映画館に最高のジャズライブを見に行こう。映画「BLUE GIANT」感想。
君がもしジャズに少しでも興味があるのなら、あるいは、何かの楽器を真剣に練習したことがあるのなら、今すぐ映画『BLUE GIANT』を見に行こう。映画館のシステムより高級なオーディオを自宅に持っているのでなければ、この映画は間違いなく映画館で見るべきだ。そしてそのチャンスは今しかない。BLUE GIANTは漫画原作のアニメ映画だが、原作を読んだことがなくてもまったく問題ない。映画内容は1巻の物語の開始からで、みごとに話は完結する。もしもアニメに抵抗があっても、ジャズに興味があるなら行くべきだ。上原ひろみの最高のライブを2000円以下で見に行けると考えてもらって問題ない。最高の演奏を何度も聞ける。
物語はゆったりとはじまる。どこか昔の名作アニメ映画のような絵で。どこかで見たことあるような18歳の上京物語。だが主人公、宮本大の孫悟空を思わせるような底知れない器の大きさをそこかしこで感じる。偶然の出会い。そして大のサックスの演奏。僕は、『BLUE GIANT』はもともと大好きな漫画だったが、最初に映画化されると聴いた時、日本人でありながら世界一のジャズプレイヤーになる宮本大という男の漫画の中でイメージされる演奏を再現することは不可能なのだから、大したことにはならないだろうと思っていた。だが日本には上原ひろみがいたのだ。バークリー主席、全米ビルボードJazzチャート一位の天才ジャズピアニスト作曲家が、完全にコミットして作曲と演奏を行ったことで、映画『BLUE GIANT』はあきらかに特別な作品になった。馬場智章によるサックス演奏は、まさに宮本大の音になっていたのである。それを聴いただけで僕は涙してしまった。物語は進んでいく。練習練習練習。藤本タツキのルックバックでも描かれたように、何かを作り出す人間は雪の日も雨の日もはれの日もずっと練習しているのだ。初心者ドラマー玉田の演奏を演じたのは我らが石若駿だ。すごい勢いで成長していくまっすぐなドラムをみごとに再現する。そして本映画のもうひとりの主人公と言ってよいピアニストそして作曲家の沢辺雪祈を、その性格や葛藤を曲作りやソロを含めて再現する上原ひろみ。1時間を過ぎたころ、物語は急に加速をはじめる。BPMは上がり物語はボルテージをあげていく。そして3人のバンドJASSの一夜だけの奇跡のライブを君は目撃する。そこで君は間違いなく音楽に、ジャズに、心をゆさぶられて泣くだろう。
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