ショート じぃちゃんのリール
最近、このリールのことが話題のようじゃな。
2022年式のステラというリール。
シマノというメーカーさんは、なかなか凝ったリールを造るからのぉ。
昔はオリムピックやダイワがすごくて、次がリョービじゃったから、シマノはあんまり馴染みがなかったもんじゃが。
スーパースローオシレーティングというのがその話題の元じゃ。
曰く、この機構が原因でバックラッシュという現象が起こるとな?
それは、あれじゃ、ゴッブという現象じゃな。バックラッシュは両軸リールで起きる現象じゃからな。
まあいい。
じゃが、その機構は2000年くらいにはもうあったし、古い釣り師ならおなじみの機構じゃわい。
ほら、これじゃ。
2002年式と2005年式のツインパワー。
他にも、センシライトのような中堅機やナビのような普及機にも搭載されておった。
この機構を搭載してるなら糸をパンパンに巻いちゃダメじゃし、なんならちょい少なめが良い。
22ステラの機構は、昔のより更に密巻きじゃがの。
あとはのう、大物を掛けたり根掛かりしたときは要注意じゃ。糸が食い込んで、次に投げるときゴボッと抜けるからの。
それとキャスティングにも、ちょっとしたコツがいるかもしれんな。
なんじゃと?別にスーパースローなんかなくても、クロスラッピングだけでいいじゃないかって?
クロスラップの方が、トラブルが少なくていいって?
これじゃろ?
2023年式ストラディックじゃ。
確かにいいリールじゃの。クロスラッピングのおかげでまったくトラブルレスじゃ。しかしのう、22ステラでキャストが決まったときの飛び方がの?糸がブゥ~~~ンって出る感じがの?そりゃ~気持ちいいんじゃよ。
ん?でもトラブルがあると思うと心配だし?実際起こるとストレス?
それはな、考え方次第じゃ。
おまえさん、ベイトリールは使うかの?
これは50年前のベイトリールじゃ。アンバサダー5600Cという。おまえさんも名前くらいは聞いたことあるじゃろ。
この頃のベイトリールは投げるだけでも難しくて、バックラッシュが多くての、でもな、釣ってて楽しいんじゃよ。
そのトラブルも含めて「釣り」じゃからの。
でな、これが現代のベイトリール。スコーピオンDCじゃ。
これはDC機構を搭載しておる。昔と比べればトラブルは激減しとるな。
でものぉ、これですら油断すればバックラッシュするんじゃよ。だからの?だからこそベイトリールは使い手を選ぶ。つまり、ベイトリールを使えるということに誇りが持てるんじゃ。
それこそが、素人としての誇り、そして遊びとしての釣りの面白さ。
つまりの?
2022年式ステラも同じなんじゃ。ベイトリールを使いこなす面白さと同じ、スピニングリールを使いこなす面白さを持っとる。
だからっておまえさんに、スーパースローオシレーティングのリールを使え、とは言わんぞ?ベイトリールを使わないからと責められることは無かろう?同じじゃ。スーパースローを使わずとも良い。それ以上の面白さが、釣りにはあるからのぉ。
ああ、またあの磯に、あの浜に立ってみたいもんじゃ。
あの頃の、儂の手に馴染んだあのリールと、あの竿を持ってな。
儂の足は、もうあそこに立てるほどの力が、ないからの。
ああ、懐かしいのぉ、あの磯の、潮の香りがするわい。
なぁ、そう思わんか?
なぁ、おまえさん。
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「ねぇばぁちゃん、じぃちゃん何を喋ってるの?寝言っていうより誰かと喋ってるみたいなんだけど?」
「ああ、じぃちゃんな、あれ持たせると喜んでなんか喋り出すんよ。何言ってるのか、意味は全然分からんのだけど」
「ふぅ~ん、でも、単語も全部は分かんないけど、なんかリールの話みたいだし、バックラ?スーパースロー?釣りの難しい話かなぁ。2022年式のなんとかって言ってるけど」
「う~ん、ばぁちゃんには分からんなぁ。でもな?じぃちゃんはものすごく釣りが好きだったし、あんな風に笑顔で話してくれると、ばぁちゃんも嬉しくてねぇ」
「そうなんだ。そうだね!じぃちゃん、もう何年も寝たっきりなんだもんね。あんな楽しそうなじぃちゃん、初めて見たし!」
じぃちゃんはまた、なにかぶつぶつ喋っている。ちょっと笑顔で、フィ〜シュッ!!こりゃ大きいぞ!とか言ってる。このこと、帰って夏休みの作文にしよっと。
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・・それを見て、じぃちゃんは、釣りが大好きだったって、分かりました。なぜかというと、ばぁちゃんがじぃちゃんに釣りのリールを持たせると、楽しそうに話し出すからです。でも、2022年のリールの話をするのはおかしいと思いました。なぜかというと、今、1982年だからです。
ばぁちゃんがじぃちゃんに持たせたリールも、1960年のリールだそうです。
じぃちゃんは未来の夢を、見てるのかなぁ。
おわり