妊婦死亡を判例変更と中絶禁止法のせいだと主張するハリス陣営・民主党の我田引水


基本的にトランプ候補を攻撃できれば何だっていいという姿勢のハリスHarris陣営と民主党Demsなので、中絶の自由が制限されたことがあたかも死亡原因であるかのように責任所在をすり替える異常さが際立っている。



同州が中絶を規制していなければ防げたとし、共和党候補トランプ前大統領を非難した。
米調査報道機関のプロパブリカは16日、ジョージア州で少なくとも2人の女性が中絶関連の医療を受けられずに死亡していると報じた。
プロパブリカが報じた州委員会の報告書によると、アンバー・ニコル・サーマンさん(28)は2022年8月に中絶薬を服用した際に合併症を発症し死亡。報告書は「アトランタ郊外の彼女の病院には治療に十分な設備が整っていたが、深刻な感染症に苦しんだ」とし、サーマンさんの死は「予防可能」だったと結論付けた。
ハリス氏は連邦最高裁が22年に覆したロー対ウェイド(1973年の人工妊娠中絶の権利を認めた判決)に言及し、「ローが覆された際にわれわれが恐れていたことが起きた」と指摘。「トランプ氏の行動の結果だ」と非難した。

ip.reuter.com   


経過が詳しく分からないが、手術を受けずに中絶薬の内服後に重篤な合併症となり、その後「深刻な感染症」で片づけられたようである。死因は感染死、という意味だ。これが奇妙ではある。

その事と、連邦最高裁の判例変更がどう結びつくのか?
死亡原因が感染死なのに?
ありもしない強引なこじつけとか、副作用(薬害)を隠蔽しようとする意図で攻撃対象を「中絶禁止のジョージアGA州法」にして、目眩ましを仕掛けてきたのでは?


他の記事も探してみた。


以下に一部引用

Thurman, who was 28, waited for a potential pause of the law, but around the ninth week of her pregnancy, she drove to North Carolina with her best friend Ricaria Baker to receive care. When they arrived at the clinic, it was packed with women from other states in similar situations. Thurman was offered an abortion through FDA-approved mifepristone and misoprostol pills.
Then, days later, Thurman started experiencing complications.
(中略)
Thurman required a D&C, a procedure during which leftover fetal tissue is removed from the body — and helps treat sepsis. The clinic she visited in North Carolina was a four-hour drive and Thurman’s condition worsened. On Aug. 18, she vomited blood and passed out before being transported to Piedmont Henry Hospital in Stockbridge, GA.
(中略)
Thurman was diagnosed with “acute severe sepsis,” according to ProPublica. Yet, doctors delayed the removal of the remaining fetal tissue. Instead, they put h
er on Levophed, a blood pressure medication that put her at risk for amputation. It wasn’t until 20 hours later that doctors took Thurman to the operating room, where she died.

blavity .com  


基礎的なデータや記録が分からないので、記事から考えるしかないが、一応素人見解を書いておきたい。


記事からすると、順に

1;妊娠9w頃に妊娠を認識し6wを過ぎていた為、隣州のNC州の病院を受診(車で4時間程度と離れている)

2;NCの病院で妊娠中絶薬 " mifepristone " と " misoprostol " を処方され内服

3;服用後の数日間、合併症に苦しむ

4;NC州の処方病院は遠いので行けず、容態悪化し吐血と意識消失でGA州内の病院に搬送された

5;重症感染症(敗血症)の場合、胎児の摘出手術(D&C)が必要だったが、GA州内では禁止行為だった為、処置として " Levophed " の投与が選択された。

6;容体悪化で20時間後、オペ室に緊急搬送したが、その場で死亡


当方の大雑把な理解で言えば、こういう経過かなと思います。
まず患者背景として、20代黒人のシングルマザーということで、恐らく所得水準が低く医療保険のカバー率も低いのではないか、ということがあります。

すなわち、

・基本的に病院受診を避ける傾向がある=州内であろうとギリギリまで受診を避けようとする
(=多分、9wまで中絶薬を飲まなかったのは、妊娠でなければいいと願っていたとか、生理不順だと思って妊娠に気付けなかった可能性がある)

・D&Cのような手術を元から回避しようとする動機がある、なるべくピルの内服でどうにかしようとする

なので、仮にGA州法の規制が20wとかまで中絶が認められていたとしても、内服薬の副作用で重篤な状況に陥る結果は同様だったかもしれない、ということです。


以下に、当方の思いつく疑問点を挙げてみます。

2;に対して

中絶薬を2剤処方されているが、その合併症が重篤だったなら、それが死因との因果関係を有するのでは?

例えば、過剰服用により2剤の増強効果が生じて、子宮出血が大量だったとか子宮破裂といった事態が生じた可能性、です。それか医師から単剤の内服という注意事項を守っていたのに、最初に服用した薬剤の副作用により大量出血した可能性ですね。

実際、4;の如く、大量出血と意識消失で救急搬送されたわけですよね?


5;に対して

救急搬送時の診断が、重症の急性敗血症だったそうだが、その第1選択薬でノルアドレナリン(ノルエピネフリン)系薬剤を投与したまま、20時間も待つものなのか?

敗血症なんだから、普通は広域スペクトルのペニシリン系抗菌薬とかを使うのでは?

また、末梢が冷たくなり蒼白みたいな感じの場合、ボリューム確保で血圧維持に努めると思うのだが、何故か末梢血管収縮薬のノルアドを入れてるんですよね。

もしも、子宮の動脈性血管の収縮を目的=胎児を虚血に至らしめ死亡させる、又は子宮出血が酷くて出血量を減らそうとして血管収縮薬を入れた、とかなら、敗血症が理由だったとも思えないのですよね。


GA州法で6wを超えた胎児は中絶禁止だとしても、

・投与された中絶薬の効果で子宮内の胎児が既に死亡しており
・その壊死組織などの残滓が感染源となっている

状態なのであれば、死亡胎児は人権・人格権が存在しないのであるから、除去手術等の処置が「州法に違反する」とは到底考えられないのでは。


これらのことを考えると、想像される展開としては、

患者本人の支払能力が乏しく、病院受診を回避的であり、高額費用のかかるオペは更に拒否する傾向にあった。そして中絶薬で済まそうとしたが、その重篤な副作用により大量出血に陥り(=意識消失、大量吐血)、出血性ショックに近い状況となった。
救急搬送先では本人意思確認が取れず(意識消失の為)、医療保険も乏しいと判断され、積極的治療は回避され、胎児の生死も検索しないまま、一応ノルアドを投与して様子見となった。
大量出血後ということもあり循環血液量の大幅減少と末梢血管収縮による血圧急低下が回復できず、死亡転帰となったのでは。

というようなことですね。

搬送先のGA州の病院では、中絶薬を2剤服用した後だったこととか、知っていたのかどうか。「妊娠中絶をしようとしていた」話だけ聞くと前医の状況とか不明だし、エコーとか心音聴取とか、お金がかかるから止めてとか言われるかもしれないし。

敗血症によるショックだと思うなら、せめて抗菌剤の投与とか、デブライドメントとか、当初から実行するのでは?


医療側の対応がどうだったのか、というのは分かりかねるが、少なくともハリス副大統領の言う「連邦最高裁の判例変更のせいだ、GA州法やトランプ候補の発言のせいで患者が死んだ」というのは、何らの繋がりも見られない難癖レベルの暴論である。


逆に、製薬会社や関係医療機関の「不都合な情報(過誤、ミス、副作用など)」を隠蔽するべく、そのような運動を展開しているのではないかと疑わしくなる。


経過から見れば、出血性のショック症状を疑うのが普通で、敗血症を示すような血液検査所見などがあるのかもしれないが、それで何故20時間以上も抗菌薬を入れずに対応したのか、疑問が湧くのは普通だと思う。


敗血症性のショックなのに、他のカテコラミン(ドーパミン、ドブタミン)併用も無しでノルアドだけ入れたというのも、どういうことなのかなとか不思議に思いませんか?
感染を示す炎症所見が強かったのかもしれないが、それも子宮出血で腹腔内出血が溜まるなどして、急性腹膜炎とかだったかもしれないし。

大量吐血だったのだから、普通は消化管系の出血がまず疑われるわけでしょう?貧困ゆえの病院受診を我慢し過ぎて、腸管穿孔を来していたなら、子宮出血と炎症症状(腹膜炎+感染症)、それに大量吐血は整合的なのでは?

それで20時間超もノルアド投与だけ、って、通常の医療処置だと思いますか?


恐らく発端は中絶薬による子宮出血とか子宮周囲の壊死層で、カネがない人間は痛みに耐えるしかないということになるし、それを我慢し過ぎて穿孔を生じる(口から血液を大量吐血する現象に一致)と腹腔内が血液と細菌汚染でドロドロってなるわけで。

死亡胎児の摘出時期が6wか9wかの違いで生命予後が変化したものではなく、中絶薬内服後に子宮出血か子宮外妊娠破裂のような病態に陥った可能性を疑うべきなのでは?


ま、いくら推測を述べた所で、実際の証拠なりカルテや所見などは精査されたのでしょうから、当方にはどうしようもないわけですが。


それでも、決定的におかしい、と言えるのは、ハリスの「最高裁のRoe v. Wade 判例変更のせいだ」説である。経過から見て、何らの関連性も見出せない。

遠い隣のNC州に行かねばならなかったから、が理由などではなく、受診費用が高額過ぎて貧困層には払えないからこその、副作用によって生じた重大な病状(不利益)をひたすら耐えて我慢するしかない、という医療環境、州内病院の受診後にさえ適切な治療が受けられなかった可能性が本当の理由なのではないのか。


残念な結果だが、これが恐るべき資本主義社会のもたらす「最高の医療」だということである。

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