アーケードの上で暮らしていた押しかけ野良、おしし。
大好きな昔の写真。商店街のアーケードの上。子猫時代のふわちゃんと、ふわちゃんが邪魔で、こちらに渡って来られない、渋い顔のおしし。
おししが逝って、もう10年近い。子猫だったふわちゃんも、年齢的にはもう立派なおばあちゃん猫だ。おししもふわちゃんも押しかけ野良で、何度も「来るな」追っ払ったがやって来た。部屋に入って来ようとするおししと、追い払う私。そんな小競り合いが楽しみになり、いつしか来るのが待ち遠しく、また、姿を見ないと心配になった。
おししは、ガニ股、ダミ声の厚かましい猫だった。仲良しになると、そういうところがたまらなく可愛らしかった。雄猫なのにふわちゃんにお乳を吸わせていた。「あへー」と気持ちよさそうで「この変態猫が」と思って見ていた。座布団に他の猫が座っていても、座りたい時にはその猫の上から座った。若い猫が外でケンカしていると、自分は安全な部屋の奥から「あぅー」と声だけ加勢した。そんなセコいところも可愛らしかった。
切羽詰まった時はおししを思い出す。獅子舞みたいな面構えを思い出す。貧相な尻尾を思い出す。これで何度も救われている。今日も歯医者でおししのことを考えた。ガリリとやられて出血したが、それでもなんだか可笑しかった。