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あたしの人生、人の役に立つか?2

2.「あ、、あれ?」

最寄り駅から車で5分。
歩いたら20分くらい。

このあたりの街中を流れている
川の橋を渡り、
和菓子屋さん、制服のお店など
まだ昔の東海道の名残がある
商店街を抜けていく。

道幅も広くなく、間口が狭いたたずまいの
昔ながらの商店街。
そこはひっそりとしていて、
時々電気屋さんでお客さんと話している
店主の声が聞こえ、
和菓子屋さんからは、
ほのかに甘いにおいがしてくる。

狭い商店街なのに
いつもきょろきょろ見渡しながら
歩いてしまう。
郵便局もあるが、駐車場の入り口が狭く
車で来る勇気がないので、
歩いているときだけに寄る郵便局。

駅から歩いてちょっと汗ばんだ頃に
エアコンのきいたひんやりした
郵便局のATMでちょっとだけお金をおろす。

郵便局を過ぎると、右に曲がる。
右に曲がると右手にちょっと古い
コインランドリーがある。
使ったことはないが、
時々お客さんがいるのを見たことがある。

そこを過ぎると、酒蔵が見えてくる。
酒蔵の壁はこげ茶がすすけた黒色と
茶色が混ざった感じで風情がある。

以前は地ビールを売っていた。
仲の良い友達と行ったことがある。
黒ビールだった。
甘い系というのか、苦みがなかった。

酒蔵を利用したレストランだったので、
少し高いところから見下ろすような
席に案内され、下をのぞけるような
レイアウトだったと思う。

懐かしいなと思いながら
酒蔵を過ぎると、
目の前には歩道橋がある。
目の前に小学校があるので
安全のために歩道橋を
子どもたちが渡っている。

以前はさびが目立っていたが、
最近色が塗り替えられた。
せっかく、田んぼの多いエリアなんだから
もう少し景色になじむ色なら
いいのにな、といつも思う。

歩道橋を渡る。
40過ぎると運動不足なんだろう、
絶対そうなのだが、
割と階段があって
階段の幅も狭くて、
ちょっと登りづらい。

たいした段数でもないが、
登り切って歩道橋の上から
道路を眺める。

都会ほど交通量は多くないが、
このあたりではまあまあ
交通量の多いところである。

なんとなく車が行きかうのを見て、
のんびり階段を下りていく。

すると、右手には小さな小川があり
小魚が泳いでいる。
その向こうには田んぼが広がっていて、
小学生が稲を植えて育てている田んぼも
見えてくる。

そこを過ぎると、桜の木が見えてくる。
このあたりは日の光を遮るものがないので、
夏は暑い。

数メートル進むと小学校が見えてくる。
うちの子たちがお世話になった小学校。
ちょっと急な坂の上にある小学校。
校舎の色がカラフルで遠目でも
うちの小学校だと分かる。

この小学校を右手に見ながら
進んでいくと、右に曲がる。
すると小学校のプールが見えてくる。
そこを静かに歩いていくと、
田んぼの中に入っていく。

春先はカエルの声が賑やかである。
カエルの声ってこんなに
たくさんあるんだなと思うくらい。

田植えの時期になると、
田んぼに水が張って
キラキラしている。
これを見ながら歩くのも好き。

稲が育っていくと、
風が吹くと稲同士がこすれて
心地よい音がしてくる。
それと同時に風も感じるので
とても心地いい。

そんな風に自然を感じて歩いていくと、
丘の上の住宅地が見えてくる。
色とりどりの住宅地。
こないだ瓦の家がどれくらい
あるのか数えて歩いたことがある。
意外に少なかった。

割と急な坂道を上がっていくと、
公園が見えてくる。
ここに時計があるので
どれくらい歩いたか、
なんとなく計算しながら歩く。

家まであと少し。
2ブロックほど上にあがると
自宅に着く。


そう、私と家族の家。
洋風でバルコニーのある家。
私があんまり何も考えずに
買った家である。

その家の玄関を開けると夫がいた。

「あれ?どうしたん?
今日、朝仕事しに行かんかった?
帰ってきたん?」

と、夫に尋ねた。

「うん、なんかしんどかったから
帰らしてもらった。」

私が選んで買った
ちょっと変わった形の
緑色のお気に入りのソファーの上で
寝転んでいる。
表情は、ちょっとしんどいのか
かたい感じ。

「そうなんか、、、。
そんなら、ちょっとゆっくり
しときんさい。」

と私は鳥取弁で夫に返事をする。
熱ないし、大丈夫そうだ。


夫の勤め先は、
さをり織をしている事業所。
通所施設と言えばいいのだろうか。
通っている利用者さんの
お母さんが立ち上げた事業所。

お母さんたちのパワフルな
エネルギーがあちこちから
吹き出すような
そんな事業所。

夫はその事業所が好きで、
通所している方たちのことも好きで
一緒に写真をいっぱいとっている。

仕事の話は、もっぱら
通所されている方たちの話。

「めっちゃかっこいいねんか!
こんな色合い、どうやって
思いつくんやろな!」

「今日な、こんなことあってん。」
といつも笑いながら勤め先の
話をしていた。

なので、今回のしんどいのも
単なる体調のことなんかなと
思っていた。

早退した次の日は、
仕事行くんかな?と
思っていたら、
3日ほど休んだ。

自分で勤め先に電話できないから、
あたしが職場に電話する。
「すみません、
なんだか調子が悪いみたいで
今日もお休みさせていただけませんか。」

と相談すると、
「かまへんよ!!
はよ元気になりやって伝えて。」
と明るい声でおっしゃっていただいた。

なので、職場で何かあったとか
何にも思わなかった。

4日目の朝も休んだ。
というか、ちょうど土日になった。
天気もいいし、
娘連れて散歩でもしようか、
ということで、近所の公園に出かけた。

そこの公園は車で10分くらい。
プールや丘や山の中も散策できる。
運動場もあるのでベビーカーも
押していける。

「近場やし、いけるかな。」
と私は思って夫を誘った。
今思えばいやそうだったかもしれない。
でも、フットサルや体を動かすことが
好きだし、散歩は嫌いじゃないはず。
娘も好きだから、いつも喜んで
散歩に行っていた。

公園につき、車から降り、
バギーに娘を載せて
3人で一緒に歩く。

足元の草を見ながら、
遠くの山や鳥を見ながら
家族3人で歩く。

ふと横にいる夫の顔を見る。
あれ、、?
まだ表情が固い。

「どしたん?
やっぱりしんどいなら帰る?」

と私は何気なく
前を向きながら夫に言った。

今まで口を閉じていた
夫が言った。

「ゆみ、あんな、
なんかな、めっちゃしんどいねんか。
気持ちが。
何がどうってうまく言えんけど
なんかめっちゃしんどいねん。」

あ、、、、。
と私は思った。
今回のこと、なんとなく
うすうす気づいていた。

数日前のしんどさは
風邪や疲れじゃなくて、
精神的なものだということに。

「なんか仕事であったん?」

と聞いてもはっきり答えず。
通勤に1時間半から2時間くらい
かかっていたからか。
私が家事を頼んだりしたからか。
理由はよく分からない。


数日後、家の近くで
うつ傾向の相談ができる
病院を探したら、あった。

家から車で20分。
市内でスーパーやショッピングセンター、
レストランなどが集まる中心地から
ほど近いところだ。

病院はきれいで、
精神病院とは思えなかった。
認知症の相談もできる病院であった。

そこで何歳くらいだろうか、
40代前半か、それくらいの先生に
夫は診てもらった。

ロビーで夫と一緒に呼ばれるのを待つ。
名前が呼ばれた。
夫の表情はかたく、変わらない。

スルッと動くスライドのドアを
右に動かして夫と入る。

すると、医師はパソコンを向いて、
体は夫と私の方を向いている。
医師の後ろで看護師が立っている。

「どうされましたか?」

と聞かれたと思う。
でも何を聞かれたのか
正直何も覚えていない。

夫の主訴は、

眠れない
体が動かない
やる気が起きない
仕事に行けない

で、あったと思う。
私は最近の様子を
医師に話した。


*************************

私、振り返れば
この最初の病院が失敗だったと
本当に思う。


心療内科や精神科を受診したことが
ある方はわかると思うが、
自分とあう先生と出会えるのは
奇跡だと私は思っている。

なぜか??

医療機関の外来の収益は何か?
診察と処方、検査である。
心療内科と精神科では
検査をすることは少ない。

血の検査?何のために?
貧血等の症状の疑いがあれば
検査をすると思うが、
したとしても該当なければ1回だけ。

つまり、診察と処方を
することで収益があがる。
心療内科や精神科を受診する人は
話をしだすと長い傾向がある。
不満が多い方もいれば
主訴が見つからず、
思いつくことを話す方もいるからだ。

一人一人丁寧に聞いていたら、
診察の回数が減ってしまう。
そして、医療機関は治療するところ、
つまり処方である。

であるため、
多くの医師は、ゆっくり話を聞けない
状況であり、薬の調整を中心に
診察の時間が過ぎていく。

これは私の主観的な考えであるため
データがあるわけではない。

ただ、心療内科や精神科を受診している人は
「先生が話を聞いてくれない。」
「行っても薬をもらうだけ。」
「先生が思いをわかってくれない。
 行っても無駄だ。」
と、言っている人も多い。

今思えば
夫が最初に出された薬の
量がやっぱり多かったと思う。

薬のせいじゃなかったかもしれない。
けれど、私は薬のせいだったと思う。

証拠に、今後の受診は、

「本人が良くなる」

というより、

「薬の飲み合わせがいいか。」

ということに重きが置かれていく。

この症状が出れば
この薬。
この薬のせいで
この症状が出れば
この薬。


結局、何が原因で
何がどうなっているのか
よくわからないことの
始まりになってしまった。


明日は、「受診と仕事」です。
お楽しみに。


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