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マッチョな麹と細マッチョな麹
日本酒のためにつくられる『麹』には、『突きハゼ』と『総ハゼ』の2つのタイプがあります。
『総ハゼ』とは、まるでカマンベールチーズのように、麹菌の菌糸が米の周りにまんべんなく繁殖し、お米の中にもしっかり麹菌の根が張っている状態ですが、これに対して『突きハゼ』は米の数カ所で局所的に麹菌が繁殖していて出来上がった麹は凸凹しています。別名『出目金』と呼ばれるのはこのためです。
こうした『麹』の作り分けは、まず単純に使う麹菌の胞子の量です。
『総ハゼ』では麹の胞子をたくさん使いますが、『突きハゼ』では総ハゼの6割から5割に量を減らします。
この減らし具合が腕の見せ所。
成熟させて、ウグイス色になった麹を荒い目の布を使った袋や口が網になった容器に入れて
高い位置から静かに振って、麹菌を散布し、散布し終わると、麹がお米の上に落ちるまで、空気を動かさないようにしゃがんで息を潜める緊張の瞬間です。
これが名人ともなると、お米に二粒三粒の胞子がついたとわかるくらいになるそうです。
さて、こうした『麹』ですが基本的に本醸造や普通酒、純米酒には『総ハゼ』、吟醸酒や大吟醸酒には『突きハゼ』を使用します。
これには、いくつか理由があります。
まず、吟醸では低温で長期発酵する 酒ですので、ゆっくりお米を糖化させて発酵させる必要があるためお『総ハゼで』は糖化力(酒造業界では力価(りきか)といいます)強すぎるのです。
分かりやすく言うと『総ハゼ』はマッチョで、『突きハゼ』は細マッチョという感じです。
また、麹は出来てすぐに使うのではなく、寒く乾燥した場所で水分を飛ばす『枯らし』という作業を行います。
これも、麹が溶けすぎないようにする工夫です。
そしてもう一つは、アミノ酸を抑えるため、アミノ酸は旨味成分ではありますが、淡麗な味わいにするために吟醸酒ではアミノ酸を控えます。
このアミノ酸はタンパク質が分解したものです。麹菌は生物ですので、当然タンパク質が豊富ですから、たくさん麹菌の菌糸のある『総ハゼ』ではタンパク質が多く、アミノ酸がたくさん出すぎてしまいます。
ですから菌糸の少ない『突きハゼ』の麹にする必要があるのです。
また、吟醸酒用に『突きハゼ』の麹を作るときには、タンパク質を分解して、アミノ酸にする『プロテアーゼ』という酵素を抑えるために、ある工夫をします。
それは麹造りの後半は麹室を高温に保つ事です。理由はわかりませんがなぜか、高温で育てた麹は『アミラーゼ』は多いけれけど『プロテアーゼ』が少ない麹なります。これも、『突きハゼ』の麹の特徴と言えるでしょう。
そして最後は『脂肪酸』や『不飽和脂肪酸』を抑えるため、麹菌の菌糸には『脂肪酸』や『不飽和脂肪酸』がふくまれていますが、これがなぜか、酵母菌が香り成分を作り出すのを邪魔する事が分かっています。
以上の理由から吟醸酒には『突きハゼ』の麹が使われるのです。
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