を患った経験のある人が周りにたくさんいるということも分かりました。
日本では現在、100万人以上の人がうつ病で治療を受けているそうです。うつ病の生涯有病率は6.7%。つまり、15人に1人はうつ病になる可能性があるわけです。

そんななか、友人の誘いで久しぶりに東京に行ってきました。目的は2つ。今回はそのうちの1つについて書こうと思います。

5月18日(土)の夜、東京ドームで開催されたRed Hot Chili Peppersのライブに行ってきました。
1曲目のCan't StopからアンコールのGive It Awayまで最高の時間でした。

といっても、僕はレッチリに詳しいというわけではなく、なんとなく有名どころは聴いたことがあるという程度。好きなバンドはOasis、Radiohead、The 1975と根っからのUKロック好きです。

ただ今回のライブを観て、「なるほどなあ」と思ったことがあります。

オープニングは、短めのSEが流れた後、メンバーがすたすたと登場して、即興のジャムセッション。そのままの流れで1曲目のCan't Stopへ。
その後も曲間は、メンバーの誰かが即興でフレーズを引いていて、メンバー同士でマイクが拾うか拾わないかくらいの談笑。準備が整ったところで次の曲へ。

レッチリ好きの友人曰く、CD音源と全然違うアレンジを各自がしまくっていたそうです。それでも曲として全然違和感がなく、むしろ技術を見せつけてくるのがすごい。以心伝心というのか、それぞれの息がピッタリ合っていて、即興演奏を盛り込みまくっても、全然崩れない。

僕は高校の時、ギターを弾いていて今回一緒にライブに行った2人を含めてバンドをしていました。レッチリのステージは、なんとなく高校生の頃、小さいスタジオに入って好きなように演奏していた光景を思い起こさせるものでした。
演奏のレベルはとてつもないですが、ド派手な演出やステージセットは特になく、シンプルなステージで、時折談笑したり、曲間に手癖のフレーズを引いたりして、なんとなく息があったタイミングで次の曲を弾く。そういう「バンド小僧」っぽさを感じました。
終わってからも、熱い挨拶などはなく、サクッと「じゃまた!」という感じで颯爽とステージ裏に引き上げていく。ギターのジョン以外60歳を超える大御所バンドですが、なぜか親しみを感じるほどでした。
衣装もベースのフリーの独特な格好以外は、正直バンド好きの高校生の普段着(のなかでも特に気合いの入っていない時の服)でした。これがまたカッコいい。

邦楽では、サカナクションをよく聴きます。彼らのライブは、観客の自分たちも始まる前から終わるまでどことなく緊張感があります。ものすごく作り込まれた演出、こだわりぬかれた音響など、神経質な空間です。そのこだわりの深さがすごくカッコいいのですが、レッチリはあえて言えばその真逆でした。テキトーという意味ではなく、相当こだわりぬかれた一流のチームがつくるステージですが、それを感じさせない

演奏し始めるも、ちょっと違ったようで演奏を中断、笑いながら「もう1回!」とやり直す場面もありました。メンバーが急に弾き語りでデビット・ボウイの曲を歌い出し、急にやめて談笑。そういう場面もありました。
ショーを観ているというよりも、スタジオを覗き見ている感じでした。少なくとも巨大な東京ドームではなく、小さいライブハウス。そのくらいの空気感です。(ただし、技術はえげつないので、ギャップがすごい)
あのラフな感じがカッコいい才能が溢れすぎたバンド少年たちが、今も遊んでいるという雰囲気でした。

完璧に作り込むこだわりのカッコよさがある反面、肩の力を抜いて自由に生きるカッコよさもあるということを、改めて認識したライブでした。
もちろん、これまでに様々な困難を乗り越え、こだわりぬいた音源を制作し、技術を磨くために必死で努力をしてきた。だからこそ、行くところまで行き、突き抜けた結果として、あの軽快さ、気楽さがあるのだと思います。

それにしても、まさに大人の余裕、王者の貫禄を感じたライブでした。その一方で、少年の心を忘れない、とにかく「バンド楽しい!」と4人が通じ合っているのだろうなあと実感しました。

来日前にドラムスのチャドが登場するメッセージ動画が公開されていました。

“Don’t be a square!” 
「つまらない人間になるなよ!」「型にはまるなよ!」
という意味です。

Take it easy. 肩の力を抜いて気楽に。

観に行けてよかった。偶然ですが、出会うべき時に、出会えたのかもしれません。


ヘッダー写真は、ライブ開始前の東京ドームの入り口。

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