傷跡

私は生まれてすぐ病気が見つかって手術をした事があるんです。

だから私はこの16年間ずっと背中とお腹に大きな傷跡が残ってます。

遠目で見ても分かるくらい大きな傷跡です、
正直初めて見た人はギョッとします。

そこの部分だけ肉がえぐれてボコボコだからです。

私はずっとこの傷と共に生きてきました。


自分の綺麗なツルツルの身体を見たことがありません。

見た目は至って健康そのもので私病気で手術したことあるんだと言うとびっくりされます。

傷跡を見た人の反応は2つに分類されます。

1つ目は同情

2つ目は批判

どっちがいいかと言われると私はどちらも辛いです。

可哀想だね、とか辛かったね、とかクソ喰らえだと思っています。

私は可哀想な人間ではないし辛かったねと言われてもその言葉自体がとても辛いからです。


けれど批判される方がとても辛い。

私の人生そのものが否定されているような気さえしてしまう。

気持ち悪い、とか醜いとか言われても笑うことしか出来ない自分が一番苛立たしい。

その傷跡病気アピール?と言われた事もあります。

隠せる程の小さな傷じゃないのでどうしても見えてしまうのに何故アピールになるんだろうと不思議に思っていました。

親にさえ醜いねとかごめんねと同情され私は居場所がありませんでした。

私には恋人がいます。

正直恋人にこの事を言うとどうせ嫌われたり同情されたりするんだろうな、病気のレッテルを貼られるんだろうな所詮周りと同じなんだろうなと思っていました。

だけどずっと黙ってる訳にもいかず私は本当の事を伝えたんです。

病気の事、傷跡が醜いという事、こんな彼女で申し訳ないと思っていること。


しかし彼は違いました。

私に対して怒ってくれたんです。

自分で自分の首を絞めていることに対して本気で怒ってくれました。

今まで生きた中でそんな人は初めてでした。

私は同情されたりするものだと思っていたので驚きを隠せませんでした。

生まれて初めて私の人生を肯定してくれる人に出会ったんです。

心の中の鎖がプツンと切れたような気がしました。

私は同情されるのも批判されるのも嫌い、だけど傷跡に触れられないのも怖かったんです。
どうして欲しい?と言われると答えることが出来ない我儘な人でした。

私はどんな風に声をかけられたいのだろうとずっと疑問に思っていました。

私はずっとずっと認められたかったんだと思います。

そして自分に呪いをかけていることを叱って欲しかった。

全部受け止めて貰いたかった事に気がつきました。

これから先別れが来たとしても彼のような言葉をかけてくれる人には会えないでしょう。

そしてそれと同時に彼の事を忘れないと思います。

きっとこのように叱ってくれる人の心はとても澄んでいるのだと感じます。

私もそんな風になりたいと思いました。

人の為に叱れる人間に。

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