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SansanでSaaSを色んな角度で見ていたらSales Techで起業したくなった理由

私が経営するimmedioは、マーケティングで獲得したリードを効率よく商談化するサービスを提供しているのですが、知人やVCには「なんでSales Techで起業したの?」と聞かれることがあります。Sales Techはどんどん新しいサービスが出てくる領域である一方、事業領域として魅力的でないという見方もあるようです。

  • Horizontalで、CRMや企業データと言った大きなテーマは出尽くしている

  • 新しい領域が出てきても、既存事業者が進出して早くRed Ocean化しがち

  • PLGのようにボトムアップで広げていくのが難しい

そんな声を聞きながらも、私がこの領域にコミットしているのは何故なのか。幾つかある理由の多くがSansan時代の原体験によるものです。ここでは、自分にとって一番大きい理由を3つ書いてみたいと思います。

SaaS営業においては「売る=価値の創造」

私は2020年にSansanでSMB営業をしていました。私はこれまでBizDevよりの仕事が多く、「営業」という役割は久しぶりの経験でした。苦労しながらも何社かに買って頂けたのですが、その時にこれって実は凄いことなんじゃないかと思ったんです。

  • SaaSの粗利率は非常に高く、営業が作った売上は8割方会社にとって利益である

  • 顧客はその費用の数倍のROIを見越して購入しており、しっかりCSすれば顧客はその利益を享受する

  • 競合リプレイスよりは新規が圧倒的に多く、これまで社会に存在しなかった売上である

SaaS時価総額Top15社の粗利率

私が就活していた頃「営業」に持っていたイメージは、競合と常にコンペしていて、価格と顧客との関係性で受注をとっていく行為でした。市場と在庫が存在し、ものが売れることによる関係者の利益が限定的な世界。

SaaS営業が私がイメージする「営業」と全く違うと分かった時、周りの営業メンバーに対する強い尊敬を抱きました。一方で彼らの日常業務を見る、と多数の商談と次の商談の調整・準備等で忙殺されており、「価値の創造主」の時間の使い方がもっと効率的に出来ないか、と思う契機にもなりました。

SaaS企業の成長は営業の人数と比例する

2019年に私が入社した当初、Sansanの最大の課題の1つが営業の採用でした。SaaSの業界ではT2D3といった成長目標の指標がありますが、たとえばD3の3年間は成長率が同じ100%でも、成長の絶対額は毎年2倍になります。

  • T1: ARR1→3億円(2億円成長)

  • T2: ARR3→9億円(6億円成長)

  • D1: ARR9→18億円(9億円成長)

  • D2: ARR18→36億円(18億円成長)

  • D3: ARR36→72億円(36億円成長)

売上成長額は「営業1人あたり獲得売上」x「営業の人数」で決まるのですが、前者を上げていくのは極めて難しい。エンプラシフトや料金変更で上げられても、年間20%上がることは無いと思います。そうすると成長の源泉は殆どが営業の人数になります。

仮にT2D3を順調に駆け上がる企業がいて、1人の営業が月に30万円のMRRを獲得するとしたら、各期末の営業人数は以下のようなイメージになります(実際には戦力化までのランプタイムや離職率も考慮しなければ行けないので、採用人数はもっと多くなる)。

T2D3の営業人数イメージ

この貴重な成長の資源である営業パーソン達が、より効率的に時間を使える、より本質的な業務に専念できるためのツールが作れるとしたら、それには間違いなく価値があると思っています。

買い手の目線で見た時の伸びしろ

Sansanでは自分がマネジメントとして幾つかのSaaSツールの購買検討をする機会が有りました。業務効率化の観点で見つけたあるSaaSツールの問合せフォームに、デモと料金説明をお願いしたい旨書いて送信したところ、その日は返信なし。翌日インサイドセールスの方からお電話頂くも、デモの候補日程が1週間以上先で、相談しようと思っていた上司との1-1に間に合わない。再度調整をお願いして、なんとか週明けで早めのデモが設定できました。

B2Bの購買体験としては極めて一般的で、非は無い対応だと思うのですが、普段のB2Cでの購買体験(Amazonや価格.comなど)とは大きなギャップが有るなと思いました。

  • 1クリックで購入できて翌日届き、返品も可能

  • レビューを見れば商品の良いところ、悪いところがすぐに分かる

  • 他社製品と横並びで比較でき、何と比較すべきかもサイトが教えてくれる

製品の性質上B2Bで上記を再現するのは難しいですが、例えば問合せ直後に電話やチャットで検討軸の相談が出来ていればどうだったか、デモを週内に入れてもらって週末じっくり自分で考えられればどうだったか、などを考えると改善できるスペースは多くあるように感じました。

USの調査データを見ているとZ世代(1990年代後半以降の生まれ)はB2Bでも完全セルフサーブを望んでいる人が4割近いとされており、B2BはB2Cとは違うといつまでも言っていてはいけないと思っています。

B2B購買を完全にセルフサーブで行いたい人の割合・世代別(TrustRadius調べ)

実際にSales Techで起業してみて

immedioを創業して2年ですが、これまで数百社の営業責任者やマーケ責任者の方とお話して来ました。上記であげたような課題は、Sansanに限らずSaaS業界全体に概ね通じるなと感じています。もっというと、B2Bの中でも人材業界など営業手法がSaaSに近いなと思うところが幾つかあったり、B2Cでも不動産や教育などLTVが高いところは営業の形がB2Bに近いなと感じていて、裾野は広そうだなと思っています。

むしろ広すぎて、なかなかSaaS以外の業界で解像度を上げきれていないのが目下の課題。ここまで少数精鋭でやっていたので、ここからは採用を加速して自分たち自身でT2D3の営業組織作りという課題に向き合ってみたいと考えています。

新しいSales Techで、営業による「価値の創造」とグロース企業の爆速成長を支えてみたい、次の世代に向けた新しい購買の形を創ってみたい、という方、immedioでお待ちしています!