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Vol.02 海のゴミ問題とへちまが繋ぐもの

へちまスポンジの使用は、海へ流れ出るマイクロプラスチックの削減に繋がります。そのような接点から、浜松へちまプロジェクトには海に関係の深い方も参加されています。今回は、このプロジェクトの「つかい隊」に登録してくださっている、プロサーファーの三浦涼(みうらりょう)さんと、元プロサーファーの森本直波(もりもとなおみ)さんに、遠州灘沿岸におけるゴミ問題を中心にお話を伺いました。

写真左:森本直波さん 写真右:三浦涼さん

森本直波さん(以下、直波さん)は、新潟県出身で現在は浜松市在住でいらっしゃいます。2008年に初代レディースプロロングボーダーに認定されており、JPSAの公式戦やコンテストのエキシビジョンへの参加、国内外へのサーフトリップにも取り組まれ、現在はサーフィンスクールやヨガのインストラクターをされています。

写真提供:直波さん

三浦涼さん(以下、涼さん)は、浜松市出身で現在も浜松市在住。7歳の頃からサーフィンを始め、2015年にプロサーファーとなり、現在は浜松を拠点としながら日本のプロツアーを中心に活動されています。またツアー以外は浜松でサーフィンレッスンやマリンスポーツイベント、YouTube等で、サーフィンの魅力を伝えておられます。

写真提供:涼さん

ホームグラウンドを共にするお二人は二十年来のお付き合い。涼さんがサーフィンを始めた頃は、直波さんがプロサーファーの第一線で活躍されており、その背中を見ながら海を知り、サーフィンの技術を磨き、社会を学んだと言います。毎日のように海で顔をあわせ、大人・子供が長い時間を過ごすサーフィンの世界ではコミュニティが形成されており、涼さんと直波さんも家族のような存在です。



1.中田島砂丘の砂浜におけるゴミ問題

砂浜に捨てられるゴミの現状

涼さんと直波さんに案内され、中田島砂丘を訪れた私たち。駐車場から砂浜を海へと進むと、すぐに足元にゴミを発見しました。

ストローや歯間ブラシ、ビニール片など、貝殻を探すよりも簡単に見つかる生活ゴミ

涼さん:
普段海に来る僕らがゴミを捨てることはまずないんです。普段海に来ない方達がゴミを捨てる方が多い。今の時期は(取材時:5月中旬)浜松まつりの後でゴミが増えがち。夏は花火やBBQなどを楽しむ人達のゴミ。そのあとは台風の後などが多いですね。

取材時に10分程度見回るだけで、これほどのゴミが見つかりました
過去に見られたロープやプラゴミ、夏の早朝に見られる花火の残骸など(写真提供:直波さん、涼さん)
中田島砂丘には、一定間隔でゴミ箱が設置されています。これは特定非営利活動法人サンクチュアリエヌピーオー様によるマイクロプラスチックゼロプロジェクト事業の一環で、プラスチックゴミとマイクロプラスチックの回収・啓発活動により、野生生物の誤飲防止を主な目的に設置されています。砂浜と駐車場・土手の通路との間にあるこのゴミ箱に捨てるだけでも、放置されるゴミは随分減るでしょう。

ONE HAND BEACH CLEAN という取り組み

「海から上がったら、板を持っていないほうの手で持てるくらいのゴミを拾おう」
ONE HAND BEACH CLEANは、国内外のサーファー達の中で広がっている取り組みで、各地の団体が主導しており、サーフショップにポスターを貼るなどして普及・啓発が進んでいます。

直波さん:
私たちが10〜20代の頃は、ゴミ問題を考える機会は少なかったけれど、今、20代のサーファー達がゴミ問題を身近に考え、実際に行動している様を見ていると嬉しいですね。

涼さん:
ゴミ問題に触れる機会や、耳にする機会が増えたんですよ。忠告してくれたり、話をしてくれる大人も多くて、早い段階から気づくことができました。

「毎日海に来ていると、ゴミが目につくんですよ。」とおっしゃるおふたり

取材をしている際に、砂浜のゴミを拾う方達をお見かけしました。浜松市主催のビーチクリーン運動で、個人や会社単位でエントリーをし、活動されているとのことでした。そのほかにも、地元企業や海洋関係の企業様主催の清掃作業もあるので、関心のある方は、ぜひ調べてみてください。

この日は、5月第二日曜日に行われる浜松市主催の「ウェルカメクリーン作戦」実施日でした。遠州灘海岸14地点で行われるもので、アカウミガメが安心して産卵できる環境を整えることを目標に掲げるクリーン活動です

2.海に親しむことで繋がる未来

海は危険なものなのか?

今回訪れた中田島砂丘は遊泳禁止区域であり、サーファーや釣り人以外は海に入らない場所。子供の頃から”危ないから近づくな”と言われる場所で、地元では危ない場所というイメージを持っている人も多いと聞きます。

海の状況について語るおふたり

涼さん:
自然ですから、コンディションによっては危ない時もあります。でも、危険かどうかを見極める知見があるか、またはそれを伝えてくれる人がいれば、危なくありません。サーフィンをしていて、溺れた人を助けたことは何度かありますが、多くは大人になってからサーフィンを始められて、この辺りの海に詳しくない方です。教えてくれる人がいない、映像だけで全てを把握したつもりになっている、そのような方ほど事故に巻き込まれています。
僕たちは子どもの頃から、この海に触れ合っているので、潮の流れもわかるし、穏やかそうに見えても入ってはいけない時があることも知っているのですが・・・。

状況を見極めて自然と仲良くなれば、海は怖くない
正しく向き合えば、海は楽しい!

サーフィンスクールを主宰する想い

涼さんは浜松でサーフィンスクールを開校し、子どもたちにサーフィンを教えています。そこにはご自身の経験から、小さな頃から日常的に海に触れてほしいという想いがあります。

涼さん:
「海は危ない」と言うかたもいますが、普段から触れ合い、海を知っていれば、怖くはないんですよ。いざ事故や災害に巻き込まれてしまった時も、知っていれば防げる被害はたくさんあります。だから僕は、子どもだけではなくて、大人も一緒になって、幅広い年代の方に海に来てほしいんです。「サーフィン」に限らず、海に触れる機会をつくりたい。

いつも楽しそうに話す涼さんからは、熱い想いと共に様々なアイディアが出てきます

サーフィンスクールでは、いつも海に入れるとは限りませんが、それも学びの機会。ビーチフラッグで遊んだり、ビーチクリーンをしたり、ヨガをしたりと、海に入らなくても楽しめるイベントを、仲間の協力を仰ぎながら模索していると涼さんは続けます。

涼さん:
自分にとって海が身近な存在になれば、ゴミも捨てないはずです。自分ごとになりますからね。だから、たくさん海に足を運んでもらう機会をつくりたい。
それに、サーフィンの世界はコミュニティがあるんですよ。そういうコミュニティに属すると、周りの目があるから、ゴミを捨てることもできなくなります笑

「コミュニティに属することも大切だよね」と、言葉を重ねる直波さん

海にゴミを捨てる人が少なくなれば、砂浜や海中に散見される生活ゴミも減ります。それには、海を身近に感じること。海と仲良くなり、海を好きになること。好きな場所は綺麗であってほしいから、ゴミが目に入るし、拾いたくなる。その循環が、「海に足を運ぶこと」から始まるのは、目から鱗でした。

なお、涼さんが主宰されるサーフィンスクールについては下記をご覧ください。


3.ヘチマスポンジを使うこと

場所を変え、浜松へちまプロジェクトのブースにてお話を伺いました

直波さんは昔からへちまスポンジをご存知で、このへちまプロジェクトにもいち早く賛同してくださいました。そして、家族のように慕う直波さんから紹介されて、涼さんもこのスポンジを使うようになったそう。

「このへちまスポンジは手触りがいいんだよね〜」と直波さん

涼さん:
僕はこのプロジェクトに出会うまで、へちまからスポンジができるとは知りませんでした。直波さんから、へちまスポンジを使うことでマイクロプラスチックの削減に役立つと知り、僕たちの海での取り組みと繋がると思いました。
食器を洗うことは毎日のことなので、そこでへちまのスポンジを使うことは「誰もが簡単にできる」ことで、使うことで意識がなかった人にも「意識が生まれる」と思います。意識があるのとないのとでは、全然違いますからね。

直波さん:
そうなんです。へちまスポンジを使うことで、自分の意識が変わるかもしれないと思ったんです。
プラスチックの便利さ、手軽さに慣れてしまっていることにハッとして、気をつけようと思いました。毎日へちまスポンジを使うことで、その想いに日常的に触れられるし、継続できるし、意識が変わってきました。マイボトルにしよう、とか、手づくりのものを意識しよう、とか。

浜松へちまプロジェクトのブースにて

特別なものを続けることはエネルギーを使いますが、日頃から触れ合い、それが日常になることでストレスは少なくなり、少しずつ意識の変化に繋がっていく。それは、海に触れ合う機会を増やすことで海の環境を守ろうとしているおふたりの活動と通じるものがあるのだと知りました。

何事も、「自分ごと」にすることが変化することへの第一歩ですね。

直波さん、涼さん、お話を聞かせてくださりありがとうございました!


お話し:
森本直波さん
三浦涼さん

浜松へちま・ミライ
Text,Photo Emiko MATSUO
Interview M.Gomyo
Edit N.Otake
※提供いただいた写真は写真下のキャプションに記載

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