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オザークへようこそ(原題OZARK)最終話を見てレビュー
オザークへようこそ最終話を見て直後の感想
はじめに
今回は、オザークへようこそを見終わったので、見終わった直後の感想を語っていきたい。去年の春頃から本格的に見始めたので一年弱かけてエンディングににたどり着いた。本格的に見始めたと書いたのは、オザークが放送当時話題になった際に、一話の途中まで見たのだがストーリーのハラハラ感に堪え切れず脱落してしまっていたからだ。約四年越しに最終話までを見届けたわけだ。全体を通して鬱屈とした雰囲気が漂う独特なドラマだった。私の中で一番好きなドラマである「ブレイキングバッド」に物語の題材は似ていたが物語を通じてのテーマが違っていて、そこに新鮮味を感じるドラマだった。
あらすじ
シカゴで、友人のブルースと共にファイナンシャルプランナーとして会社を経営するマーティ。そんなある日の夜中、突然ブルースに呼び出される。行ってみると彼を含め仕事仲間が集まっていた。ブルースが、カルテルの資金を横領していたため呼び出されたという状況だ。マーティーは麻薬カルテルの資金洗浄をしていたのだ。カルテルの男は、仕事仲間に真偽を確かめ次々に殺していく。自分の番だとあきらめかけた時、ブルースに聞いていたリゾートである、オザークを思い出す。カルテルのお金をオザークで資金洗浄していくと口車に乗せ、命からがら家族のもとへと帰り、そのまま家族とともにオザークへ。オザークで過ごしていく中で家族とカルテルのの関係は切っても切れないものになっていく。カルテルからの解放を目論見、家族全員で協力する先に待つ運命は!?
概要
エピソード数 44話
配信サイト NETFLIX独占
完結済み
ルース・ラングモアとは(ネタバレあり)
ルースについて長く語っているので興味ない方は次まで飛んじゃってください。
全編を通じて推しになったキャラがいる。ルース・ラングモアである。
ルースは、マーティたち家族に次ぐ影の主人公であると私は思う。今回はルースを深掘りして感想を語って行こうと思う。
ラングモア家という犯罪一家に生まれたルース。記録に残らない犯罪行為は、数えきれないほど。オザーク初日にマーティーが資金洗浄のために渡された800万ドルのうち300万ドルを盗んだことで彼女はこの物語に登場する。資金洗浄に興味を持ったルースは、最初はマーティーが経営し始めたホテルの皿洗いから始まり、ストリップバーでは運営を任され、物語終盤にはカジノの運営、更には資金洗浄を任されるまでになった。かなり頭の切れる女性でマーティーの信頼を勝ち取った。いとこのワイアットとスリーを溺愛しており、特にワイアットの進路のため尽力するなど優しい家族思いの一面もある。その一方でマーティーへの不信感で殺害を試みようとしたこともあった。最終的にマーティーは利用したほうが得策だと考え直した。マーティの殺害はやめ、叔父たちがマーティーを殺すのを阻止するために叔父たちを殺してしまう。そのことを、物語中盤にワイアットに明かさざるを得なくなってしまい、最愛のワイアットに絶縁宣言されてしまう。悲しいストーリーが多いルースだがそれでも前に進もうと不器用にもがく人間臭さのある彼女の姿に4シーズンを通して感情移入していた。全編を通じてあまり感情移入できるキャラがいないので(くずキャラが多い。注意!個人的感想)、オザークへようこその良心だ。
登場人物
最終話に、大きく関わっている登場人物を簡単にまとめてみた。私情も混みであるため、そこは注意。
マーティー・バード:主人公 オザークにて麻薬カルテルの資金洗浄をしている。妻のウェンディのことを信頼しきれずにいたが徐々に協力し合って、カルテルのボスからの信頼を集めていく。頭はいいが、非人道的な決断が出来ずに、事態を悪化させることも。よく言えば、平和主義。悪く言えば、優柔不断。
ウェンディ・バード:マーティーの妻 オザークで夫の力を借りながら時には、味方をも欺くかなり攻撃的な一面が強い。さんざん利用した相手でも、自分の利益のためには躊躇せずに切ることが出来る。父親の影響で歪んだ性格が垣間見える。
ルース・ラングモア:犯罪一家に生まれ軽犯罪に手を染めていたが、マーティーの金を盗んだことでマーティーたちの混沌とした巨大な相手麻薬カルテルとの争いに巻き込まれていく。頭が切れ、常に自分にとって一番の大船を選んでいくが、かなり感情的な面もありその判断が正しいとは限らない。
オマール・ナバロ:麻薬カルテルの王。マーティーたちに常に指令を出していた極悪非道な男。FBIとの取引で、アメリカで平和に暮らすこと夢見ていたが、FBI内での単独行動による逮捕によって、投獄されてしまった。
ハビエル・エリサンドロ:ナバロの甥。ナバロの逮捕によって実質トップになったが、かなりの衝動的な性格が原因で殺害されてしまう。
カミーラ・エリサンドロ:ハビエルの母親。ハビエルの死が、ナバロによるものだと判断し、獄中のナバロの暗殺を命令するなど本当のトップは彼女だった。肉親に対しても容赦しない冷徹な女性である。
最終話あらすじ感想(ネタバレあり)
ルースは、カルテルのトップであるナバロの甥っ子ハビエルに、最愛のいとこ、ワイアットを殺されてしまった。マーティーの妻であるウェンディーのワイアットの死への報復はしないという姿勢が気に食わず、マーティーの反対を押し切りハビエルを殺してしまったのだ。その報復に恐怖していたのである。しかし、最終話で、殺される心配はないと、マーティに告げられ安心する。恐怖もマーティーの言葉によって消えてなくなり夢まで見る。死んでしまったラングモア家の面々である。そこには、もちろんワイアットもいた。ワイアットとつかの間の幸せな時間を過ごしていると、ワイアットの弟、スリーが現れる。「誰と話してる?ワイアットだろ?」と聞きルースの隣に座り二人で手をつなぐ。このシーンを見て私は全4シーズンを通して描かれてきた、ラングモアの絆を感じ感慨深い思いだった。こんな心温まるシーンからは想像できないラストの展開だった。
ルースが、ハビエルを殺したことがハビエルの母のカミーラにばれてしまった。隠し通すはずだった秘密が、カミーラの恐怖によって明かされてしまったのだ。マーティーたちは娘と息子を人質に取られルースに危険を知らせることもできない。パーティーを終え、酒に酔い気持ちよく家にたどり着いたルース。そこに待っていたのはカミーラだった。死の絶望と恐怖を受け入れ、復讐相手の母を挑発する姿は、最後までルースがルースであったことの証と思わされる重要なシーンだった。
ルースの死を悟り意気消沈して家に帰ったマーティーたち。割られた窓。外には証拠をつかんだと豪語する、マーティーたちの周りをかぎまわっていた探偵の姿。その探偵を、息子であるジョナが撃ち殺し4シーズンにもわたる物語は終わりを告げた。終わり方が突然であっけなく、エンドロールが流れたときは、?がたくさん浮かんだが視聴直後は、最終話のカオスさで頭がいっぱいになり、理解が追い付かなかった。唐突なジョナによる大活躍は、今まで物語を見てきた視聴者には納得いかに方もいるのではないか?
「ラストがジョナ?いきなり?」私は、そんな思いが大きかった。
そんなしこりについて次項では語らせてもらう。
シャーロットとジョナの物語での必要性
ジョナのラストシーンについて触れる前に、ジョナと姉のシャーロットの描写について語らせてもらう。シーズン終盤にかけてジョナの存在感が目立っていき、姉のシャーロットがあまり目立たなくなってしまったのは残念だった。物語序盤でシャーロットは、家族との縁を切り平和な暮らしをしたいというなどティーンエージャーなら当然の願望を自分の力で強引に切り開くなど物語をかき回していたが、最終的には現状を受け入れ、両親の忠実なイエスマンになってしまったのは残念だった。しかし、常に命の危機に置かれている高校生が自分の命を最優先に行動するのは至極まっとうなことであるため仕方なかったんだなと自分を納得させることにした。ただやはり、もう少しシャーロットが、物語にかかわってほしかったのが私の本音である。ジョナがウェンディと仲たがいをして、家を出ていき関係修復不可能になってからの先がない関わり方がやけにリアルだった。思春期特有のものに、バード家の特殊な環境も相まって修復不可能な状態になってしまった。息子と母親の関係はこじれると同性ではない分、一度こじれていくと元の関係に戻るのは困難を極めるのだなとリアルな描写に、見ている最中つらかった。ジョナはバード一家が暮らす家の持ち主であったバディに銃の扱いを教わり、人との交流の温かみを学び絆を深めていくなどいいエピソードもあった。しかし序盤は幼くあまり物語には大きく関わってこなかった。徐々に成長していきかなり頭がよく、ルースには「サヴァン症候群かも」と言われるほどで、その頭の良さを生かして物語に少なからず関わっているが、もう少し姉弟を物語に組み込まれていれば感情移入しやすかったのではないかと思う。もちろん、金と命を日常的にやり取りしている連中に、いくら頭がいいといっても高校生の彼らがカチコミを入れるられるかと言われれば、答えは明白であるのも事実だ。そこの塩梅が少し納得いかないのが正直な感想である。ラストシーンの必然性の肉付けが足りなかったのではないかと思う。あの描き方では、物語を終わらせられるほどの説得力はなかった。
ルースの決断
ルースがハビエルを殺したのは、今までのストーリーでのワイアットに対する溺愛ぶりからして理解することもできるが、やはりマーティーたちが苦労して積み上げてきた苦労を感情的に踏みにじってしまうありえない選択でもあった。あそこで、怒りを静めることが出来ていれば、ルースは死なずに済んだだろう。確かに、その通りだが私はルースの破滅的な決断を今までの彼女なりの大切なものの守り方に対する哲学を鑑みて、受け入れることにした。
オザークへようこそ総括
ネットで最終シーズンのレビューを眺めると賛否両論という評価だった。確かに、全体を通じて混沌とした展開、重要人物の容赦ない殺され方など今まで描いてきたものすべてを回収はできたわけではない。また、全編を見て、お金をめぐる争いは正直言って私はすべてを楽しめたとは言えない。複雑な関係性や、駆け引きなどがあり理解が追い付かなかったところも正直あった。それも含めて私個人として、少し一般論とはずれるかもしれないが、ルースの人間臭さが物語を最後まで見続けられた要因なので、突然あっけなく終わってしまった物語に対してそれほどの拒絶感はなかった。ブレイキングバッドがリアルに金への執着、命に対する倫理観の乖離を描きながらテーマは対極にある家族愛だったと私は考えるが、オザークへようこそのテーマは何だろうと考えるとすぐには、答えが出てこない。
今の私がたどり着いたこの物語のテーマは、「人間のエゴの醜さ」だ。
登場人物のほとんどが、自分のエゴに取りつかれ破滅や、変貌をとげ、ある者には死を、ある者には絶望だけでは表しきれないほどの怒りや悲しみが訪れた。エゴというものは身を亡ぼす危険を孕んでいる。エゴによってしか生み出されない成功もあるが、そこに残るものは何なのか、考えさせられる内容だった。
見るべきか
少し展開的に、見ていて拒否してしまう人や、今回はあまり触れなかったが、ウェンディの壊れ具合についていけないなど万人受けする内容ではないかもしれない。だが、非日常感やスリルなど求める人が見れば最後まで飽きないだろう。それは、保証できる。一度挫折したが、最終的にはとりこになった私が言うのだから少しは、説得力もあるだろう?