福島原発の「汚染水」と「処理水」について歴史改竄?



記憶が薄れる頃になると、マズイ歴史を隠蔽しようという動きでも出るのだろうか?()


少し気になるので、メモがてら書いておきますね。
まず、発端となったのがこちら。



確かに勉強になりますね(笑)。原子力ムラ連中にとっては「都合のいい言説」を並べる習性については。ただ、事実関係について、当方なりの解釈を少々書いておきたい。


1)「ALPS処理水」の定義厳格化とは、歴史の事後改変に匹敵している


根本的な間違いだと思われるのが、この記述だ。件のスライドや学会発表を調べてないが、東電(経産省)側にとって都合のいい説明だとしか思われない。

21年4月以前に言っていた「処理水」や「ALPS処理水」とは、

「とりあえず一度は核種除去装置(概ねALPSのことだw)を通した水」のことを指しており、放射線量が環境基準の1倍以下という水ではなく、高濃度汚染水をタンクに貯めた水全部がそうだった。

それを、どうしても海洋放出したいから、「トリチウム水」とか呼び方を変えて、いよいよ海洋放出を実現する為の説得工作として新「ALPS処理水」の定義が従来の呼称から変更されたのである。それ以前は高濃度のタンク水をも「処理水」であるかのように装っていたが、高濃度汚染水が貯蔵されていることが世間に知られたので改めただけだろうに。


参考:
2018年エネ庁の記事

『現場で進む、汚染水との戦い~漏らさない・近づけない・取り除く~』

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/osensui.html


2021年4月13日

経産省のALPS処理水の定義の変更HP

https://www.meti.go.jp/press/2021/04/20210413001/20210413001.html


過去に発生した浄化装置の不具合や、汚染水が周辺地域に与える影響を急ぎ低減させるための処理量を優先した浄化処理等が原因で、現在、タンクに貯蔵されている水の約7割には、トリチウム以外にも規制基準値以上の放射性物質が残っています
4月13日に決定した基本方針において、ALPS処理水の処分の際には、2次処理や希釈によって、トリチウムを含む放射性物質に関する規制基準を大幅に下回ることを確認し、安全性を確保することとしていますが、上記の経緯から、規制基準値を超える放射性物質を含む水、あるいは汚染水を環境中に放出するとの誤解が一部にあります。
そうした誤解に基づく風評被害を防止するため、今後は、「トリチウム以外の核種について、環境放出の際の規制基準を満たす水」のみを「ALPS処理水」と呼称することとします。

経済産業省 ALPS処理水の定義の変更


簡単に言えば21年4月までは、東電も経産省・エネ庁も、「ALPS処理水」とは2次処理や希釈(環境基準以下の濃度)をする前のタンク貯蔵水を全て含めて処理水と呼んでいたんじゃないか。

これはマスコミやネット言説のせいではないぞ?


2)「汚染水は飲める」と主張していたのは、原発推進勢だが?


例えば池田信夫が「汚染水は飲める」と2015年時点から断言していたぞ?


そもそもALPS処理水のタンク貯蔵の理由がない、とまで攻撃していたんだが?
これは定義厳格化以前の「汚染水」を指して言うのは確実であり、既にALPS(一次)処理したもので飲んでもWHO基準値以下だから安全と宣言していたのだよ。

何故そのような主張になるかと言えば、東電や政府経産省の説明が、「ALPS処理」してあるから「核種はトリチウム以外全て除去されている」かのような幻想を抱かせる説明をしてきた、ということだ。

だが、現実の処理水とは、核種まみれの放射性物質が環境基準の数十、数百数万倍のオーダーで汚染された水をタンクに貯蔵していたのだろ。それを隠蔽してきたのは東電や経産省だろ?










参考:

https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/pdf/018_00_01.pdf



ALPS 処理水の表記については、特段の断りがない場合には、トリチウ ムを除き告示濃度比総和 1 未満の ALPS 処理水を「ALPS 処理水」とし、十分処理されていない処理途中の ALPS 処理水を「ALPS 処理水(告示比総和 1 以上)」とし、この二つ(ALPS 処理水と ALPS 処理水 (告示比総和1以上))を併せて指す場合は「ALPS 処理水*」とすることとする。

20年2月10日 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会 報告書


定義の厳格化以前には、役所内部ですら呼び方は定まっていないことは明白だろうに。「ALPS処理水」にも放射性物質の汚染具合が色々とあった、ということは確実だぞ?






また、19年当時にも「飲める」汚染水(定義厳格化前w)を大阪湾に投棄してもいい、というような発言を当時の松井市長が行って大問題になっただろう?



原発汚染水処理「受け入れ余地ある」』と書かれているぞ?

19年当時の一般人(専門外の政治家)の認識でも、日経新聞記者・編集者レベルでも、「汚染水」の処理を海洋投棄するかどうか、という議論になっており、そのように呼称することも普通に行われていた、ということだ。


大体、一般人がALPS処理水には3種類もあって、放射性物質の濃度が数万倍とかのタンク貯蔵水として存在してるとか、知る由もなかったわけだろ?だって東電が隠蔽して、説明をしてこなかったから、だ。


なのに、二言目には「海に棄てる、汚染水は安全で飲める」としか言ってこなかった。それは、情報隠蔽とか印象操作のようなものであって、混同させるとかではなく、事実を公表せず「ALPS処理した水は全部飲める」かのように偽装してたからこそ、池田信夫や橋下徹などが「飲める」ことだけ主張してたんだろう?


だからこそ、当方は19年当時の彼らの主張する通り、生活水に使ってくれと要望したんだが?
安全なんだから実際にやってみろ、と言っても、実行できなかったのは何故なのか?

その理由を未だ誰も説明してないが?



この時点ですら、東電は「(ALPS)処理水」とは、環境基準値の1倍以下に限らず数百倍もの汚染水をも含むことを一言も言ってなかったんだぞ?

ただ「薄めて流す」としか言ってない。


19年当時、飲めるだの海洋投棄しろだの積極的に推進していた維新の言い分を見ても、産経新聞でさえ「希釈すれば放出可能」とだけ言っており、ALPS処理水がまるで完全にキレイであるかのような誤解を与えていたも同然だった。



あたかも「トリチウム水」=「ALPS処理水」であるかのような錯覚を与え、それはタンク貯蔵水が全部基準値以下の水であるかのように装って、事実を正確に説明してなかった東電や経産省にこそ問題があったとしか思えない。



3)反対派(やマスコミ)の運動により海洋投棄を阻止できていたわけではない


いよいよ海洋投棄の実行に移そうか、という段階になって、初めて東電や経産省が実は「ALPS処理水は、全部がキレイなのではなく、7割は高濃度汚染水のまんまである」ということを公表するに至った。

コロナ騒動のドサクサ紛れでw
20年7月時点では、タンクの中身を区分して説明するようになっていた。これは「ALPS処理水の定義厳格化」前の話であり、その後に海洋投棄が正当なんだと強弁できるようにするべく、定義を統一的にしていったのが翌21年4月ということだろう。


20年7月の経産省のALPS処理水(海洋投棄)に関する説明がこちら

https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/397534.pdf


そして、経産省の説明にある通り、16年6月までは「トリチウム水タスクフォース」が、その後引き継いで「ALPS小委員会」が20年2月まで議論を行っていたわけで、専門家の検討及び議論が続いていたので「海洋投棄の実行」には至らなかっただけである。

簡単に言えば、専門家らによる「お墨付き」となるべく結論が得られていなかった、というのが表向きの体裁なわけだろ?

これは漁協が反対しようが、原発反対や海洋投棄反対の環境団体などが運動しようが、反原発的傾向のマスコミの論調が不正確だからとか、全然関係ない話だろうに。

反対派の運動が海洋投棄を阻止していたのではなく、規制庁たる所管の経産省が専門家から結論が得られておらず、IAEAの評価にかける前段階の時点まで到達してなかったから、ということでしかない。


最初のマスコミ報道を指弾する?学会発表だか何だか分からんが、責任転嫁としか見えない部分は相当あるな、ということだ。

再掲


偏向してるのは、単に新聞の記述なのではなく、事実関係を調べる能力に欠ける連中の主張なのでは?(笑)

事実を正確に説明してこなかったのは、東電や経産省の責任であり、それを政策実施の近くになってから情報開示するようになり、「ALPS処理水」と従前から呼称してきたタンク貯蔵水は、実際には「7割が高濃度汚染水のまんまだった」と判明したんだろうが。


当方は長らく「汚染水」と書いてきたわけだが、1次処理水(=19年当時のALPS処理水)を飲めると豪語してた連中は未だ一滴たりとも飲んでないので、嘘吐きはどっちなのかと思っているよ。


混同させたのはマスコミじゃない。
東電や原発擁護・推進派の無知無能の輩が「安全神話」を喧伝した結果だろ?

それが証拠に、15年の池田信夫の記事で「汚染水は飲める」と豪語してただろうに。その程度のポンコツ理解でしかなく、現実や実態を完全無視してたのは、原発擁護派だったんだろ?


その上、この期に及んで「汚染水」の誤解を言ったのが反対派(や朝日や東京新聞)の言説だったかのような歴史改竄や、断罪と印象操作をやってきてるということかな?


事実関係の把握がきちんとできない連中が、後知恵(19年以前には存在してなかった「処理途上水」と「ALPS処理水」という区分がまさにソレ)で原発擁護派にとって都合よく組み立てた話ということで、確かに勉強にはなったかもな。

大変、卑怯な論説を提示する手法を知る、という点だけにおいては。



追加だが、2018年当時の記述で、東電の言うタンクに貯蔵してある「処理水」があたかも「トリチウム水」のことであるかのように錯覚させる言説が広まっていたことが窺われる。


https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20180620.html


注釈で分かるのは
『ここでの処理水には、ALPSでの浄化処理後の水に加えて、今後ALPSで浄化予定のストロンチウム処理水なども含む』とだけ。

読んでる人の多くは、「トリチウム水」がタンクに大量に貯められてるんだな、としか思わないんじゃないか?



あと、19年8月8日のエネ庁の記事

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/osensui2019.html


『発生した汚染水については、多核種除去設備「ALPS(アルプス)」と呼ばれる設備などを使って浄化してリスクを下げた後、「ALPS処理水」として敷地内タンクに保管』

誰が読んでもタンクに保管されてる処理水は「汚染水を処理」したものであり、まさかタンク保存の「ALPS処理水」とやらが高濃度に汚染された処理水が7割も占めているとは思わないんじゃないか?

国民に事実を告げず、先に騙していたのは東電や経産省の方であろう?


また、輸入制限を課された台湾や韓国でも、21年時点では「汚染水」流入という認識であったことが窺われる。



韓国の海洋水産部は4月13日、「福島原発汚染水(注1)の海洋放出に関する海洋水産対策-海洋水産部、汚染水流入監視および水産物安全管理を重点的に推進-」を発表した。対策の概要は以下のとおり。
(1)全国の沿岸海域に対する放射性物質の監視網を細分化し、トリチウム、セシウムなど放射性物質の国内海域への流入状況の監視を強化する。
(2)福島原発汚染水の海洋放出による水産物安全の懸念を最小限に抑制するため、食品医薬品安全処、海洋警察庁、自治体などの関係機関との協力をさらに強化し、以下のとおり水産物の安全を確保する。

JETRO 福島第1原発の処理水処分、輸入水産物の監視体制の強化を発表 


韓国とはWTOパネルでも勝訴取消となっており、輸入規制をかけられ「汚染水」と指摘されているのは事実である。国家間でさえ国際的な認識としては「汚染水」なのだから、一報道機関の責任だけとも言えまい。


ネトウヨ勢にありがちな「朝日新聞叩き」と区別がつかない程度には、杜撰な言説がまかり通るってことなのかな?(笑)



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