繊維製造工業マーケティングのすすめ。14
『日本製』っていったいどういう価値なのでしょうか。その言葉に秘める価値をどういったカタチでお客さんに感じていただけるのでしょうか。『日本製』に限らず、提案時に商品の差別化をはかろうとして加えれられる時にオーバーな表現が果たして意味のあることなのか、付加価値という言葉の意味を考えてみます。
『見た目が9割』の重要性
この業界のとある先輩が運営しているブランドで、立ち上げから順調に業績を伸ばして来ているので、同社のブランドについて少しお話を伺った時におっしゃっていた事に「やっぱり、まずは着てみたいっておもってもらわなきゃね」という言葉がありました。これはもうほとんど答えだと僕は思っていて、どんなにいろいろな技術ポイントが盛り込まれていても、結局は可視化された美しさが何よりも先に目に入るのが普通です。
みなさんが洋服を買う時、もしくは、入社希望者を面接する時、または、自動車や食材、料理を選ぶ時、何を先に見ますか?
おそらくはまず『見た目』や『ブランド』を気にすると思います。というか、無意識でも必ず気にしています。面接者の学歴が気になるのは、卒業した学校のブランドが期待値を左右するからですよね。また、繊維業界なら服装がイケてなかったらあまり良い印象は持たないですよね。メルセデスが欲しいのはドイツ製だからではないですよね。いびつなきゅうりはスーパーに並んでいても買わないですよね。そういう事です。
入り口を作るのはいつでも『見た目』や『ブランド』です。『ブランド』が無ければ、どれほど『見た目』が大切かおわかりいただけると思います。
入り口がイケてなければ、どんなに優れたスペックを誇っても、選択のテーブルに上がる確率はそう高くありません。これは商品に限らず、会社の印象やスタッフの印象も、すべてに及びます。
「ウチはええもんやっとるんや」という誇りはとてもすばらしいです。でも、その「ええもん」を提供する市場がファッションである以上、ファッション性に寄与しない見た目のサンプルをいくら作り続けても、間口は広がりません。向こうから探しに来てくれるほど認知度があれば別ですが、おそらくはその域に達している方々は、少なくとも露出に耐えうる『見た目』や使用実績に裏付けされた『ブランド』認知があります。
産地のブランド力
『J∞QUALITY』など、日本製など各産地のイメージで『ブランド』認知を得られると思っている人が多いのも少し気になります。もちろん総じて日本製が技術力が高いということは認めます。そのイメージがあるから付加価値になり得るということで通常より多くの収益が得られるかというと、それは先ほどの『見た目』が欠如していた場合、ほとんど威力を発揮しません。
僕は和歌山の産地によく関わるので、和歌山を引き合いに出しますが、和歌山は丸編み生地生産量は日本一です。これは間違いなく長年に及ぶ技術に裏付けされた信頼の『ブランド』なのでしょうが、一般認知として「和歌山の丸編み生地が良い」と、業界外の人に問うたところで、その価値を認めてくれる人はほとんどいないでしょう。
和歌山県内の工業組合が東京で合同展を開催しても、その展示方法やプロモーション、出展者のブースの仕上がりや、出展者の服装や来場者への気遣いなど、おおよそ『見た目』として判断される部分の圧倒的欠如にはほとんどの会社に毎度がっかりさせられます。「開催しても効果が得られていない」と出展者が嘆いているようですが、そもそも一般認知として産地がブランドとして根付いていない以上、わざわざ同産地と直接コンタクトをとろうとする理由も無ければ、コンタクトしてみたところで『見た目』が「使いたい」と思ってもらえるようなもので無い限り効果はありません。
『和歌山産』だからといって丸編み生地を選ぶ理由にはならないということです。みなさんも『日本製』だからその服を買うというわけではないでしょう?
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